『ラ・ラ・ランド』(2016)『グレイテスト・ショーマン』(2017)の音楽チームが贈る注目の感涙ミュージカルが公開!SNSをきっかけに注目の的となった高校生・エヴァンの物語を紹介します。(文・大森さわこ/デジタル編集・スクリーン編集部)

SNSを題材にし社会現象となったミュージカルが遂に映画化!

2016年にブロードウェイで初上演後、アメリカでは社会現象となったブロードウェイ・ミュージカル『ディア・エヴァン・ハンセン』。劇中にSNSを取り入れた斬新な構成が話題を呼び、2017年のトニー賞では作品賞を始め6部門で受賞し、グラミー賞やエミー賞も獲得。そんなミュージカルの待望の映画化作品が遂に上陸する。音楽を『ラ・ラ・ランド』(2016)や『グレイテスト・ショーマン』(2017)のベンジ・パセックとジャスティン・ポールの名コンビが手がけるも話題。

画像: SNSを題材にし社会現象となったミュージカルが遂に映画化!

主人公は孤独な青年、エヴァン・ハンセン。セラピストの課題として「ディア・エヴァン・ハンセン」の書き出しで始まる手紙を自分宛てに書くが、それを変わり者のコナーに奪われる。彼は憧れの女の子、ゾーイの兄。その後、コナーが自殺し、手紙のせいでエヴァンは親友と思われる。エヴァンは彼の両親のために友人だったと嘘をつき、追悼式に出る。

主演は舞台でも主人公を演じてトニー賞受賞のベン・プラットで、伸びのある歌声の持ち主。代表曲「ユー・ウィル・ビー・ファウンド」を追悼式で歌う場面は特に印象的だ。「手を伸ばせばまた立てる。見つけてくれる人がいる。君はひとりじゃない」。そんな歌詞が内気な主人公の心情を代弁。SNS時代に人間同士がつながる意義や自分の居場所について問いかける現代的な内容だ。期待の新人ケイトリン・デヴァーや実力派ジュリアン・ムーア、エイミー・アダムスなど共演陣もいい。

・ストーリー

画像1: 1通の手紙と優しい嘘から生まれたストーリー『ディア・エヴァン・ハンセン』

1.風変わりな同級生のコナーに自分宛てに書いた手紙を奪われる。

画像2: 1通の手紙と優しい嘘から生まれたストーリー『ディア・エヴァン・ハンセン』

2.コナーの死に衝撃を受ける彼の両親に自分は友人だったと嘘をつく。

画像3: 1通の手紙と優しい嘘から生まれたストーリー『ディア・エヴァン・ハンセン』

3.学校のコナーの追悼式で彼の親友としてスピーチをする。

画像4: 1通の手紙と優しい嘘から生まれたストーリー『ディア・エヴァン・ハンセン』

4.コナー基金を始め、故人が好きだった果樹園が再オープンする。

画像5: 1通の手紙と優しい嘘から生まれたストーリー『ディア・エヴァン・ハンセン』

5.生前のコナーの意外な姿が分かり、失意の家族たちが救われる。

・エヴァンってこんな子

画像1: ・エヴァンってこんな子

学校:友達はいないが、魅力的なゾーイに憧れる。

画像2: ・エヴァンってこんな子

家庭:母は留守がちで、孤独な日々を送っている。

インタビュー

エヴァン役/ベン・プラット

“ 干渉されないことは快適だが、誰かに声を聞いてほしい”

画像: エヴァン役/ベン・プラット

ベン・プラット プロフィール

1993年9月24日生まれ、米・カリフォルニア州出身。2017年、ミュージカル「ディア・エヴァン・ハンセン」のパフォーマンスでトニー賞の主演男優賞を受賞。主な出演作には『ピッチ・パーフェクト』シリーズや『幸せをつかむ歌』等。Netflixドラマ『ザ・ポリティシャン』では主演と製作総指揮を務める。

── エヴァンの置かれていた状況を教えてください。

セラピストに書くように言われた自分宛の手紙を誤解されてしまい窮地に陥るんだ。コナーが書いた遺書だとね。それで自殺したコナーの両親がエヴァンを息子の親友だと勘違いする。最初は否定しようとしたエヴァンだったが、コナーの両親が救いを求めてることを知り、嘘をつき彼らの寂しさに寄り添う。その結果エヴァンと彼らの間に絆が生まれ、エヴァン自身も人間的に成長する。以前とは違って、他者とのつながりを大事にしようとするんだ。

── 優しい嘘についての考えを教えてください。

誰かの傷を癒やすためとか、誰かと心を通わすためとか、優しさゆえに偽るわけだよね。そういうウソは複雑で簡単にはつけない。偽る理由は理解できるし、エヴァンも善意からウソをついた。偽ることで人を救えると彼は判断したんだ。このテーマは複雑だからこそ、人の心に響くのだと思う。

── 本作の重要な要素であるソーシャルメディアについてはどう思っていますか?

