T-34 レジェンド・オブ・ウォー
T-34 2018年製作
監督/アレクセイ・シドロフ
出演/アレクサンドル・ペトロフ、イリーナ・ストラシェンバウム、ヴィンツェンツ・キーファー
アカデミー賞外国語映画賞受賞作「太陽に灼かれて」の監督ニキータ・ミハルコフが製作し、2019年全“露”No.1ヒットを記録した戦車アクション。第二次大戦下、捕虜になったソ連兵が、たった四人と一両の戦車T-34でナチス・ドイツ軍に立ちむかう。登場するT-34はすべて本物の車両を使用し、「バーフバリ王の凱旋」のVFXを手がけた“FilmDirectionFX”が参加。IMAX上映、“ダイナミック完全版”上映なども行なわれ、日本でも異例のロングランヒットを記録。
2020年4月29日(水)Blu-ray&DVD発売
©Mars Media Entertainment, Amedia, Russia One, Trite Studio 2018
編集部レビュー
これは戦争映画ではなく戦車映画です
僕らが子供の頃は一人一台、戦車を持っていたものだった…って、もちろんタミヤのプラモデルの話ね。特に人気の高かったのが、タイガーとかパンサーとかのドイツ戦車。世界一強い、みたいなイメージはあの頃刷り込まれたに違いない。
そのパンサー(映画ではパンター)の軍団にT-34が立ち向かう、っていうんだからアガるでしょ。「フューリー」の対タイガー戦以来の胸アツバトル!というわけで、お分かりの通りこれは戦車映画であって深長な戦争映画ではない。今まで見たことのない戦車バトルの数々で、エンターテインメントの世界に浸らせてくれるのだ。
「マトリックス」を戦車の砲弾でやってのけるとか、西部劇ばりの戦車一騎打ちとか、そもそも戦車戦に特化するあまり銃撃戦がまったくないという清々しいまでの潔さ!昔日の戦争娯楽映画を思わせる、ワクワクするような一本だ。
レビュワー:近藤邦彦
女性陣がツンデレだの何だのとさざめくのを聞きながら、なるほどそういう見方もあったのかと思い知らされた。それもまた楽しい。
『心底楽しんで!』という心意気と愛を感じる
戦車同士の戦闘の面白さは砲弾の一発一発に重みがあるところだ。特に本作は、4人の捕虜兵が一両の戦車と6発の砲弾だけを武器にナチスに立ち向かう、と最初に手持ちの武器を限定するところがいい。それをどこでどう使うのか。自然、一発一発にドラマとスリルが宿ることになる。
そしてそのシリアスなドラマに、独特なユーモアが添えられているのが本作の魅力。白鳥の湖、キャベツ掠奪など、見ていない方にはまったく伝わらないであろう愉快なシーンが、緊迫感溢れる脱出劇の中で効果的に機能する。
それも含めてサービス精神豊かな映画だと感じた。友情あり、恋愛あり、好敵手とのバトルあり。漫画的と揶揄する人もいるかもしれない。でもそこに『心底楽しんで!』という製作者の心意気と愛を感じた。熱狂的リピーターを生んだというのも納得の作品だ。
レビュワー:疋田周平
副編集長。スクリーンオンラインでは本作宣伝マンによる“完全版IMAX”の突撃レポート記事も掲載されていますのでぜひご一読を。共感必至!
ハリウッドルール無用!の爽快ロシア産映画
かつてトム・クルーズ演じるドイツ軍人が英語でヒトラー暗殺を企てていた映画に多少の違和感を感じつつ、そこはハリウッドルールだと割り切っていた気持ちに新たな風を運んでくれた一作です。
テンポよく進めるため、言葉の壁を取り払ってしまう演出とは真逆に、偉そうなドイツ軍人の罵倒を主人公に丁寧にロシア語に訳す美女。通訳のシーンが長く続くのがまどろっこしいと思うことなかれ、このバイリンガル美女の語学能力が、なかなか面白い展開につながっていくのです。
その他にも「絶対ここ危ない!」というシーンが意外と何もなく終わったり、とにかく見ていて肩透かしを食らうのが、ある意味ジェットコースター映画。これは初めて韓国映画を見た感覚になんとなく似てる!?露映画初心者としては、新たなエンタメを見つけた喜びにニヤリとしてしまいました。
レビュワー:阿部知佐子
ここぞ!というシーンで流れるチャイコフスキーやラフマニノフ、そのへんの演出はどストレート。ロシアの誇りを感じます。