漫画家・天野こずえが描いた未来形ヒーリングコミック『ARIA』(ブレイドコミックス/マッグガーデン刊)。
単行本累計465万部、関連書籍累計82万部が発行され、2005年には「ARIA The ANIMATION」としてアニメ化。その後も「The NATURAL」(2006年)、「The OVA
~ARIETTA~」(2007年)、「The ORIGINATION」(2008年)が制作され、美しくて優しい世界が多くのアニメファンを魅了した。
そしてTVアニメの1stシーズンから10年目の2015年には『ARIA The AVVENIRE』、16年目の2021年には『ARIA The CREPUSCOLO』と新作が公開。「蒼のカーテンコール」と銘打たれ再び動き出した奇跡の刻は、ファンの想いという“願いの種”の芽吹きによって、3つの物語を生み出すに至った。
その最終章となるのが、姫屋のメンバーを中心に描かれる完全新作アニメーション『ARIA The BENEDIZIONE』だ。天野こずえ描き下ろしの原作をもとに、前作と同じく総監督・脚本:佐藤順一、監督:名取孝浩、アニメーション制作:J.C. STAFFの布陣で制作。斎藤千和(藍華・S・グランチェスタ役)、皆川純子(晃・E・フェラーリ役)、中原麻衣(あずさ・B・マクラーレン役)らメインキャストも勢揃いした。
斎藤千和「(新作は姫屋の物語と知り)天野先生に“どんな話ですか?”と聞いたら、“描いていないことがいっぱいあるんですよ。楽しみにしていてください”とおっしゃってくださったんです。だから、個人的にすごく楽しみにしていました」
長い冬を迎えたネオ・ヴェネツィア。
寒空の下、合同練習をしていたアイ(CV:水橋かおり)、あずさ(CV:中原麻衣)、アーニャ(CV:茅野愛衣)の3人は、いつもと様子が違う晃(CV:皆川純子)の後をつけたのをきっかけに、水先案内人ミュージアムを訪れることになる。
出迎えた館長の明日香(CV:島本須美)は、姫屋の伝説的なウンディーネとして知られる晃の大先輩。
2人は姫屋の創業時から大切に乗り継がれてきた1艘のゴンドラの継承者でもあるのだが、晃の話によると、次の乗り手として期待される藍華(CV:斎藤千和)にはその気がないという。
納得がいかないあずさは、どうしてなのか理由を探ろうとするが……。
皆川純子「(台本を読んで)物語の良さに感動して、これはエネルギーが必要だなぁと思いましたし、どう表現しようとプレッシャーも感じました。あと、“どうやって泣かないように演じよう……”って(笑)。晃が泣いたら話にならないですから。そこが一番の試練でした(笑)」
斎藤千和「私は、長くやってきた作品なので、藍華はすごく思い入れのあるキャラクターだし、藍華が昇格するのは他の人とは違うプレッシャーが乗っかってくるので、もうちょっとちゃんと描きたかったなっていう気持ちがありました。なので、“昇格試験の話です”って言われた時に、“だよね!”って(笑)。だから読んだ時に、“そうか、こういうことだったのか”と思いました。藍華というキャラクターがあって、その裏にいろんな時間が流れているんだろうなって想像していた部分はあったんですけど、明確に見えたのは初めてだったので、葛藤を乗り越えて今の藍華なんだと思ったら、私は彼女がもっと好きになりました。よくこんなに自信まんまんに生きてきたなって思うところがあったんですけど、ちゃんと乗り越えた上の彼女の言動なんだって」
中原麻衣「あずさは後輩の立場なので、すごいと思っていた人たちも、こういう過去があって、こうなっていくんだなっていう、あずさの目線で私は見てしまいました。姫屋の物語ではあるんですけど、私の中では2人(晃と藍華)の物語で、それを一番いい場所で見せてもらっている感覚。“あぁ、うちの先輩たちがぁ”って、ただただ楽しかったです(笑)」
藍華・S・グランチェスタを演じた斎藤千和は、『ARIA The BENEDIZIONE』は最終章であるが、「終わらないイメージがすごくある」と語る。
斎藤千和「新しい作品がなかったとしても、ずーっと〈ARIA〉の世界は続いている感じがして。だから(アフレコ中は)“これが最後だから”みたいなものは実はなかったです。それは今でもあまりないかもしれないですね」
皆川純子「私もそうです。“締めるぞ!”っていう気合も全然なくて、この作品もずーっと世界が続いている中の一つ。〈最終章〉って銘打ってはいるけど(〈ARIA〉の世界は)終わりではないと思います」
中原麻衣「私はすごく淋しかったです。この作品に関わったのが『ARIA The AVVENIRE』からだったので、みんなと一緒にもっとやりたいという気持ちがあって……。〈ARIA〉って、スタッフさんもキャストの皆さんもずっと長いことやってらっしゃるので、絆がすごいんです。そこに入れてもらって、“よし、これからだ。あ、ちょっと仲間になれてきたかも”ってところで終わりなので、淋しい。でも、2人の話を聴いて、これから先も〈ARIA〉の世界は続いてくんだなって納得しました」
最後に、斎藤、皆川、中原、それぞれに作品の見どころを語ってもらった。
中原麻衣「抽象的な表現になってしまいますが、私は“バサッ”が大好きなシーンで、あそこから子猫を手なずけていく感じがたまらないです(笑)。ぜひキュンキュンしながら観ていただけたらいいなと思います」
皆川純子「待ちわびていた、藍華の昇格試験の詳細がわかります。そこは姫屋らしいやり方で、すごく楽しんでいただけると思います。過去話でもありつつ、藍華が未来への一歩を踏み出す話でもあります。最後はカッコいい藍華にぐっときちゃうと思います」
斎藤千和「今までARIAを観続けている方にとっては、これまでの姫屋の印象とはいい意味でギャップを感じ、より姫屋を好きになると思います。姫屋って、関係性が少しサラッとして見えると思うんです。他のカンパニーにはない空気感だけど、結果、〈ARIA〉に着地するというか。今まで〈ARIA〉のほわっと浸る感じとは違うかもしれないけど、最後にくる感動は一緒みたいな。その違う味だったけど最終的には〈ARIA〉の世界に浸れる感覚を本作でも楽しんでいただけたらと思います。そして、一見した感じの雰囲気ではなく、もっと深いところで繋がっているのが見え、こういう絆もあるんだよっていうのを今回、晃と藍華の2人の関係や、あずさとの関係から、“この人たちの絆はすごく深いんだ”と感じていただけたら嬉しいです」
水の惑星を舞台に紡がれてきた、過去・現在・未来を繋ぐ想いの軌跡。そのフィナーレを、ぜひ劇場で見届けてほしい。
『ARIA The BENEDIZIONE』
配給:松竹
12月3日(金)より全国にて公開中
©2021 天野こずえ/マッグガーデン・ARIAカンパニー