毎月公開される新作映画は、洋画に限っても平均40本以上!限られた時間の中でどれを見ようか迷ってしまうことが多いかも。そんなときはぜひこのコーナーを参考に。スクリーン編集部が“最高品質”の映画を厳選し、今見るべき一本をオススメします。今月の映画は実在のスター発掘番組の出演者をモデルに描かれる、歌手を夢見るシングルマザーの物語「ワイルド・ローズ」です。

ワイルド・ローズ
2020年6月26日(金)公開

画像: ラスト5分の感動はまさしく本物!! 今月の編集部イチオシ映画「ワイルド・ローズ」

カントリー歌手としての成功を夢見るシングルマザーが、時に愛する家族を傷つけながらも、やがて自分の本当の居場所を見つけていく感動の音楽映画。シンガーソングライターとしても活躍するジェシー・バックリーが主演を務め、劇中で全曲を自ら歌唱。主題歌“グラスゴー”は放送映画批評家協会賞の歌曲賞を受賞するなど賞レースの音楽賞を席巻した。「ハリー・ポッター」シリーズなどの名女優ジュリー・ウォルターズが共演。

監督/トム・ハーパー
出演/ジェシー・バックリー、ジュリー・ウォルターズ、ソフィー・オコネドー

© Three Chords Production Ltd/The British Film Institute 2018

編集部レビュー

ナッシュビルでのシーンがワクワクさせてくれる

画像: ナッシュビルでのシーンがワクワクさせてくれる

歌手になる夢を追いかけるシングルマザーの奮闘記。と書くと身もふたもない感じだけど、この主人公、「幸せをつかむ歌」のメリル・ストリープみたいに夢のために家族を捨てちゃった女性ほど破天荒ではなく、「レイチェルの結婚」のアン・ハサウェイみたいな一家のトラブルメーカーっぽい感じ?

それはともかく個人的に一番の見どころは“ナッシュビル観光”!カントリー歌手の聖地なので、ちゃんと『ライマン公会堂』や『グランド・オール・オープリー』も出てくる。主人公と一緒に“お上りさん”になった感じでワクワクするし、クライマックスよりライマンのステージにこっそり忍び込んだ主人公が無観客の前で歌うシーンの方が感動的だった。

おそらくその時、彼女の心だけにハンク・ウィリアムズやジョニー・キャッシュといった“神”が宿っていたからかもしれない。

レビュワー:米崎明宏
編集長。久々に「歌え!ロレッタ愛のために」とか「ウォーク・ザ・ライン/君につづく道」とかカントリー歌手の映画を見たくなりましたね。

宣伝文句にある「ラスト5分の感動」は本物

夢はいつかきっと叶う。そんなメッセージの映画も嫌いではないけれど、「夢の尊さ」の押し売りに思えて受け止められないこともある。そんなささくれた心にも深く突き刺ささるのが本作だ。

主人公は歌手として成功を夢見るシングルマザー。スター誕生番組の出演者がモデルというが、刑務所帰りで幼い子もいる彼女には、夢の場所は遥か遠い。頼れるのは才能だけ。その歌唱には確かに人の心を動かす何かがある。

でも才能と努力で夢が叶うかといえばそれはまた別の話。むしろ夢より尊いものだってあるというのが本作のテーマだ。それが凝縮されるのが、彼女が最後に歌う自作曲「Glasgow」。「オズの魔法使」を引用し、故郷に捧げるその歌は「それぞれの居場所で懸命に生きる者」の心を静かに癒す。宣伝文句にある「ラスト5分」、その感動はまさしく本物だ。

レビュワー:疋田周平
副編集長。歌手でもある主演のジェシーさんは、カントリーはほぼ聞いてこなかったんだとか。それでこんな歌えるって…才能って凄い。

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