カバー画像:『ウエスト・サイド・ストーリー』のアリアナ・デボース © 2022 20th Century Studios. All Rights Reserved.
トリビア6:『ドライブ・マイ・カー』が日本初の作品賞受賞?
日本のファンにとって最も注目すべきなのはやはり4部門で候補になった濱口竜介監督の『ドライブ・マイ・カー』の受賞のゆくえだろう。作品賞、脚色賞に日本映画が選ばれたのは史上初の快挙。
監督賞では勅使河原宏、黒澤明に次いで3人目。いずれの部門でも受賞すればもちろん史上初。また国際長編映画賞(旧・外国語映画賞)で受賞すれば『おくりびと』(2008)以来となる。2年前に韓国映画『パラサイト 半地下の家族』が作品・監督・脚本・国際長編映画賞を受賞した先例からみても、決して4部門制覇も非現実的ではないといえる。どこまで健闘するか期待したい。
トリビア7:『FLEE/フリー』という映画の初快挙
デンマークのヨナス・ポエール・ラスムセンが監督した『FLEE/フリー』という映画が異色の記録を作っている。アヌシー国際アニメーション映画祭でグランプリに輝いたこの作品は長編アニメーション部門で候補に挙がると同時に、国際長編映画賞、そして長編ドキュメンタリー映画賞にもノミネートされるという初の快挙を成し遂げた。
本作はアフガニスタンからデンマークへ移民としてやってきた男性が長年隠してきた秘密を明かさなくてはならなくなるという実話を基に、アニメとアーカイブ映像をミックスさせて描く新たなタイプのドキュメンタリーだという。日本公開は6月。
トリビア8:聾者の男優が初めて演技部門で候補に
聾者の両親と兄を持つ少女がその歌の才能を開花させる姿を描き今回作品賞候補にもなった『コーダ あいのうた』で、父親を演じたトロイ・コッツァーが助演男優賞候補に挙がったが、彼自身も聾者で、男優として聾者が演技賞部門にノミネートされるのはこれが初。
女優ではこの作品で母親を演じたマーリー・マトリンが『愛は静けさの中に』(1986)で主演女優賞候補になり、受賞も果たしている。この時彼女は21歳で、史上最年少の主演女優賞受賞者でもある。今回コッツァーが全米俳優協会賞で助演男優賞を受賞したことから、オスカーでも記録を作るかもしれないと評価急上昇中だ。
トリビア9:『ロスト・ドーター』の2女優が同じ人物を演じて候補に
一つの映画で二人の人物が同じキャラクターを演じて、同時にオスカー候補になった例は希少で、今回『ロスト・ドーター』でオリヴィア・コールマン(主演女優賞)とジェシー・バックリー(助演女優賞)が同じ人物の現在と若き日を演じて同時に候補となった。
これまでは『タイタニック』(1997)のケイト・ウィンスレット(主演女優賞)とグロリア・スチュワート(助演女優賞)の時と、『アイリス』(2001)のジュディ・デンチ(主演女優賞)とケイト・ウィンスレット(助演女優賞)の2回のみという。ウィンスレットが絡まないのは今回が初めて。
トリビア10:オリジナル映画とリメイク映画が共に作品賞候補に
『ウエスト・サイド・ストーリー』は同じ舞台を映画化した1961年の『ウェスト・サイド物語』が作品賞他11部門で受賞という記録を作ったが、作品賞受賞作をリメイクした方も再び作品賞候補になるのは2度目。
最初は1936年の受賞作『戦艦バウンティ号の叛乱』で、リメイクの『戦艦バウンティ』(1962)も候補に(ちなみに1936年作品も1916年、1933年作品に次ぐ三度目の映画化)。『ウエスト・サイド…』では今回アリアナ・デボースがアニータ役で助演女優賞候補に挙がっており、前作ではこの役でリタ・モレノ(リメイク版にも出演)が助演女優賞を受賞。アリアナが受賞すれば同じ役をオリジナルとリメイクで演じた女優が共に受賞したことになる。
トリビア11:リン=マニュエル・ミランダEGOT達成か?
今回『ミラベルと魔法だらけの家』の“DosOruguitas”でオリジナル歌曲賞にノミネートされているのがリン=マニュエル・ミランダ。彼が今回オスカーを受賞すればEGOT達成となる。
EGOTとはエミー賞、グラミー賞、オスカー、トニー賞の4大アワードの頭文字を指す言葉で、過去にはオードリー・ヘプバーン、リタ・モレノら偉大なエンターテイナーが受賞している。ライバルとしてビリー・アイリッシュの“No Timeto Die”などが並んでいるが、絶対の優位ではないものの、可能性は少なくない?