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実はトラブルメーカーの一面も......
最新作「グッバイ、リチャード!」では、「残り少ない時間を謳歌してやる!」と決心した主人公が破天荒な行動に出る。これまで過ごした人生への後悔と焦燥感に突き動かされた馬鹿正直で不器用な男が、時にジョニー自身に重なって見えるのは、過去のトラブルを思い出すからかもしれない。
"ハリウッドの反逆児"と称されていたジョニーには、多かれ少なかれスキャンダルがつきまとってきた。
まずは、女性関係。俳優として注目を集めた「シザーハンズ」(1990年)の共演がきっかけでウィノーナ・ライダーと交際し、即、婚約。腕には「Winona Forever」というタトゥまで刻んで永遠の愛を誓ったが、1993年には婚約を解消。
この別れは(本人は否定しているけれど)スーパーモデル、ケイト・モスとの恋が原因だった。何しろ婚約解消直後の1994年のゴールデン・グローブ賞には堂々とツーショットをお披露目しているのだから。
しかし、ケイトとの甘い生活も不安定だった。超多忙なふたりだし、夜遊び大好きなケイトと大酒飲みのジョニーとなればケンカも絶えず、交際当初にはキレたジョニーがニューヨークのホテルで大暴れ。ホテルの備品をぶち壊して、逮捕されたこともあり。まぁ、それでも二人が婚約を解消したのは4年後の98年だったけど。
その別れの直後には「ナインス・ゲート」の撮影で訪れたパリで出会ったヴァネッサ・パラディにひと目ぼれ。即、同居を開始して愛に満ちた穏やかな生活を送り、1999年には長女リリー・ローズ・メロディ、2002年には長男ジョン・クリストファーが誕生。すっかり優しいパパに変身。
ヴァネッサとレストランで食事をしていたところをしつこく追いかけてきたパパラッチとトラブルになって逮捕されたなんていうのも、ご愛嬌かも?
しかし、2012年、そんなベスト・パートナーとの生活に終止符を打った。そう、「ラム・ダイアリー」(2011年)で共演したアンバー・ハードと恋に落ちたのが原因だ。二人は2014年に婚約し、2015年に結婚。
しかし16年にはアンバーから離婚申請が提出された。その理由が「ジョニーのDV」ということで、離婚裁判は泥沼化。一時は決着がついたかに見えたが、未だにくすぶっている。
そんな私生活のトラブルが反映するかのように、2017年には「浪費による散財で破産」が報じられもした。曰く、月のワイン代が330万円とか、毎月2000万円も使ってプライベートジェットで旅行とか、バスキアなど有名アーティストの作品を200点以上も購入しているとか......。
ま、多い時は年間約53億円以上も稼ぎ出すスーパースターの金銭感覚は、庶民には伝説みたいなお話で、実感なし。ファンとしては、あまりお酒を飲み過ぎず健やかに、いつまでも刺激的で魅惑に満ちたキャラクターをスクリーンで見せて欲しいと願うばかり。
何があっても不動の“イイ人伝説”
長引くアンバー・ハードとの離婚劇の影響で"評判ガタ落ち"の声もあるけれど、やっぱりジョニーの"イイ人伝説"は揺るがない。
それが証拠に、ジョニーの暴力が原因とされる離婚裁判が続く中、長年のパートナーだったヴァネッサ・パラディやふたりの子どもたちがジョニーを擁護する発言を度々しているのだから。ヴァネッサ曰く「ジョニーが、親切であり、気配りがあり、寛大な人物であり、暴力的な父親でないことを知っています」。
そう、1995年の主演作「デッドマン」を携えて初来日したジョニーに会って以来、何度も会見してきた筆者も、彼の寛大さや優しさは強く心に残っている。
とくに、2011年5月にロサンゼルスで行われた「パイレーツ・オブ・カリビアン/生命の泉」のジャンケットは忘れられない。世界各国から多くのジャーナリストが集まり個別の会見はなし。ジョニー・デップ、ペネロペ・クルス、監督にプロデューサーが並んだ記者会見のみだと通達されたてガッカリした。
しかし、当日、ジョニーから「日本人ジャーナリストだけの会見を」と要望があったのだ。その理由は、2011年3月に日本を襲った「東北地方太平洋沖地震」へのお悔やみと励ましを言いたいからとのこと。
私たちが待つ部屋に入ってきたジョニーは、「ガンバレ!」と書かれた日の丸の国旗を背に、ジャーナリスト一人ひとりの顔を見て「大変だったねぇ」「大丈夫?また会えてよかった」とにこやかに。もう、その優しいお言葉だけで、当時、かなりヘコんでいた私たちは勇気をいただいた。
そして、ジョニーからは、勇気だけではなく、地震災害への寄付もたくさんいただいたことを、後で知った。大感謝!
そう、ジョニーは密かに各種の慈善活動も盛んに行なっている。例えば、娘リリー・ローズが腎不全で入院していた病院にも「娘を救ってくれてありがとう」と2億円以上を寄付し、同病院に入院中の子供たちの前にジャック・スパロウの扮装で現れておとぎ話を読み聞かせたこともある。
また、「俳優になれ」と勧めてくれた旧友ニコラス・ケイジが財政難に苦しんでいる時には、協力を惜しまないと手を差し伸べてもいる。もちろん、ファンに対してもサイン一つおろそかにせずに"神対応"なの、は有名なお話。
こんなにイイ人な大スターなんて、そうそういないでしょ。
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