ブルースのアクションを念頭にしているハリウッド・スターとは?
ここからはハリウッドに目を向けてみよう。ブルースが亡くなったとき、シアトルの葬儀ではジークンドーの門下生で親友でもあったスティーヴ・マックィーン、ジェームズ・コバーンがその棺をかついだ。チャック・ノリスはもともと空手家だったが、ブルースの依頼で「ドラゴンへの道」に出演し、それを機にアクション俳優に転向した。
「マトリックス」シリーズのキアヌ・リーヴズもブルースの影響を強く受けていることを公言しているスターのひとりだ。「アクション映画に出るときはつねにブルースのことを念頭に置いている」と語っており、「ジョン・ウィック:パラベラム」(2019)では特に「死亡遊戯」を参考にしたそうだ。
また、同作の監督でスタントマン出身のチャド・スタエルスキは、鏡の中での戦いのシーンは「燃えよドラゴン」へのオマージュであることを明かしている。
デンマーク出身の〝北欧の至宝〞マッツ・ミケルセンは「子どもの頃からブルース・リーになりたかった」というほどのファンで「20歳頃までにブルースのありとあらゆる作品を見て本も読んだ。『悪党に粛清を』では役作りの参考にした」と述懐した。
監督では、クェンティン・タランティーノが「キル・ビル」を撮った際、「死亡遊戯」でおなじみの黄色いトラックスーツをウーマ・サーマンに着用させ、若い世代にまでブルースという伝説的存在を知らしめた。もっとも「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」に登場したブルースには賛否両論があったが…。
また、リュック・ベッソン監督もブルース好きで知られ、「フィフス・エレメント」にはミラ・ジョヴォヴィッチ扮する謎の生命体美女が、ブルースの映像を見て格闘技を習得するシーンが登場。また、ジージャー演じる少女が主役のタイ映画「チョコレート・ファイター」でも、怪鳥音とともにブルースへのオマージュが捧げられている。
「燃えよドラゴン」に影響を受けたマーベル・キャラクターも登場
一方、日本では、1970年代に香港クンフー映画界で日本人俳優として一時代を築いた倉田保昭は、生前のブルースと交流があったことで知られており、唐沢寿明、沢村一樹、竹中直人らがブルースに影響を受けた俳優として有名。最近は23歳の横浜流星が香港ロケしたTV番組でブルースへの愛を語って注目を浴びた。
2020年の現在、ハリウッドではブルースがらみの作品が話題を呼んでいる。ひとつはマーベル映画の「シャン・チー&ザ・レジェンド・オブ・ザ・テン・リングス」。「燃えよドラゴン」の影響を受け1973年に生まれたマーベル・キャラクターで、国際犯罪者の父に育てられた青年シャン・チーをカナダ育ちの中国人俳優シム・リウが演じる。また、「グリーン・ホーネット」の再リメイクの企画も浮上している。
最後になったが「クロウ/飛翔伝説」(1994)の撮影中の事故により28歳で逝去したブルースの遺児ブランドン・リーの名もここに記しておこう。キアヌ、マッツ、ドニーらと同年代だったブランドン。ブルースが最も愛した継承者として活躍するはずだったブランドン。親子の魂が寄り添うように眠るシアトルの墓地には、今も花を手向ける人が絶えないという。
そんなブルース・リーのすごいところは、没後47年たった今もなお、そのアクションのみならず思想や理念が様々な人々に影響を与え続けていることである。「燃えよドラゴン」の劇中でブルースが少年に説いた「考えるな、感じろ」(Don’t think,Feel)は、今や映画の名セリフを超越し、世間一般、若い世代にまで広く知れ渡っているのである。
『ブルース・リー 4Kリマスター復活祭』2020年7月3日より開催中!
『猛龍生誕80周年!』と銘打って、7月3日からブルース・リーの真髄を込めた主演作4本が4Kリマスター・バージョンとなって上映される“復活祭”が東京・アップリンク吉祥寺などで全国的に開催!上映作品は「ドラゴン危機一発」(1971)「ドラゴン怒りの鉄拳」(1972)「ドラゴンへの道」(1972)「死亡遊戯」(1978)といったゴールデン・ハーベスト社の誇る必見作だ(いずれも配給はツイン)。最高の映像と音声で贈る〈世界初・日本限定バージョン〉というファン垂涎の復活を見逃すことはできない!