入場者数が通常の3割ほどになっても劇場は利益を出せる?
2020年6月初めの時点では、全米各地でコロナウイルス感染防止のための規制が徐々に解除されつつあるが、映画館も南部を中心とした一部の州では既に営業を再開。他の州でも、7月初めの再開を目指して映画館の接客体制改革のための準備作業が進んでいる。
まず、映画館に来る客たちにはマスク着用を要請したうえで、入場時に検温をする。来客数が多く、一人一人検温することが難しいような大型映画館では、熱探知テクノロジーを使った装置が設置されることもあるだろう。客と従業員との接触を最小限にとどめるため、チケットもオンライン発券で購入し、入場の際には客が自分でスマートフォンやプリントアウトしたチケットをスキャンするやり方が、普及することになりそう。
オンラインでのチケット購入は、発券時に席も予約指定するシステムにすれば、上映時の着席コントロールの点でも有効だ。席と席との間隔を空けて座ることは、観客も、再び映画館で映画を観る際に最も安心感を覚える安全策だと考えているという調査結果も出ており、観客を再び映画館にいざなう有効策の1つと言えそうである。
テキサス州の映画館チェーンの1つは、期間限定で貸切上映パッケージのオファーも始めた。4人から40人という定員で、上映室を貸し切って家族や友人たちだけで安全に映画鑑賞できるというオプションである。
客席の除菌に時間をかけねばならないため1日あたりの上映回数は減るし、上映作品も7月までは過去の作品で、新作ほどの集客力は望めないうえ、入場料も新作と同額というわけにはいかないので、映画館の収益は通常よりかなり減るだろう。
しかし、大手映画チェーン、シネマークの財務責任者によると、たとえ入場者数が通常の30%程度になっても、映画館は収益を出すことができるだろうとのこと。それに加え、過去の作品の上映にあたっては、大手映画会社は映画館に対し過去作品の貸出料を大幅に値引きするオファーを出しているそうである。
劇場公開と同時にオンデマンド配信を開始?
2020年7月1日には、ラッセル・クロウ主演のサスペンス作品「Unhinged」が限定公開されることになっているが、全米の映画館が一斉に営業を再開させるだろうと言われているのは、クリストファー・ノーランの新作「TENET テネット」の公開が予定されている7月17日と、ディズニー・アニメーションの実写化作品「ムーラン」公開予定の7月24日である。
その後は、これまで公開延期されてきた大作や期待作が次々と公開されていくことになっているが、独立プロダクション製作による小規模予算映画の多くは、劇場公開延期に伴う追加コストや、劇場が営業再開した際に集客力のある大作との競争を避けるために、劇場公開を取りやめてオンデマンド配信公開に切り替えられている。
例外は、ユニバーサルピクチャーズの子供向け作品「トロールズミュージック★パワー」で、劇場公開前にオンデマンド配信で公開(日本では10月劇場公開予定)。予想以上の収益を挙げたため、ユニバーサルのCEOが今後も新作を劇場・ネット配信同時公開する可能性を示唆したところ、大手映画館チェーンのAMCが反発して、そのようなことになったら今後はユニバーサル作品の上映を拒否する意向を表明して話題になった。