『シェイプ・オブ・ウォーター』(2017)で第90回アカデミー賞監督賞を受賞したギレルモ・デル・トロ監督。怪しくも美しい世界を創り上げた待望の新作『ナイトメア・アリー』では、魅惑の世界へ招待します!(文・よしひろまさみち/デジタル編集・スクリーン編集部)

▶︎▶︎『ナイトメア・アリー』第94回アカデミー賞にて4部門ノミネート!! 詳しくはこちら

『ナイトメア・アリー』で“トロたん”のこだわり炸裂!

『シェイプ・オブ・ウォーター』でアカデミー賞4冠の栄誉に輝いたギレルモ・デル・トロ。通称トロたん(勝手に通称)。オスカーを手にしたら、まず気になるのは次回作というもの。そこで明らかになったのは『ナイトメア・アリー』だった。

ウィリアム・リンゼイ・グレシャムの小説「ナイトメア・アリー 悪夢小路」の映画化。え? それって、1947年の『悪魔の往く町』では……? と思った映画ファンの皆様、そのとおりです。一方、第二次世界大戦後まもなくの作品だけに、ご存じない方もご安心。まったく新たなトロたん解釈の傑作に仕上がっておりましてよ。

名声がほしくてたまらないけど、うだつの上がらぬ人生を送っていた青年スタンが、たまたま立ち寄ったカーニバルに雇われ、そこで手にした読心術の技と、持ち前の人当たりの良さ、そして誰もが魅了されるルックスを駆使して成り上がっていくのだが……というノワールサスペンス。アメリカン・スウィートハートというよりも世界の恋人ともいえる問答無用のイケメン、ブラッドリー・クーパーが主人公スタンを演じていることが本作のキモ。

画像: 『ナイトメア・アリー』で“トロたん”のこだわり炸裂!

じつは1947年版の主人公も、当時のスーパーイケメン俳優タイロン・パワーが演じ、野心たっぷりのイケメンが乱高下人生の末に破滅的な結末を迎えるということが受けた作品だから。その辺、トロたんに聞いたところ「タイロン・パワーの影響は受けてないんだけど、絶対的なイケメンじゃないとスタンのジェットコースターみたいな人生が描けないんだよ。その点、ブラッドリーは完璧。どんな人でも彼の瞳には魅了されるし、説得力あるでしょ?」とな。ごもっともでございます。

トロたんらしい味付けがなされたのは、スタンを取り巻く3人のファム・ファタール。スタンが働くことになった獣人ショーが目玉のカーニバルで一番の美女モリー、そのカーニバルで独自の地位を手にしている読心術師のジーナ、それに物語後半戦の鍵を握る心理学博士のリリス。三者三様で全く異なるキャラクターながら、スタンが持ち合わせている隠れた性格を表現するために必要な3人。おまけにそれぞれがどことなく現代的な女性像で、今この作品をリメイクする理由がちゃんと出てくるという仕掛け。

ちなみにこの3人を演じたルーニー・マーラ、トニ・コレット、ケイト・ブランシェットについては、そもそも脚本段階から彼女らをイメージしていたあて書きとあって、役のハマり方がドンズバ。詳しいことはネタバレになるので申し上げられませぬが、この3人それぞれ、スタンに対して啓示を下す瞬間が最大の見せ場(もっというと、パンデミックによる撮影中断時、トロたんは彼女らのエピソードをさらに際立つよう加筆修正していたそうな)。鑑賞後にそれを思い出すと「う~わっ……こわ!」となるので、目を凝らしてよく観ておきましょう。

画像: メイキング

メイキング

スタンとリリスの対決は見ものだ。ケイトとブラッドリーがお互いに引けを取らない天才的な“操る者”として共演する姿は、まるで巨人同士の戦いのようだった!

── ギレルモ・デル・トロ

This article is a sponsored article by
''.