主人公を囲む二人の男性の不器用な姿が愛おしい
40歳。最近では“二度目の成人式”なんて呼ばれる節目の年齢ですが、歳を重ねるほどに“大人”になることが難しいと感じ始める時期でもあるのかもしれません。
そんな年齢を迎える女性が主人公ですが、自分の生き方や考え方を変えることの難しさを痛いほど感じさせるのは、彼女を取り巻く二人の男性。元ロックスターと彼を愛してやまないファンという関係性も面白く、音楽についてぶつかるシーンは自分を曲げられない男同士の不器用な姿が切なくも愛おしかったです。イーサン・ホークとクリス・オダウド、芝居巧者の共演が盛り上げます。
とはいっても、二人の男たちの魅力が際立つのはローズ・バーンのニュートラルな魅力あってこそ。美人だけど、どこかその辺にいる普通の女性っぽさを出せるのはすごい!今回もとびきりキュートに等身大の女性を演じていました。
レビュワー:阿部知佐子
感じることが多いのも、自分が同世代だからなのでしょう…。ローズ・バーンの着こなすアラフォー女性のリアルクローズも参考に。
不安な今の時期にホッとさせてくれます
彼氏が運営するロックスターのファンサイトに辛辣なレビューを投稿したら、本人から返信が!それをきっかけにモヤモヤする人生を送っていたアニーの日常が緩やかに動き始めて…と書くと、そんな都合の良い話、現実には起こるか~い!と思うけど、メインキャスト3人がそれぞれが演じる、ちょっとヘンテコなんだけどついつい感情移入してしまうキャラクターの絶妙さが、この作品を地に足がついたものに変えてくれています。
家族に尽くしていたけれど気付いたらアラフォーのお人好しアニー。自分勝手に生きてきた伝説のロックシンガー(ダメ男)のタッカー。趣味に没頭しすぎてジコチューなんだけど、どこか憎めないダンカン。
それぞれがどんな選択をするのか、それを優しく見つめる目線があたたかく、何かと不安な今の時期にホッとさせてくれる作品です。
レビュワー:中久喜涼子
特に、ダンカンのイラッと感が絶妙でした。もうちょっとアニーの話聞いてやれよ、と何度苦言を呈そうと思ったことか…
王道ロマコメ風ながら登場人物のクセがスゴイ
ニック・ホーンビーが生み出す男性はちょっとイタいのに、どこかチャーミング。「ハイ・フィデリティ」のレコード店の面々も「アバウト・ア・ボーイ」の主人公も、よく言えば自分の世界を持っていて、悪く言えば……コドモ。本作のイーサン・ホークとクリス・オダウドも期待を裏切らない。ただし今回の主役は女性だ。
“大人になりきれない男(オダウド)”と15年を共にしてきたアラフォーのアニー。彼とこじれたとたんにタイプの違う“大人になりきれない男(ホーク)”が現われ……というロマコメ王道の展開だが、実はホークはオダウドが崇拝する伝説のシンガーで、二人がこじれた原因。嫉妬心は単なる浮気だけではなく崇拝からも生まれるらしい。
一筋縄ではいかない三角関係を見守るだけでも楽しいのに、取り巻く人々も個性的。軽やかな風が吹くようなラストも好ましい。
レビュワー:鈴木涼子
年齢期にアニーにも共感しますが、イイ年して心酔する歌手のポスターを堂々と部屋に貼っちゃうオダウド演じるダンカンの生き方に憧れます…