SF・ホラー映画の巨匠といわれるジョン・カーペンター監督。40年以上にわたってシリーズが続く、伝説のホラー映画『ハロウィン』の最新作『ハロウィンKILLS』(21)では、音楽を手掛け、ミュージシャンとしても活躍している。そんなカーペンターの熱狂的ファンであることを公言するのは、J・J・エイブラムス、クエンティン・タランティーノ、ロバート・ロドリゲス、エドガー・ライト、ここ日本では、黒沢清監督、大ヒットゲーム「メタルギア」シリーズのゲームデザイナー・小島秀夫と鬼才のビッグネーム揃いで、彼らは皆、自身の作品でカーペンターへのオマージュを捧げている。
今回開催される特集上映「ジョン・カーペンター レトロスペクティブ2022」では『ニューヨーク1997』『ザ・フォッグ』『ゼイリブ』の3作品を上映。先日解禁になったレトロスペクティブ2022オリジナルの予告編では、「素晴らしい予告に気を失った。」、「この予告を観て興味持った方は劇場へ観に行ってほしい。」とテンション爆上がりの感想が多く見受けられた。
このたび上映される3作品のみならず、『遊星からの物体X』(82)、『クリスティーン』(83)など数々の名作を生み出した巨匠ジョン・カーペンターが、多くの映画ファンに愛される名匠の一人となった背景には、カーペンターを支えたスタッフやキャストが存在する。今回は一緒に作品を生み出してきた“カーペンター組”と呼ばれる同志たちを紹介したい。
1968年、南カリフォルニア大学映画芸術学部に入学したカーペンターは、のちに『エイリアン』(79)の原案・脚本、ゾンビ・スプラッターの傑作『バタリアン』(85)の監督や『トータル・リコール』(90)の原案を手がけたダン・オバノンと出会い、短編映画を共同で製作する。この作品は1974年にカーペンターとオバノンの手によって『ダーク・スター』(74)としてリメイクされ、2人にとって長編映画デビュー作となった。カーペンターはダン・オバノンについて、「彼は素晴らしい監督だ。」(『ジョン・カーペンターの要塞警察』DVD特典より)と称賛コメントをおくっている。
世界が震撼した歴史に残るホラー映画『ハロウィン』(78)が低予算でありながらも大ヒットを記録。成功の鍵を握るのは撮影監督ディーン・カンディ。当時は固定カメラが主流だったが、観客の視点であるかのようにカメラを自由に動かしたいというカーペンターの思いから手持ちカメラを駆使した撮影を行う。また、殺人鬼マイケル・マイヤーズの暗闇からの登場の仕方を相談されたディーン・カンディは光の量を調整しマイヤーズの顔に照明を当てるという画期的な手法を編み出した。以降もカーペンターとタッグを組み『ニューヨーク1997』(81)、『遊星からの物体X』(82)の撮影監督を歴任。さらには、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズ3部作全ての撮影監督を担当し、『アポロ13』(95)、『ホリデイ』(06)といった超大作をも手がけるようになる。
同じくジェイミー・リー・カーティスも『ハロウィン』で長編映画デビューを果たすと、狂気的な叫び声から“スクリームクイーン”と呼ばれ『ザ・フォッグ』(80)や『トゥルーライズ』(94)、『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』(19)などの話題作に出演。さらには、『007は二度死ぬ』(67)で悪の組織スペクターの首領を演じたドナルド・プレザンスもこの『ハロウィン』でカーペンター作品に初出演してから『パラダイム』(87)まで多くのカーペンター作品に出演した。
『ターミネーター』シリーズ、『タイタニック』(97)、『アバター』(09)の監督ジェームズ・キャメロンもカーペンター組の一員だった。特殊効果スタッフとして『ニューヨーク1997』に参加した若き日のキャメロンはミニチュアで「ニューヨーク」の荒廃した街並みを再現。趣向を凝らしたSFXはジェームズ・キャメロンの才能をあらわにしている。
まだ何者でもなかった若者たちはカーペンターのもとに必然的に集結した。そこから彼らの物語は始まるー。躍進を遂げた“カーペンター組”が活躍する、『ニューヨーク1997』をはじめとするSF映画の金字塔をスクリーンで体感してみよう。
ジョン・カーペンター レトロスペクティブ2022
2022年1月7日(金)、ヒューマントラストシネマ有楽町/新宿武蔵野館/UPLINK吉祥寺にて 3週間限定公開
『ニューヨーク1997』 © 1981 STUDIOCANAL SAS - All Rights Reserved.
『ザ・フォッグ』 © 1979 STUDIOCANAL All Rights Reserved.
『ゼイリブ』 © 1988 STUDIOCANAL S.A.S. All Rights Reserved.