「現実を超えようとするのは、人間の基本的欲望である」
本作は、イギリスを代表するSF作家J・G・バラードが1973年に発表した同名小説を、『ザ・フライ』(86)、『裸のランチ』(91)などで知られるカナダの鬼才デヴィッド・クローネンバーグ監督が映画化した作品。
第49回カンヌ国際映画祭で審査員特別賞を受賞。フランスの映画雑誌「カイエ・ドゥ・シネマ」が選ぶ1996年の映画ランキングで堂々の1位を獲得。さらにマーティン・スコセッシ監督が選ぶ1990年代のベスト映画にもランクイン、と数々の称賛を浴びる一方で、その過激な性描写にイギリスの新聞「デイリー・メール」紙が1面で上映禁止を呼びかけるなど、賛否両論を巻き起こした衝撃の問題作だ。
このたび解禁となる予告編は、高層マンションのバルコニーで、主人公ジェームズ(ジェームズ・スペイダー)が妻キャサリン(デボラ・カーラ・アンガー)を後方より見つめる意味ありげな場面から始まる。
階下には無数の車が走る高速道路。次に「自動車事故は性的エネルギーの解放だ」という衝撃的な言葉と、ジェームズが乗った車が正面衝突の事故を起こす場面が続けざまに展開される。大けがを負いながらも、何故か得も言われぬ表情のジェームズ。彼は事故で今までになかった性的快感を覚え、危険なフェティシズムにハマっていくのだった……。
予告の後半では、「現実を超えようとするのは、人間の基本的欲望である」というクローネンバーグ監督の言葉と、車のボディを人間の体のようにゆっくりと撫でる手が映し出される。本ビジュアルでも赤い車が肉感的にデザインされているが、予告も同様にどこか艶めかしさを感じる映像となっている。
クローネンバーグ監督は、「フィルムの粒子を損なわないように4K修復した」とインタビューで語っており、予告編の素材もクリアに蘇った映像が見どころ。全体を通してどこか冷たく、温度を感じさせない近未来的な映像も特徴だ。
死と隣合わせの危険な快感への目覚め、人体損壊と車体の破損への欲求と美意識。肉体と機械、性別、倫理といったあらゆる境目を越えた先にあるものとは……。後戻りできない世界にどこまでも堕ちていく姿を、クローネンバーグならではの映像世界で描ききった異常に満ちた唯一無二の傑作が「4K無修正版」として新たに生まれ変わる。
クラッシュ 4K無修正版
2021年1月29日(金)よりシネマート新宿ほか全国順次公開
配給:アンプラグド
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