今月の一本「幸せへのまわり道」
2020年8月28日(金)公開
アメリカの国民的子どもテレビ番組の司会者を務めたフレッド・ロジャースの実話を基にした感動のヒューマン・ドラマ。ロジャースを演じたトム・ハンクスが2020年アカデミー賞助演男優賞にノミネートされた。父親との間に長年のわだかまりを抱える雑誌記者ロイド・ボーゲルと、“聖人”として誰からも愛されたロジャースの心の交流を描く。「ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書」でもトム・ハンクスと共演したマシュー・リスが雑誌記者を演じる。
監督/マリエル・ヘラー
出演/トム・ハンクス、マシュー・リス、クリス・クーパー
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編集部レビュー
フレッド・ロジャースのドキュメンタリーと併せて見てみたい
トム・ハンクスがアカデミー賞助演賞候補になりながらお蔵入りしたのかと思ったら、公開決定でまずはめでたし。というのも彼が演じる実在の人物フレッド・ロジャースは全米で知らぬ者はなくても、海外ではほぼ知られていないTV界限定のスターだから?映画の出来は良くても商売になりにくいと判断されかねない。
ただこの映画を見てもまだロジャースが本当はどんな人か疑問が湧いてくる。単なる聖人ではなさそうな彼のことを調べるとドキュメンタリーが前年に作られていて、題名が『Won’t You Be My Neighbor?』(未)。これって伝記ドキュメンタリーとして全米史上最高のヒットになって軒並みその筋の映画賞を受賞したのに、最有力といわれたオスカーでなぜか候補から外れた曰くつき映画。なぜ落選したのか謎でもあったけど、ますます見てみたくなった!
レビュワー:米崎明宏
編集長。で、肝心の本作はというと前半ロジャースがあまりに謎の人物すぎて身構えてしまうんですが、結局普通に感動できる良作でした。
確かに存在していた本物の「ヒーロー」
フレッド・ロジャースという名前を聞いて日本で「あの人ね」とすぐ思い浮かぶ人は少ないかもしれない。ロジャースは30年以上続いた有名な子ども番組の司会者。聖職者でもあり、温かく実直な姿勢で“神様”と尊敬された人物だ。本作が面白いのは、主人公の取材記者との交流から彼の実像を描く点。トム・ハンクスもアカデミー賞「主演」ではなく「助演」男優賞にノミネートされている。
ロジャースの人間的魅力が凝縮されているのが、彼が子どもたちに向かって語りかけていた言葉の数々だ。例えば彼は言う。「怒るのはやめられるよ。あなたが望めばいつでも」と。その言葉は、ある怒りに囚われた主人公記者の心も救うことになる。画面の向こうから「誰もが特別な存在」であることを説き続けたロジャース。確かに存在していた本物の「ヒーロー」の姿に胸が熱くなった。
レビュワー:疋田周平
副編集長。ロジャースが時々やっているという「一分間」のトレーニングの場面も印象的でした。一分の静寂に誰を想うか…素敵な時間。