大物映画プロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタインが複数の女優たちから性的ハラスメントの被害で訴えられ、ハリウッド中が騒然となったスキャンダルは、まだ記憶に新しいはず。これをきっかけに映画界のハラスメント行為が次々暴露され、業界は大きく変わりましたが、注目のワインスタイン裁判に判決が言い渡されました。そこでこの事件の顛末を再度検証してみましょう。(文・荻原順子/デジタル編集・スクリーン編集部)

有名女優たちの被害でなく、アシスタントや女優の卵へのセクハラで立件された理由は

有罪が確定したハーヴェイ・ワインスタイン

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「ワインスタインに禁錮23年の実刑」

2020年3月12日付 ロサンゼルス・タイムズ紙より

2020年3月12日付のロサンゼルス・タイムズ紙の一面に掲載された記事の1つには、このような見出しが付けられていた。ワインスタインとは、大物ハリウッド・プロデューサーのハーヴェイ・ワインスタイン。ワインスタインは、映画製作・配給会社ミラマックスやワインスタイン・カンパニーを設立。数々のアートハウス系映画の名作を製作した実績を持つ大物プロデューサーとしてハリウッドに君臨していたが、80人以上の女性たちに性的暴行やセクシャル・ハラスメントを加えたとして逮捕・訴追され、ニューヨークで裁判にかけられていたのである。

ワインスタインの性的不品行に終止符を打つきっかけとなったのは、2017年10月5日付のニューヨーク・タイムズ紙の記事と同年10月10日付のニューヨーカー誌の記事だった。

前者は30年間に渡って自社の社員たちや自社作品に関係した女優たちに対してセクハラ行為を続けた結果、示談に持ち込まれた8件について報じたもの。後者は、ワインスタインからセクハラを受けたとする13人の女性たちの証言と、ワインスタインにレイプされたとする女優のアーシア・アルジェントを含む3人の証言、さらにワインスタインからの性的強要を退けたせいでワインスタインから報復されて仕事が激減したとするミラ・ソルヴィノやロザナ・アークエットを含む4人の女優たちの証言を掲載した。

画像: ローマでの集会に参加したアーシア・アルジェント

ローマでの集会に参加したアーシア・アルジェント

ワインスタインはニューヨーク・タイムズ紙の記事に対しては「一緒に仕事をした人たちに対しての自分の振る舞いが苦痛を与えていたことには詫びたい」とコメントした一方、ニューヨーカー誌で報じられたレイプは「すべて合意のもとだった」と主張し、4人の女優たちに対する報復行為についても全面的に否定する声明を発表した。

しかし、沈黙を破った被害者たちの勇気ある声に促されたかのように、グウィネス・パルトロー、アンジェリーナ・ジョリー、ケイト・ベッキンセール、サルマ・ハエック、ローズ・マッゴーワン、アシュレイ・ジャッド、アナベラ・シオラなどの女優やモデル、ワインスタインの会社の社員などが、ワインスタインからレイプやセクハラの被害を受けたことを次々に証言。

残念ながら、その多くはニューヨーク州における性犯罪の時効を過ぎてしまっていたため、ワインスタインに刑事責任を問うことはできなかったが、翌2018年5月25日、ワインスタインは、2006年に当時アシスタントだったミミ・ヘイリーに性的暴行を加えたこと、そして2013年に当時女優を志願していたジェシカ・マンをレイプしたことで逮捕、立件され、裁判にかけられることになった。

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