ヒットカラーの黒は大人のこだわりか
色的には黒が90年代のヒットカラーだったかもしれない。「パルプ・フィクション」(1994)の伝説的なダンスシーンで、ウーマ・サーマンは真っ黒なボブヘアに白いメンズシャツ、黒いクロップドパンツで、同じく黒スーツのジョン・トラボルタと一緒にフロアに上がる。同作ではサミュエル・L・ジャクソンもトラボルタと揃いのブラックスーツで決めている。
もっと黒が強烈なのは同じクェンティン・タランティーノ監督の「レザボア・ドッグス」(1992)。出演もしているタランティーノはアニエス・ベーのブラックスーツを、マイケル・マドセンはカウボーイブーツを合わせて、ティム・ロスはレイバンのサングラスをかけて、全員が自分流の黒づくめ。そこには、巷に溢れるカジュアル・ファッションに辟易した大人の男たちのこだわりが現れていたような。
90年代プレップ・ファッションの聖典的な「クルーレス」
でも、90年代最大のファッション・ムービーは、90年代風プレップ(名門私立高校)スタイルを劇中で紹介しまくった「クルーレス」(1995)だろう。何しろ、女子高校生たちが着るチェックの柄はトータルで53種類。
中でも、アリシア・シルヴァーストーン演じるヒロイン、シェールがチョイスするドルチェ&ガッバーナの黄色いタータンチェックのミニスーツは、映画を代表する逸品だ。他にも、シェールはシースルーの白いハイソックスにシルバーのパンプス、白いTシャツにクラシックなバイカージャケット、今は亡きボディコンの元祖、アズディン・アライアの真っ赤なミニドレスと、「女の子ならこうありたい!」というワードローブを次々に披露。
結果、「クルーレス」は今もオシャレ女子たちのバイブルとして愛され続け、2017年にはアリシアが当時のアイコニックな衣装の数々を、22年ぶりに自ら着てリブートしたほど。特に、黄色いチェックのセットアップは近年ハロウィンの変装アイテムとして人気なのだとか。恐るべし「クルーレス」! 不滅のアリシアなのだ!
以上、色々並べてみた映画で辿る90sファッション。今、ファッションの世界で90sがブームと言われているけれど、代表的な映画をこうして改めて紐解くと、ファッションが単なる憧れから自分たちレベルへシフトしたのが1990年代だったことに気づいた。そう、ファッションはいつも自分流であるべき。ブームはある意味、必然なのだった。
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