学校の主役じゃなくたって二人の青春は十分尊い
いわゆるギークが主役級になって久しい青春映画のジャンルですが、今回の主人公二人はナード系女子だとか。(ギークより面白くない奴という位置づけ?そもそもBooksmartとは勉強ばかりで実践に乏しい人という意味らしい)だけど学校イチのモテ男子にも臆さない主人公はかっこいいし、まわりも彼女たちをイジメる気配もないのがなんだか新しい。
高校時代に恋も遊びも遮断して勉学に勤しんできた二人が、このまま青春を終えたくないと卒業パーティーに繰り出す珍道中は笑いの連発! そのドタバタ劇は見てのお楽しみですが、最後には大人にも響く大切な気づきを教えてくれるシーンにジン…ときます。
高校時代をとうの昔に通り過ぎた身としては、毎朝「やっと会えたね、1日ぶり」って言って妙なダンスを踊る親友がいる、それだけで尊い青春なのだと言いたい…。
レビュワー:阿部知佐子
わかりやすいいじめっこがいないのも最近の青春映画の特徴かもしれません。クラスメイト(先生までも)がみな愛すべきキャラ!
監督の“ものさし”があたたかい
優等生のエイミーとモリー。真っすぐに勉学に励んできたであろう二人は「生徒会長と社会運動家」なんて同級生に揶揄されるぐらいの“超”お利口さん。そんな二人が高校生活最後にハメをはずすわけですが、その慣れなさとドタバタっぷりがとてもかわいらしい!
何より楽しめたのは、クラスメイトそれぞれ皆、個性的であるということ。パーティーにしても定番の大騒ぎだけではなく、寸劇チームあり、船上パーティチームあり、先生の参加もOK! どのあり方も肯定的に見つめていて、オリヴィア・ワイルド監督の、型にはめない“ものさし”に好感が持てました。
エイミーの同性愛者というキャラクターも違和感なく、今の時代の感覚を張り巡らせたオリヴィア・ワイルド監督のバランス良い感性が至る所に光っている、元気がもらえる一品です!
レビュワー:中久喜涼子
パリピキャラのジジを演じるビリー・ロードはキャリー・フィッシャーの娘だそう。「マジック・マイク」のライリー・キーオのように印象に残る存在でした。
知ってるはずのテーマが斬新に感じたその理由は…
不思議な作品だった。青春映画、ガールズムービーといった普遍的なテーマなのに新しさを感じたのは、これまでの青春映画は恋愛成就が最終地点だったのに対し、本作では停留所的に一応“恋愛”を通過するけれど目的地は別のところにあるから? 確かに。でもそれだけではない。
主人公の女子二人が自分たちを見下してきた面々を見返さないから? 確かにそれもある。でもたぶん一番の理由は、本来なら後半で悪役扱いされるであろうスクールカースト上位のキラキラ組やクラスで浮いてるお金持ちのアイツとか、今まではモブキャラでしかなかった彼らの内面に寄り添ってくれているから。それによって青春してるのに見たこともない映画になっているのだと思う…と薄気味悪く分析してみたけれど、一つ言えることはアメリカの学生が卒業式に被るあの帽子、やっぱり憧れるよね!
レビュワー:鈴木涼子
個人的に女子映画といえば「ゴーストワールド」と60年代のチェコ映画「ひなぎく」。どっちもダークなエンディングでそこに惹かれるんです。