ーー最強の軍人と理数系のスペシャリストのトリオがタッグを組んで復讐するというストーリーは一見シリアスですが、それだけじゃないのが監督の作品のユニークなところで、今回もおかしなシーンに笑わされました。本作を撮ろうと思ったきっかけをお聞かせいただけますか。
「40代になった時に、多くの男性が経験するミッドライフ・クライシス(中年期の心の葛藤や不安定な心理状態)になったんです。これまでを振り返ってみて“人生とはなんなんだろう”とか“自分を幸せにするものはなんなんだろう”とものすごく悩んでしまって。そういうことを考えていたら、ふと自分は何か人との繋がりを感じた時に幸せだと思えることに気付いたんです。
それで、以前から鬱やPTSD、喪失を経験している男性を描きたいと思っていたこともあって、じゃあ人との繋がりをテーマにそういった男性を描くのはどうか、と考え始めて。そこからオットーという数学者が、自分の人生をかけて人との繋がりの意味を見いだそうとする物語を書いていきました」
ーーマッツ・ミケルセンさんとは本作が5度目のタッグになりますが、今回マークス役にオファーされたのは何故でしょうか?
「僕の監督作品に登場する彼の役柄は、非現実的でかなりぶっ飛んだキャラクターが多いじゃないですか(笑)。だけど今回は、リアルにいそうなキャラクターをマッツに演じて欲しかったんです。理由は他にもあって、マークスは身体能力が高くないと演じるのが難しいのと、役の性格上、抑えた表情で様々な感情を観客に伝えなければいけないんです。そう考えるとマークスを演じられるのはマッツしかいないんですよね。それでオファーしました」
ーーキャラクター作りに関して、マッツさんからアイデアのようなものはありましたか?
「僕らはどこか欠陥のあるような、それでいてちょっとおもしろい人間に興味があって、普段からよくそういった話をするんです。例えば、自分自身に嘘をついて生きている人、自分のことを客観的に見れない人、怒りを溜め込んでいる人など。僕はいつも映画のストーリーを思いつくとマッツに話すのですが、その段階で『こういうキャラクターをこのストーリーに入れたらおもしろいんじゃない?』とか『このキャラクターだったらどんな物語を発展させたらいいと思う?』なんて意見交換するんですね。今回もかなり初期の段階から製作プロセスの一部に関わってくれていたので、具体的に彼のアイデアはこれですと一言で言うのが難しくて。ただ、ルックスに関してはいつも彼のアイデアがおもしろいので採用しています」
ーーどんな風にアイデアを出されるのでしょうか?
「変わったルックスの人の写真を見せながら『これをやってみたいんだけど』って(笑)。“ちょっとやりすぎじゃないかな?”と思ったりもするのですが、不思議と毎回ちゃんと成立させてしまうのが彼のすごいところです」