カバー画像:『アベンジャーズ』(2012)より ディズニープラスで配信中 © 2021 Marvel
ヒーローから悪役まで幅広くこなす どの作品にも欠かせない存在
先日、来年のアカデミー名誉賞がサミュエル・L・ジャクソンに贈られることが発表された。これは生涯に渡る卓越した功績と映画界への並外れた貢献を讃えるため贈られるもので、まさにジャクソンにふさわしい賞だ。
最近はMCUのニック・フューリー役でよく知られているが、最新作『スパイラル:ソウ オールリセット』が間もなく公開、近年も『ターザン: REBORN』(2016)『トリプルX:再起動』『キングコング:髑髏島の巨神』(2017)など多くの作品に出演、これまでの出演作はすでに130本を超えている。
ジャクソンは1948年12月21日、ワシントンDC生まれ。もう七二歳だ。アトランタのカレッジで演劇を学び、76年にニューヨークに出て舞台やTVに出演、81年の『ラグタイム』で本格的な映画デビューを飾った。
彼を語る時のキーワードはニック・フューリーの他にも三つある。スパイク・リー、クエンティン・タランティーノ、そしてメイス・ウインドゥ(『スター・ウォーズ』)だ。
まず80年代にブラックパワー映画の旗手だったスパイク・リー作品には1988年の『スクール・デイズ』に出演してから常連となり、1991年の『ジャングル・フィーバー』ではカンヌ映画祭の助演賞を特別受賞、他にも『ドゥ・ザ・ライト・シング』(1989)『モ’・ベター・ブルース』(1990)に出演、後年には『オールド・ボーイ』(2013)にも出ている。
タランティーノ関連ではまず脚本作の『トゥルー・ロマンス』(1993)に出演後、監督第二作の『パルプ・フィクション』(1994)への出演でアカデミー助演男優賞候補となり、続く『ジャッキー・ブラウン』(1997)ではベルリン映画祭男優賞に輝いた。その後も『ジャンゴ 繋がれざる者』(2012)『ヘイトフル・エイト』(2015)とタランティーノの作品には欠かせない存在となっている。
そして1999年、『スター・ウォーズ』が新三部作として再始動した際にはヨーダに次ぐジェダイ・マスターのメイス・ウインドゥとして登場、ジャクソンもついにブロックバスター作品の重要な役を演じるまでになった。
それ以外にも『ジュラシック・パーク』(1993)『ダイ・ハード3』(1995)『キングスマン』(2014)など語るべき作品は多いが、ヒーローから悪役までこなすジャクソンはいまだ衰えを知らず、MCU初のアニメシリーズとなる『ホワット・イフ…?』(2021)への声の出演をはじめこれからも活躍を続けてくれそうだ。
サミュエル・L・ジャクソンを形作った4つのキーワードから見る代表作
キーワード1:スパイク・リー監督
〜相性ばっちりで何度もキャリア初期に脇役ながら連続起用してくれた恩人〜
『ドゥ・ザ・ライト・シング』(1989)
その年一番の暑さを記録することになるブルックリンの黒人街の一日をリズミカルにスケッチしたスパイク・リーの監督第4作。ジャクソンは街の小さなラジオ局を一人で切り盛りするDJミスター・セニョール・ラブ・ダンディ役で狂言回し的役割を果たしている。
『モ’・ベター・ブルース』(1990)
一人の人気ジャズ・トランペッターの人生の浮き沈み、女性関係などを、デンゼル・ワシントンの主演で描いた音楽ドラマ。ジャクソンは、ワシントン演じるトランペッターをリーダーとするバンドのマネージャーがハマってしまうスポーツ賭博の胴元マドロック役。
『ジャングル・フィーバー』(1991)
ウェズリー・スナイプスとアナベラ・シオラの主演で、アフリカ系男性とイタリア系女性の異人種間恋愛が描かれる。ジャクソンは主人公の厄介者の兄という役で、カンヌには助演賞の規定がなかったにもかかわらずこの回だけ特別にジャクソンに助演賞が贈られた。
キーワード2:クエンティン・タランティーノ監督
相性ばっちりで何度もコンビを組む超個性派監督
『パルプ・フィクション』(1994)
