イントロダクション
これまで“母と子”というテーマを一貫して描き続けてきたグザヴィエ・ドラン。監督最新作では“たった一度のキス”から始まる真っすぐな純愛物語に挑戦して新境地を開いた。本作を作るきっかけとなったのは、1980年代のイタリアを舞台に、二人の青年がひと夏の恋に落ちるさまを描いた映画『君の名前で僕を呼んで』。
ドランはこの映画を観たあと「しばらく動けないほどの衝撃だった」と語っており、その思いから『マティアス&マキシム』の脚本を執筆したという。『トム・アット・ザ・ファーム』以来6年ぶりに自身の監督作品への出演を果たし、地元カナダ・ケベックでの撮影を行っていることからもドランの本作への本気度が伝わってくる。
マティアス役はドランの友人でもあるガブリエル・ダルメイダ・フレイタス、共演は「キングスマン:ファースト・エージェント」のハリス・ディキンソン、ドラン作品へは4度目の参加となるアンヌ・ドルヴァル。
ストーリー
幼馴染で30歳のマティアス(フレイタス)とマキシム(ドラン)は、ひょんなことから友人の妹が撮る短編映画への出演を懇願される。撮影が始まり、男性同士のキスシーンを演じることになった二人は、キスをきっかけに秘めていた互いへの気持ちに気づき始めるが、婚約者がいるマティアスは親友に芽生えた感情に戸惑いを隠せない。
マキシムは友情が壊れてしまうことを恐れ、気持ちを隠したままオーストラリアへと旅立つ準備をしていた。別れの日が迫る中、二人は互いへの想いを募らせていくが……
見どころ
本作に影響を与えた4つの作品
『ブルックリンの片隅で』、『ゴッズ・オウン・カントリー』、自身も俳優として出演した『ある少年の告白』、『君の名前で僕を呼んで』にインスパイアされて“自分にとても近い映画を作ろうと思った”というドラン。本編冒頭にはそれぞれの監督に敬意を表して「エリザ、フランシス、ジョエル、ルカに捧ぐ」というテロップが流れる。
ひかれあう二人の間にある格差
今は離れて暮らす弁護士の父親を持つマティアスは、裕福な家庭で母親の愛情を受けて育ったが、マキシムは貧しい母子家庭で育ち、物心ついた頃から母親の面倒を見て苦労している。マキシムという名前はワーキングクラスに多く、マティアスという名前はワーキングクラスでは珍しいことからも2 人が育った環境の違いがわかる。
劇中の友人は私生活の仲間たち
友達役の全員が20代後半になってできたドランの本当の仲間たち。自分の人生とライフスタイルを変えてくれたという彼らに“ アイデンティティとセクシャリティに関して自問して欲しい” という思いから参加してもらったのだそう。地元ケベックで本物の仲間たちと芝居をしたことも、ドランにとって新しい挑戦になったと言える。
マキシムの痣について
仲間はマキシムの顔の痣について一切触れることはない。それは彼らがマキシムを受け入れている証拠であり、マキシムにとって彼らは顔の傷のことを忘れられる心地の良い存在であることがわかる。マキシムの痣について“ 自分の心にある傷のようなもの” と語るドラン自身にとって、友達は“ 不安や怖れ” を忘れさせてくれる存在だ。
登場人物
マティアス(ガブリエル・ダルメイダ・フレイタス)画像左
大学卒業後エリート街道まっしぐらの順調な生活を送り、婚約者もいる。真面目すぎて仲間たちにからかわれることも。
マキシム(グザヴィエ・ドラン)画像右
介護が必要な母親の面倒を見ていたが、母親との関係性が悪く、自身の可能性を広げるためにオーストラリア行きを決断。
ケヴィン(ハリス・ディキンソン)
若き弁護士で自信家。鼻につく発言を連発してマティアスを困惑させる。
「マティアス&マキシム」
2020年9月25日(金)公開
原題:マティアスとマキシム
製作国:カナダ
年:2019
時間:2時間
配給:ファントム・フィルム
監督:グザヴィエ・ドラン
出演:ガブリエル・ダルメイダ・フレイタス、グザヴィエ・ドラン、ピア・リュック・ファンク
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