アクション・ヒーローとして認知されつつ名匠とのコラボも実現
そして、その熱狂は『スピード』(1994)の大ヒットによって世界に拡散され、30歳になったキアヌはNEWアクション・ヒーローとして脚光を浴びた。しかし、続編『スピード2』(1997)への出演は断念している。理由は、カナダで上演される舞台『ハムレット』への出演とされている。しかし、うがった見かたをすれば、〈『スピード』のキアヌ=アクション・スター〉というレッテルを早々に貼られる危険性を回避したかったのかもしれない。
そう、『スピード』を携えた1994年の来日では「アクションでスパートをかけたら、次はアーティスティックな作品で息を整える。ボクは〝良い俳優〞になりたい。そのためにはバラエティに富んだ役に挑戦するしかない」と語っていた。
そして、その言葉通り『スピード』の前には巨匠フランシス・フォード・コッポラ監督の『ドラキュラ』(1992)、ケネス・ブラナー監督の『から騒ぎ』(1993)、そしてベルナルド・ベルトルッチ監督の『リトル・ブッダ』(1993)では悟りを開くまでのブッダ=シッダールタ王子をガリガリになるまで減量して好演。
また、『スピード』後も、モダンアーチストのロバート・ロンゴ監督の『JM』(1995)、テイラー・ハックフォード監督のオカルトスリラー『ディアボロス/悪魔の扉』(1997)などに出演。「バラエティに富んだ」キャリアを重ねている。
そして、1999年。久しぶりにアクション・ヒーローとしてフルスロットルをかけたのが『マトリックス』だった。企画当初はレオナルド・ディカプリオやブラッド・ピットなどのスターたちがキャスティング候補だったが、監督のウォシャウスキー兄弟(当時)は初めからネオ役はキアヌと想定して脚本を書いていた。
AIと闘う〝救世主ネオ〞は超人的な能力を持ちながらも、優しさも弱さもある無垢な人間らしさが必須。そして「その資質を備えているのはキアヌしかいない」と、後に監督たちは語っている。もちろん、その期待に応えるキアヌのストイックな仕事ぶりは有名であり、枚挙にいとまがない。半年近くもワイヤーとカンフーの特訓を受け、劇中のアクションをほとんどスタント無しでこなし……。そうした献身の結果が世界中を興奮させ、SFアクション映画の歴史を塗り替えたといっても、過言ではないだろう。
2003年、2作目『リローデット』はアメリカ5月、日本6月に公開され、同じ年の11月には3作目『レボリューションズ』が世界同時公開。当然のごとく大ヒットとなり、次々と記録を塗り替えてシリーズは完結した。
50代になって『ジョン・ウィック』シリーズで再び究極のアクションに挑戦
同時に、20世紀から21世紀を股にかけて旋風を巻き起こしてきたキアヌも、キャリアのスロットルレバーを緩めることになる。
ファンタジー・アクション『コンスタンティン』(2005)、韓国映画をハリウッドがリメイクしたラブストーリー『イルマーレ』(2006)では『スピード』のサンドラ・ブロックと再共演。『地球が静止する日』(2008)など……。正直に言えば、『マトリックス』以後の10年間はあまりにスロットルを緩めすぎて、失速寸前? と心配になるほどだった。
しかし、2014年、『ジョン・ウィック』で再びアクション・ヒーローとして復活! 50歳になるとは信じられないほどの斬新にしてハードなアクションを繰り広げてくれたのだから興奮マックス。まぁ、監督チャド・スタエルスキが『マトリックス』シリーズのスタント・コーディネーターだと知れば、それも納得。
2017年に『ジョン・ウィック:チャプター2』を携えて来日したキアヌによれば、「最初は、雑談でチャドのアイディアを聞いていた。そのうちに、これなら『マトリックス』で生み出したアクションを進化させたものが作れるんじゃないかと意欲が湧いた」とのこと。これが初監督となるスタエルスキだけでは資金集めが困難だったが、キアヌの参加で映画化が実現。さらに、1作目のヒットを受けて作られた『チャプター2』も好評、2019年に第3弾の『パラベラム』も誕生。いまやヒット・シリーズとなって、2022年には『チャプター4』が公開待機中だ。
『スピード』公開直後は〝アクション・スター〞と称されるのは時期尚早と抵抗していたキアヌ。しかし、あれから27年間。つねにアクションを追求し、57歳になったいまも究極のアクションを体現していのだから、〈不滅のアクション・スター〉と称しても文句はないでしょ。
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