複数のエピソードを錯綜した時制でテンポ良く描いた異色のバイオレンス・アクション。ジャクソンは実質的主演のジョン・トラヴォルタとコンビを組むギャングのジュールス役で、作品はカンヌでパルムドールに輝き、ジャクソンも英国アカデミー賞助演男優賞受賞。
『ジャンゴ 繋がれざる者』(2012)
元奴隷のジャンゴがドイツ人賞金稼ぎに救われ、生き別れた妻を取り戻そうとするバイオレンス西部劇。ジャクソンはレオナルド・ディカプリオ扮する非情な農園主の執事役。アカデミー賞ではタランティーノが脚本賞を、クリストフ・ヴァルツが助演男優賞を受賞。
『ヘイトフル・エイト』(2015)
猛吹雪のため一軒の家に閉じ込められた8人の男女の争いを描いたミステリアスな西部劇。ジャクソンの役は元北軍の賞金稼ぎで実質的な主役と言える。音楽はエンニオ・モリコーネで35年ぶりに西部劇のために作曲、アカデミー賞・ゴールデングローブ賞作曲賞受賞。
キーワード3:メイス・ウインドゥ
自身のキャリア中でも最もアイコン的なジェダイ・マスター役
『スター・ウォーズ エピソード1 /ファントム・メナス』(1999)
アナキン・スカイウォーカーの成長を描く新三部作の一作目。ジャクソンはヨーダに次ぐジェダイ・マスターのメイス・ウインドゥ役でライトセーバーの腕も立つ。アナキンがジェダイの訓練を受けることを最初は禁じるが、後にオビ=ワンの弟子になることを認める。
『スター・ウォーズ エピソード2/クローンの攻撃』(2002)
新三部作の二作目。前作から10年後を舞台に、アナキンとパドメの恋愛、クローン戦争開戦の経緯が描かれる。メイスは、分離主義者で実はシス卿でもあったドゥークー伯爵に囚われていたオビ=ワン、アナキン、パドメを処刑寸前に救出するという活躍を見せる。
『スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐』(2005)
新三部作最終章。クローン戦争開始後3年目の時点から始まり、アナキンが変節してダース・ベイダーとなっていく過程や、ダークサイドの最高権力者ダース・シディアスの正体などが描かれていく。メイスはダークサイドに落ちたアナキンに裏切られ、命を落とす。
キーワード4:ニック・フューリー
近年最大の当たり役はアベンジャーズ結成を促した陰の功労者
『アイアンマン』(2008)
アベンジャーズの一員アイアンマンの誕生を描くマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)第一作。ニック・フューリーはS.H.I.E.L.D.長官としてエンドクレジット後にトニー・スターク邸に侵入、アベンジャーズ結成を持ちかける。ノンクレジットでの出演。
『アベンジャーズ』(2012)
アイアンマン、キャプテン・アメリカ、ソーらによるスーパーヒーローたちの最強チーム、アベンジャーズ結成とその戦いを描いた大ヒット作。フューリーは四次元キューブがロキに奪われたことから地球の危機と判断、ヒーローたちを招集、チーム結成を呼びかける。
『キャプテン・マーベル』(2019)
1990年代を舞台にキャプテン・マーベルの誕生を描く。フューリーもまだ若く現場エージェントの時期で、左目も負傷していないが、終盤で負傷の経緯が明らかに。キャプテン・マーベルの存在によって超人的ヒーローの必要性を痛感、アベンジャーズ結成を思いつく。
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スパイラル: ソウオールリセット
2021年9月10日(金)公開
世界的に大ヒットしたホラー映画『ソウ』シリーズ。その過去8作品をアップデート&リセットした完全な新章の誕生。地下鉄の線路上である刑事の凄惨な遺体が発見される。それはあの猟奇殺人鬼ジグソウを凌駕する犯人が仕掛けた新たなゲームの始まりだった。一匹狼の刑事ジークと新米
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