フェアウェル
中国系アメリカ人監督ルル・ワンの実際の“嘘”から生まれた、心温まる家族の感動実話ストーリー。病気で余命わずかな祖母に真実を伝えるべきだと訴える孫娘と、悲しませたくないと反対する家族の葛藤を描く。気鋭スタジオ“A24”の製作で、ゴールデングローブ賞では主演のオークワフィナがアジア系女優初となる主演女優賞を受賞。全米でわずか4館の限定公開で始まりながら、公開3週目でTOP10入りする異例のヒットを記録した。
監督/ルル・ワン
出演/オークワフィナ、チャオ・シュウチェン、ツィ・マー
2020年10月2日(金)公開
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編集部レビュー
中国とアメリカの価値観のごった煮が面白すぎる
はっきり言ってありふれたお話である。けれどもそれをどう見せるか、どんな背景を付与するかという工夫一つで、こんなに面白いものが出来上がるというお手本のような映画。本作においてそれは、アメリカ在住の中国人の本音、だ。
経済的理由なのか自由を求めてなのかは知らないが、故郷を捨ててアメリカに渡った中国人。けれども中国がアメリカをも上回るほどの急激な経済成長を遂げたことで、彼らの立場も気持ちも宙ぶらりになってしまった。その一方で中国社会もガラリと変化する。原風景は消え大家族制も崩れ去る。
そんな、アメリカ人でもある中国人一家の悲喜こもごもが、昔ながらの中国の習慣と、アメリカナイズされた風景と、中国語で歌われる洋楽ポップスを背景に描かれ、でも最後は家族の絆の素晴らしさに思わず胸が熱くなる。ルル・ワン監督の手腕が冴える一作だ。
レビュワー:近藤邦彦
少女にもおばさんにも見える年齢不詳のオークワフィナが、相変わ らずの不機嫌そうな顔と酒焼けしたような声で存在感を示す。ハッ!
ウソが許されるのはそこに本当の愛があるとき
冒頭に出てくる『実際にあった“ウソ”に基づく』の言葉にグッと心を掴まれる。“嘘”とは一体何か?それは余命僅かな祖母に本当のことを悟られないようにつく“優しい嘘”のこと。監督と家族の実体験が基になっているという。
本作を面白くしているのは中国生まれアメリカ育ちの監督(つまり主人公)の存在だ。彼女は思う。大好きな祖母に真実を伝えるべきではないか?でも家族は反対する。東洋と西洋では死生観が違うと。彼女の葛藤は深まる。
悩める彼女を通して描かれるのは「異なる意見や価値観を理解すること」だ。家族の言葉を聞くうちに彼女は気づく。祖母を思う気持ちはみんな同じだと。もし嘘が許されるとしたらそこに本当の愛があるとき。家族が出す最後の答えがどうであれ、嘘の中の彼らの“本当”が伝わってきて、ほっこりと心を温めてくれる。
レビュワー:疋田周平
副編集長。家族同士のやり取りが一つ一つリアルで面白いんですが、主人公の大叔母(祖母の妹)はなんと監督本人の大叔母様だそうです。