編集部レビュー(続き)
まるで、二人と行動を共にしているかのよう
本作のオススメポイントは何といっても、圧倒的な没入感。ワンカット撮影ということで、主人公の二人はもちろんのこと、数多の名もなき兵士たち一人一人の緊迫感までもが画面を通して伝わり、自分も同じ戦場で、彼らに課されたミッションに共に挑んでいるかのような、リアルな臨場感がすごく感じられました。(あまりに入りこみすぎて、爆発音にびくっ!としてしまったぐらいです...)。
とはいえ、それも登場人物に寄り添った重厚なストーリーがあってこそ。墜落したドイツ兵とのやりとりや、ベネディクト・カンバーバッチ扮する大佐のセリフ、ブレイクの兄との会話などに込められた、戦争に対するメッセージや皮肉が、深く心に刺さりました。
119分という時間にぎゅっと濃縮された、戦場での息づかいやリアルさをぜひ、劇場で体感してみて下さい。
中久喜涼子
某英国俳優の登場シーンが最高でした。途方に暮れそうなあの状況であの登場の仕方(カメラワーク!)、イケメンすぎる...。
3人目の伝令として参加する壮大なRPG
第一次世界大戦中の1917年、1600人の命を守るという重すぎる使命を預かり、独軍の占領地へ放たれた二人の若き英国兵。彼らを背後から追うカットも多く、まるで自分が3人目の伝令になったかのような感覚で進んでいく。
砂埃舞う戦場、廃墟と化した町、独軍と撃ち合った先に見える川......RPGさながらに刻一刻と変化する状況と景色。全編がリアルタイムで進み、次第に彼らが見聞きしたことが直に伝わってくる。これが最近よく聞く“没入感”てやつなのだろうか?鑑賞後は心地よい肉体的疲労と同時に、戦争に対する虚しさによる精神的疲労に襲われた。平和よ、いずこ。
一つ白状すると、英国の人気者がこぞって出演していると知った日から心中穏やかではなく、物語に集中しながらも頭の片隅で“あの俳優はいつ出てくるのか”とドキドキ。己のミーハーさが恨めしい。
鈴木涼子
横顔美男子マッケー&丸顔童顔とベンハを思わせるチャップマン、“ダンケルク組”に続く“1917ボーイズ”として息長く活躍してほしいです。
「007」を経た監督が戦場シーンにもたらす迫力
サム・メンデスっていまひとつ捉えどころのない監督というイメージがずっと付きまとう。「アメリカン・ビューティー」のような現代劇もお得意そうで、「007」シリーズのようなアクションもこなれていて、その正体不明さは良くいえば何でもできるということだけど。その彼の新作は異色作「ジャーヘッド」以来の戦争映画。ただしあれは湾岸戦争で、今度は第1次大戦が舞台だし、アプローチがまったく異なっている。
監督自身が言うように、戦場シーンには「007」を経てこその迫力があり、なおかつドラマの名手だけのことはあるヒューマニズムもきっちり描かれている。オスカー受賞の第1次大戦ものといえば「西部戦線異状なし」が真っ先に思い浮かぶけれど、なぜか第1次ものは第2次ものより詩情が漂う作品が多い気がするのは、戦士たちが純朴なせいだろうか?
米崎明宏
編集長。最近では「戦火の馬」なんかも詩情漂う第1次大戦ものだった。そういえば「アラビアのロレンス」も第1次が舞台のアカデミー賞映画!