ウェス・アンダーソン監督の最新作『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』がいよいよ公開されます! 今回は、ウェス・アンダーソン監督ご本人へ映画を撮ることになったきっかけや作品のストーリーについてお話を伺いました。
画像: カンヌ映画祭にて

カンヌ映画祭にて

ウェス・アンダーソン監督 プロフィール

1969年5月1日生まれ、米・テキサス州ヒューストン出身。テキサス大学オースティン校で俳優のオーウェン・ウィルソンと出会い、映画の共同制作を始める。その唯一無二のユニークな才能で、世界で最も人気を博しているフィルムメーカーの1人とされている。

英題の誤訳のワナにひっかかって、フランス映画を観ることになるのです

── テキサス州ヒューストンで育った少年が、どのようにしてフランス文化に愛情を抱き、本作のようなこだわりの映画を撮るに至ったのですか?

「出身はテキサスですが、いつもフランスに滞在し、住みたいと思っていました。いつしか、ついに、そこにアパルトマンを借りましたが、住みはしませんでした。家族はよくフランスに行っています。長い間、フランスは私にとって大きな存在でした。その頃から『フランスから学んだことを活かして映画を撮りたい』という思いが日に日に増していきました。というのは、そもそもフランスに行きだした理由のひとつに、大のフランス映画好きということがありました。映画でフランスに傾倒したとも言えます。

フランソワ・トリュフォーの『大人は判ってくれない』(1959)をヒューストンのビデオ店で発見したのはたぶん16歳のときだったと思います。ご存じのとおり、この手の話は世界中のどこでも起こります。ですが、今思い返してみても『大人は判ってくれない』のいったいどこにひっかかったのだろうと不思議に思います。ポイントはタイトルだったと思います。今でも、原題の『Lesquatre cents coups』のフランス語での意味を完全には理解できていません。英題は原題の意味をまったく捉えていませんでした。これはフランス流の表現で、何かきな臭い、騒ぎが起こる予感がするという意味です。『今夜、“ les quatrecents coups” を挙行する』と言えば、『ひとあばれする』という意味です。英語の直訳の『400発』ではまったくの見当違いになります。ですが、私はその誤訳のワナにひっかかって、そのVHSビデオを選び、そこからフランス映画を観ることになるのです」

── 各ストーリーは、最初からこの映画用に書き下ろされたのでしょうか?

「ベニチオ・デル・トロのローゼンターラーの話ですが、実は、モーゼス・ローゼンターラーというキャラクターが生まれた別の脚本を以前に書いたことがあったのです。この映画の話とは全く違う内容ですが、少しそこから要素を入れました。その企画は実現しませんでしたから、本作にちゃっかり活かしました。他のストーリーは全部書き下ろしですが、ローゼンターラーの話だけは、自分で自分を盗作したという感じですね」

── 本作はカンヌ国際映画祭での初公開でした。

「映画の初公開は、なんといっても、カンヌで行いたいといつも思っていましたから。ところが、今の世界の情勢の影響で、その願いは叶わなくなりました。2020年、映画祭の中止が決まると、この映画の先行きが見えなくなりました。もう1年以上待って次のカンヌに出品する、という選択肢は当初ありませんでした。その時点でクランクアップから半年が過ぎていて、いつまでもお蔵入りさせていられなかったのです。最終的には、待つことに決めてよかったと思います。ホコリをかぶった旧作を出品するとまでにはなりませんから。今は、映画がより良い時期を待っていたのだと感じています」

Photos by Getty Images

フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊
2022年1月28日(金)公開

アメリカ/2021/1時間48分/ウォルト・ディズニー・ジャパン 
監督:ウェス・アンダーソン
©2021 20th Century Studios. All rights reserved.

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