ここ数年、台湾映画の勢いが止まりません。自国の歴史やシリアスな題材を新たな切り口で描いた作品が、劇場・配信問わずハイペースで日本に上陸しています。とくに今夏は若き才能たちの話題作が立て続けに公開。今一番気になる最新の台湾映画をたっぷりお届けします!(文・村上淳子/デジタル編集・スクリーン編集部)

2021年8月20日(金)公開
恋の病 ~潔癖なふたりのビフォーアフター~

全編をiPhoneで撮影!凸凹カップルの予測不能なラブストーリー

画像: 全編をiPhoneで撮影!凸凹カップルの予測不能なラブストーリー

重度の潔癖症の青年ボーチン(リン・ボーホン)は翻訳で生計を立て、引きこもり生活を送っていた。ある日、いつものように防塵服に手袋とマスクの完全武装で外出した彼は、電車内で同じような格好をした女性ジン(ニッキー・シエ)を発見。彼女も重度の潔癖症で意気投合、接触なしの恋から同居が始まる。

ところがボーチンの潔癖症が突然消えたことでふたりの関係は変化していく…。『あの頃、君を追いかけた』で執行監督※を務めたリャオ・ミンイーの監督デビュー作。

※主に撮影現場での指導や指揮などを行う人

チェックポイントはここ!

突飛な設定とポップな世界観

画像: 突飛な設定とポップな世界観

ものすごく現代的な潔癖症という病から始まり、普遍的な愛の問題、男と女の役割関係に着地する意外な展開が面白い。また衣装やインテリアがポップでスペインやフランス映画のようなセンスが映像から溢れている。

\この台湾映画もオススメ!/

『ラブ ゴーゴー』(1997)

画像: © Central Pictures Corporation
© Central Pictures Corporation

個性的なキャラクターたちが織り成す、初恋の人との再会や声に惹かれる不器用な恋愛模様を描いたラブコメ。

恋の病 ~潔癖なふたりのビフォーアフター~
2021年8月20日(金)公開

台湾/2020/1時間40分/エスピーオー、フィルモット
監督:リャオ・ミンイー
出演:リン・ボーホン、ニッキー・シエ
© 2020 牽猴⼦整合⾏銷股份有限公司 滿滿額娛樂股份有限公司 台灣⼤哥⼤股份有限公司

自国の歴史や社会問題を取り入れて存在感を放つ、台湾映画のいま。

1980〜90年代はエドワード・ヤンやホウ・シャオシェンなど社会派の監督の作品が高く評価されてきた台湾映画界だが、このところ自国の歴史や社会問題をベースにした上で、普遍的なテーマやエンタテイメント性に注力した多彩な作品が生み出されている。2020年金馬奨(台湾アカデミー賞)で5冠の快挙となった『1秒先の彼女』は何事にもワンテンポ早いヒロインの現実と非現実の境目を描くファンタジー・ラブコメで高評価を得た。

画像: 『1秒先の彼女』(公開中) ©MandarinVision Co, Ltd

『1秒先の彼女』(公開中)

©MandarinVision Co, Ltd

同年、最高興収を記録した『弱くて強い女たち』(Netflixで配信中※)は、あのビビアン・スーが出演し製作総指揮にも名前を連ねている。夫の失踪後、3人の娘を育て上げた母と娘達の想いが交錯する完成度の高いストーリーはシュー・チェンチエ監督のデビュー作とは思えないほど。

台湾映画を語る上で、「白色テロ」と呼ばれる歴史の暗部は外せない。中国国民党による恐怖統治が行われ、38年間の長きに渡る戒厳令が敷かれていたのだ。

昨年、話題を集めたNetflix映画『君の心に刻んだ名前』は、1987年に戒厳令が解除された直後の男子高が舞台。同性愛が許されない時代に燃え上がる想いを、リウ・クァンフイ監督自身の実体験をもとに映画化。エドワード・チェン、ツォン・ジンファの主演ふたりの激しくぶつかり合う競演は鮮烈で金馬奨2部門を受賞した。

画像: Netflix映画『君の心に刻んだ名前』独占配信中

Netflix映画『君の心に刻んだ名前』独占配信中

台湾では2019年にアジア初の同性婚が認められる前から、本作のようなLGBTQをテーマにした秀作が制作されてきたが、ホウ・シャオシェンが製作総指揮を務めたドキュメンタリー『日常対話』(7月30日公開)では、ホアン・フイチェン監督が同性愛者である母親との軋轢を描き、深い余韻を残す作品を作り上げ、ベルリン国際映画祭でテディ賞を受賞している。

今後、残念ながら香港映画が中国の影響下でテーマが規制されるなか、台湾映画はますます大きな存在感を放つに違いない。

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