カバー画像:ハリウッドの名所チャイニーズ・シアター前/Photos by Getty Images
劇場での公開をあきらめオンデマンド配信に走る新作も
2019年12月に中国で感染患者が発見された新型コロナウイルスによるCOVID–19は世界中に広がるパンデミックとなり、感染者数が最多となったアメリカでは、映画・テレビ界にも大きな影響が出ている。
コロナウイルスは、飛沫感染や接触感染で広がっていくため、感染拡散を防ぐには大人数で集まることを避けなければならない。2020年1月下旬に西海岸のワシントン州でアメリカ初の感染患者が確認された時点では、政府にも一般市民にも危機感は少なかったが、2月に入ってから全米各地に感染者が出始め、各州の知事が次々と非常事態を宣言。3月中旬ぐらいから全米の学校や大学は休校措置を取ってオンライン授業に切り替え、ほとんどの企業も社員に在宅勤務を命じ始めた。
映画界もそれにならい、大人数が集まるプレミアや試写会、映画祭といったイベントは軒並み中止。映画館も次々と閉館していった。それにしたがって、大手映画会社の新作映画は公開を延期、数週間前に既に公開が開始されていた新作や独立プロ作品などによる低予算映画は、ネット配信によるビデオ・オン・デマンド公開に切り替えを余儀なくされた。
逆にコロナウイルス禍で活性化しているのは、ネット配信会社や有料ケーブル局。外出自粛を要請された人々が自宅で楽しめるエンターテインメントを求めて、NetflixやHuluといったネット配信サービスや、HBOやSHOWTIMEといった有料ケーブル局と新規契約を申し込むケースが増えているようである。
その他ではディズニー/ピクサー作品や「スター・ウォーズ」シリーズ、マーベル・スタジオ作品などがネット配信で見られるDisney+の新規契約も急増。学校が休校になり、友達と遊んだりするのも禁止されている子供たちを持て余している親たちが、困り果てて契約したことは、想像に難くない。
急に視聴が増えたソダーバーグ監督の過去作
一方、大人たちの間での視聴がいきなり増えたのは、2011年のスティーヴン・ソダーバーグ監督作品「コンテイジョン」である。
香港で発生した架空のウイルスが、料理人の手からレストランの客やウエイターに感染し、そこから一気に世界に広がっていくところを描く「コンテイジョン」は、脚本家が疫学者の助言を得ることによって出来るだけ正確にウイルス感染の拡散を描こうとしただけあって、まるで9年前に現在のコロナウイルス禍を予想したかのようにリアル。
1995年に製作された「アウトブレイク」や「12モンキーズ」もウイルスの蔓延を描いているが、「コンテイジョン」では、ウイルスが拡散していく過程や米国の疫病対策センターや科学者たちが感染拡散を食い止めようと苦闘するところ、さらに民衆がパニックに陥ってデマ情報に翻弄される様子などが描かれており、現在、自分たちが置かれている状況に非常に似通っているゆえ、そこから学べるものがあるかもしれないと思わせられるのだろう。
トム・ハンクス夫妻らセレブが感染!
2020年4月2日現在で、コロナウイルス感染者数が23万4000人以上を記録しているアメリカでは、映画・テレビ関係者の感染者も出てきている。
最も大きく注目されたのはトム・ハンクス&リタ・ウィルソン夫妻。ハンクス夫妻は、バズ・ラーマン監督によるエルヴィス・プレスリーの伝記映画に出演する予定のハンクスが同作の撮影準備のために訪れていたオーストラリアでコロナウイルスに感染。ハンクスは3月11日付のツイッターで感染を報告したが、その後の回復は順調なようで3月27日にはロサンゼルスの自宅に戻ったとのこと。
他には、「LOST」や「HAWAIIFIVE–O」などのテレビドラマで知られるダニエル・デイ・キム、英国人俳優のイドリス・エルバ、ウクライナ生まれのフランス人女優オルガ・キュリレンコ、テレビドラマ「ゲーム・オブ・スローンズ」で知られるノルウェー人俳優クリストファー・ヒヴュなどが、コロナウイルスに感染したことをインスタグラムやツイッターで報告している。
幸いいずれの俳優も症状は軽いようだったが、ファンたちからは見舞いのコメントが多く寄せられていた。対照的だったのは、性犯罪で有罪判決を受けて刑務所入りしたハーヴィー・ワインスタインがコロナウイルスに感染したニュースに対するコメント。
ワインスタインの被害者の1人、ローズ・マッゴーワンがワインスタインのコロナウイルス感染についてツイートしたところ、「因果応報だ」とか「独房に入れるようにわざと感染したのではないか」などと同情を見せるコメントは一切無し。中には「検査キットの無駄」、「死ねばいいのに。それが彼ができる最善のことだから」と酷薄なコメントも見られた。