核戦争回避のために命を懸けた男たちの決断をスリリングに描く迫真のスパイ・サスペンス
1960年代初頭、アメリカとソ連が一触即発の状態に陥った「キューバ危機」。その世界滅亡の危機を未然に防いだのは、“スパイ”にスカウトされた平凡なセールスマンだった。『ドクター・ストレンジ』(2016)のベネディクト・カンバーバッチ最新作は核戦争回避のために命を懸けた男たちの葛藤と決断を描く迫真のスパイ・サスペンスだ。
1962年10月、カリブ海のキューバにソ連が核ミサイル基地を建設していることが発覚。世界が核戦争寸前の危機に陥ったこの「キューバ危機」に際し、極秘任務を託されたのが、スパイの経験など一切ないセールスマン、グレヴィル・ウィンだった。20世紀政治史の闇に葬られた米・ソ諜報戦の驚愕の真相が、いま明かされる。
主人公ウィンを演じるカンバーバッチは製作総指揮も兼任。ウィンと数奇な友情で結ばれるソ連の高官役に『ジュピターズ・ムーン』(2017)のメラーブ・ニニッゼ。相対する名優二人のケミストリーが本作の大きな見どころだ。監督はTV『ホロウ・クラウン/嘆きの王冠』でもカンバーバッチと組んだドミニク・クック。
非凡なキャラクターを多く演じ、忘れがたい名演を披露してきたカンバーバッチ。今回もありふれたビジネスマンを体現する前半から、過酷な現実に翻弄され風貌まで変わっていく後半まで、圧倒的リアリティーで実在の人物を熱演し、全米メディアから「役作りのバケモノ」と絶賛を浴びた。英国随一の演技派たるその実力に改めてうならされること必至だ。
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キューバ危機
1960年代初頭、米ソの核武装競争が激化。1962年10月、カリブ海のキューバにソ連の核ミサイル基地建設が発覚し、世界は核戦争寸前の危機に陥った。これがすなわち“キューバ危機”。「人類史上最も危険な13日間」ともいわれ、『13デイズ』(2000)として映画化されたことでもおなじみだ。本作はその裏で、戦争回避に決定的な役割を果たした二人の男の知られざる実話が基になっている。
登場人物紹介
グレヴィル・ウィン(ベネディクト・カンバーバッチ)
平凡な英国人セールスマン。突然スパイとしてスカウトされ、出張先のモスクワから秘密裏に軍事機密を持ち帰るという危険な任務を担う。
オレグ・ペンコフスキー(メラーブ・ニニッゼ)
GRU(ソ連軍参謀本部情報総局)の大佐。世界平和のために愛する祖国を裏切る。パートナーとなるウィンと体制を超えた友情で結ばれる。
エミリー(レイチェル・ブロズナハン)
※画像右
米・ソ対立の最前線で任務に就くCIA捜査官。一般人のウィンを“運び屋”としてモスクワに送り込むという大胆なアイディアを実行に移す。
インタビュー/ドミニク・クック監督
この素晴らしい脚本を読んで「カンバーバッチにぴったりだ」と直感しました
ドミニク・クック プロフィール
1966 年、ロンドン、ウィンブルドン出身。舞台演出家として名高く、カンバーバッチとは多くの舞台や『ホロウ・クラウン/嘆きの王冠』などのTV作品でも組んでいる。本作は2018年の『追想』に続く監督2作目。
── ベネディクト・カンバーバッチとの久しぶりの仕事はいかがでしたか?
「彼は世界で最も偉大な俳優の一人です。本当にそう信じています。彼とは舞台やテレビで長い間一緒に仕事をしてきて、成長と進化を見てきました。時代ごとに人の振る舞いは変わるものですが、彼はどんな時代のキャラクターでも人間味あふれる人物として演じられます。この素晴らしい脚本を読んだときに“彼にぴったりだ”と直感しました」
── 相手役を務めるメラーブ・ニニッゼも素晴らしかったです。
「メラーブ・ニニッゼのことは『マクマフィア』を見て素晴らしいと思っていました。実は最初はKGBの幹部役でオーディションしたんですが、あまりに素晴らしかったので、もう一度ペンコフスキー役でオーディションを受けてもらいました。そして全員一致で彼に決まりました」
── 諜報戦だけでなく登場人物の家族も描かれているのが印象的でした。
「スパイドラマでこれほど結婚生活が描かれている作品はあまりないと思います。大切な家族に隠しごとをしなければならないとき人はどうするのか、というのは非常に興味深い問題です。この映画でペンコフスキーとウィンが深く結びつくのは、二人がその問題を共有しているからなんです」
Photo by Getty Images
クーリエ:最高機密の運び屋
2021年9月23日(木・祝)公開
イギリス・アメリカ/2021/1時間52分
配給:キノフィルムズ
監督:ドミニク・クック
出演:ベネディクト・カンバーバッチ、メラーブ・ニニッゼ、レイチェル・ブロズナハン、ジェシー・バックリー
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