孤高のヒーローはどのようにして生まれたか?シリーズ4作一挙振り返り
第1作「ランボー」(1982)
──戦友の元を訪ねてきたランボーの怒りを買った地元警察が大崩壊に陥る!
「ランボー」(1982)
監督:テッド・コッチェフ
出演:シルヴェスター・スタローン、リチャード・クレンナ、ブライアン・デネヒー
デイヴィッド・マレルの小説『一人だけの軍隊』を映画した記念すべき第1作。舞台は米ワシントン州山間部の田舎町。戦友を訪ねてきたベトナム帰還兵ジョン・ランボーは、よそ者を嫌う保安官に因縁を付けられ、逮捕・拘留される。警察署での拷問まがいの扱い。
そのとき、戦場で捕虜となっていたころの悪夢が甦り、ランボーは保安官たちを反射的になぎ倒して山へと逃走する。たちまち町は不穏な空気に包まれ、州兵も動員されることに。
さらに国防総省トラウトマン大佐も駆け付けた。ここにきて保安官たちは、とんでもない男を敵に回したことを知る。ランボーの正体は、トラウトマンがかつて率いていた特殊部隊グリーベレーの最強の戦士だったのだ……。
『ロッキー』シリーズ以外にヒット作に恵まれなかったシルヴェスター・スタローンにとって、本作は起死回生の一打に。アクション映画ではあったが、帰還兵の悲哀を訴えたアメリカンニューシネマ風の哀切な結末が光った。
なお、原作ではランボーがトラウトマンに射殺されるが、映画では続編を見据えてランボーを生き延びさせた。ジェリー・ゴールドスミスによるメインテーマを基にした主題歌“イッツ・ア・ロング・ロード”もヒット。
第2作「ランボー/怒りの脱出」(1985)
──ランボーのイメージを決定づけたシリーズ最大のヒット作
「ランボー/怒りの脱出」(1985)
監督:ジョージ・P・コスマトス
出演:シルヴェスター・スタローン、ジュリア・ニクソン=ソウル、リチャード・クレンナ
前作の3倍の製作費を投入し、アクションのスケールを増したシリーズ最大のヒット作。服役していたランボーは、トラウトマン大佐の手引きにより、自由と引き換えに、ある任務を引き受ける。
それは、今なおベトナムのジャングルで捕虜となっている米兵の実態調査。CIAのマードックの指揮の下、単身現地に飛んだランボーは、案内人の女性バオとともに奔走。
しかし、不測の事態に直面したマードックは彼を見捨てて作戦を中止。後ろ盾を失った状態で、ランボーは捕虜救出の決死の策に打って出る。監督を前作のテッド・コッチェフから『カサンドラ・クロス』のジョージ・P・コスマトスに変え、ダイナミックな見せ場に重点を置いた。
“地獄はランボーの故郷”というトラウトマンのセリフどおり、ジャングルの過酷な戦場に置かれたランボーはゲリラ戦における卓越した能力を遺憾なく発揮。弓矢を駆使した戦いぶりはランボーの得意技として、後のシリーズのトレードマークとなっていく。
また、本作にはパオと心を通わせたランボーが彼女とキスをする場面があるが、これはロマンス色が希薄なシリーズを通じて、唯一のランボーのキスシーンだ。
第3作「ランボー/怒りのアフガン」(1988)
──旧ソ連のアフガン侵攻を背景により過激なアクションが展開する第3弾
「ランボー/怒りのアフガン」(1988)
監督:ピーター・マクドナルド
出演:シルヴェスター・スタローン、リチャード・クレンナ、カートウッド・スミス
アクションをより苛烈に進化させたド派手な第3弾。タイの寺院に隠遁していたランボーの元に、トラウトマン大佐が現われ、ソ連が軍事介入しているアフガニスタンでの極秘ミッションに参加して欲しいと要請。一度は断ったランボーだったが、大佐がソ連軍の捕虜となったことを知り、アフガニスタンに飛んで救出に向かう。
アフガン・ゲリラの協力を得て難攻不落の敵の要塞へ潜入。大佐を救い出して逃亡を図るランボー。だが、ソ連軍は最強の師団を放ち、追撃してくる……。
ソ連によるアフガニスタン侵攻を背景にした企画だったが、皮肉にも全米公開の10日前にソ連軍のアフガン撤退が始まったことから、ドラマ面では高い評価を得られなかった。
とはいえアクションは見どころたっぷりで、スタントを自らこなしたスタローンの熱演と相まって、砂漠や岩山を駆け戦闘を繰り広げるランボーの、肉体を重視した描写が光る。本作で長編初監督を果たしたピーター・マクドナルドは、この後『ハリー・ポッター』シリーズの2~4作目で第二班監督を務めた。
第4作「ランボー/最後の戦場」(2008)
──前作から20年、戦場から離れていたランボーがミャンマー軍事政権と激突!
「ランボー/最後の戦場」(2008)
監督:シルヴェスター・スタローン
出演:シルヴェスター・スタローン、ジュリー・ベンツ、ポール・シュルツ
実に20年ぶりとなった続編。スタローンはシリーズで初めて監督を兼任し、ミャンマーで行なわれていた民族弾圧・虐殺の実話を世界に発信する意欲作を放った。
タイで蛇狩りやボート運送の仕事をして生計を立てていたランボーは、キリスト教系のNGO団体の人々をミャンマーに送り届けた。一行の目的は軍事政権に弾圧されている少数民族カレン族の支援。
だが、一行は政府軍に捕まり、彼らを救出するために傭兵集団が派遣された。傭兵たちをミャンマーに送り届けることになったランボーは彼らと行動を共にし、理想に燃えていたNGOの女性職員を救うため、残虐非道な政府軍に立ち向かう。
破壊と略奪、レイプ、殺人といったミャンマー軍事政権の蛮行の生々しい描写もさることながら、ランボーの戦いぶりも壮絶で、人体をナイフでぶった切るわ、矢や銃で破壊するわとバイオレンス濃度はシリーズ随一。
流血や人体損壊の描写はショッキングで、スプラッター指数も図抜けたものとなった。ちなみにスタローンは、残忍な映像になった理由を「現実を描いたから」と説明している。
Photos by Getty Images