SNS上での人間関係には良し悪しあるよね。人との絆を感じにくい現代では、疎外感を癒やすためのツールにもなる。でも、危険な面もあるんだ。他者への嫌悪感や批判を簡単に示せる場所だし、投稿の一部分だけが切り取られて大炎上することもある。僕が日頃気をつけているのは、ソーシャルメディアとのバランスだよ。僕はアート作品を展示する場として活用してる。誰かとやり取りする時は、僕をよく知る人間を優先するようにしてるんだ。

── お気に入りの楽曲があれば教えてください。

「ウェイヴィング・スルー・ア・ウィンドウ」は、エヴァンの“心の叫び”だよ。彼が何を求めているかを教えてくれる曲だ。周りにとっては透明人間のような存在だが、内面では葛藤してる。人に干渉されないことは快適でもあるが、一方で、誰かに声を聞いてほしいと強く願ってるんだ。本当は他者に理解されたいとね。そういうエヴァンの葛藤を、パセックとポールがポップな曲で表現してくれた。観客は この曲を通してエヴァンに共感を覚えるはずだ。誰もが他者に認められたいものだとね。

シンシア役/エイミー・アダムス
難役を語る

エイミー・アダムス プロフィール

1999年『わたしが美しくなった100の秘密』で映画デビュー。2013年に『アメリカン・ハッスル』、2014年に『ビッグ・アイズ』でゴールデングローブ賞主演女優賞(ミュージカル・コメディ部門)を受賞。待機作にて、ディズニー映画『魔法にかけられて』の続編『Disenchanted(原題)』では、主役のジゼルを再演し製作総指揮も務める。

シンシアは初登場シーンの時点で深い悲しみに沈んでるわ。私にとって難しい役だったけどすてきな母親だと感じた。彼女は息子の死をただ嘆くのではなく、希望を求めたの。「レクイエム」は興味深い曲だわ。3人の登場人物の葛藤が描かれてる。それぞれがコナーの死に向き合い、どう対処しようとするのかがね。

シンシアのパートはすごく興味深くて、最初は悲しい感じに聞こえる。でも彼女はこう言う。「鎮魂歌は歌わない」。息子に対する怒りの声ではないわ。つまり彼女は信じてるの。息子が自分の思うとおりの子だとね。エヴァンと話して彼女の悲しみは少し和らぐ。“コナーは孤独ではなく前向きに生きていた”彼女はそう信じることで悲しみを乗り越えようとするのよ。

スティーヴン・チョボスキー監督
音楽を語る

画像: スティーヴン・チョボスキー監督 音楽を語る

スティーヴン・チョボスキー監督 プロフィール

自身のデビュー小説の映画化作品『ウォールフラワー』(2012)でインディペンデント・スピリット賞ほか受賞。原作小説は2年以上にわたりニューヨーク・タイムズのベストセラー・リストに並ぶ。実写映画『美女と野獣』(2017)脚本の共同執筆、ミュージカル映画の『RENT/レント』脚本担当。『ワンダー 君は太陽』(2017)で脚本を共同執筆し監督を務めた。

2人の曲作りの現場を見たことはないが、パセックとポールはすばらしいコンビだ。ある日パセックに言った。「君たちは現代のカンダー&エッブだ」とね。近年、名作曲家コンビは生まれてなかったが、パセックとポールこそまさにそうだよ。まだ若いのにたくさんのすばらしい曲を書いてる。私は『ラ・ラ・ランド』(2016)で彼らの曲を初めて聴いた。本当にすばらしい才能だと思うよ。

彼らは元々役者志望で、演技を学ぶために大学に入学した。でも結局は作曲家になったんだ。役者志望だった脚本家や作曲家は結構多い。つまり人間の感情を深く理解してるからこそ名作が書けるわけだ。若い世代の才能豊かな作曲家たちだよ。ブロードウェイの歴史に残る曲をこれからも書き続けるだろう。

Photo by Emma McIntyre/BAFTA LA/Contour by Getty Images, Kevin Winter/Getty Images

『ディア・エヴァン・ハンセン』
公開中

画像7: 1通の手紙と優しい嘘から生まれたストーリー『ディア・エヴァン・ハンセン』

アメリカ/2021/2時間18分/東宝東和
監督:スティーヴン・チョボスキー
出演:ベン・プラット、エイミー・アダムス、ジュリアン・ムーア、ケイトリン・デヴァー
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