見どころポイント
その1 サンホ監督のパンデミック・ユニバース!
前作「新感染 ファイナル・エクスプレス」と、その前日譚であるアニメ作品「ソウル・ステーション/パンデミック」、そして本作「新 感染半島 ファイナル・ステージ」は、3本で才人ヨン・サンホ監督による韓国パンデミック・アクションのユニバースを作っている。
ゾンビの発生によって、格差問題や他人への無関心、家族のあり方など社会的なメッセージがあぶり出されるのが見どころのひとつだ。「新感染 ファイナル・エクスプレス」で高速鉄道に飛び乗ってくる第一の感染者役でカメオ出演していたのは「新聞記者」で日本アカデミー賞主演女優賞に輝いたシム・ウンギョン。
サンホ監督のお気に入りで、「ソウル・ステーション/パンデミック」ではヒロインの風俗嬢のアフレコを担当していた。今回もどこかに顔を見せていないかな?「ソウル・ステーション~」は最後に思わぬどんでん返しがある作品! 一見の価値があります。
その2 ポスト・アポカリプスの世界を作り上げる!
今回の舞台は、ウイルスの発生から4年後。文明が崩壊してしまった死の街だ。前作が車内という線の映画なら、今度は面に広がるアクション映画。韓国映画界の美術、特撮分野の精鋭スタッフを総動員して、見渡す限りの荒れ果てた世界や、631部隊の巨大な要塞が作られた。
「ウォーキング・デッド」シリーズにも負けないスケール感。ゾンビ映画の始祖、ジョージ・A・ロメロ作品のような終末感も漂っている。主人公たち(と観客)はその中を進んでゆくのだ。
その3 敵もゾンビもなぎ倒せ。猛烈なカーアクション!
ジョンソクが出会ったミンジョン一家は、死の世界を生き延びてきたサバイバル・ファミリーだ。助けを求めるだけだった母親も今ではマシンガンを構える女兵士。娘の少女ジュニ(イ・レ)は天才ドライバー。映画の終盤では大金を乗せた大型トラックとジュニが運転するカスタムカー、ファン軍曹らの改造車がすさまじいカーチェイスをくり広げる。
ゾンビの大群も押し寄せて、これは肉弾相打つ韓国版「マッドマックス 怒りのデス・ロード」だ! 爆走列車の次はカーチェイス。 ゾンビ映画をアップデートするサンホ監督の挑戦はつづく。
その4 K-ZOMBIE映画の決定版!
「新感染 ファイナル・エクスプレス」のヒットは、韓国映画界にK-POPならぬK-ZOMBIEブームを作り出した。ヒョンビンとチャン・ドンゴン共演の歴史物「王宮の夜鬼」、ゾンビに噛まれると若返ることに気づいた一家がそれを商売にしようと企むコメディー調の「感染家族」、ゾンビの群れに囲まれ孤立したおたく少年の奮闘記「#生きている」(ネットフリックスで配信中)など。それぞれに工夫があって楽しい。
今やゾンビはホラー映画界一の人気キャラクター。サンホ監督はそこに激烈なアクションをぶつけてきた。行く当てのなくなった孤独な男を演じるカン・ドンウォン、娘たちを守って戦う母親イ・ジョンヒン、狂気の軍人キム・ミンジェ。荒れ果てた世界と抜きあう俳優たちも名演だ。
その5 歩くゾンビ、走るゾンビ。どちらもヤバい!
ゾンビ映画の先駆け、ジョージ・A・ロメロ監督の「ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド」(1968年)や「ゾンビ」(1978年)のころは知恵も運動能力も失ってふらふら歩くだけだった蘇った死者=ゾンビ。生者を追い詰め、全員で貪り食ってしまう。
それも不気味だったけれど、21世紀に入るとより攻撃性を増した"走るゾンビ/感染者"が増えてきた。「28日後…」「ドーン・オブ・ザ・デッド」「REC/レック」「ワールド・ウォーZ」など。獲物を見つけると全力疾走! 下手すりゃ生きてるときよりも元気なのだから始末に負えない。
「新感染」シリーズのゾンビは、噛まれると1分ほどで即感染する、暗闇では行動が鈍化する(夜間やトンネルの内部では、うつむいてじっとしている)、それを利用して音や光で誘導できる、人間以外の動物にも感染するといった特徴を持つ。でもゾンビより怖いのは欲に目がくらみ、自分だけが生き延びようとする人間ですね。それが多くのゾンビ映画の隠し味になっている。