イントロダクション
1990年代アメリカの音楽業界を震撼させたのが、ヒップホップ界の大スター、〝2PAC〞と〝ノトーリアス・B.I.G.(ビギー)〞の連続射殺事件。対立しあう2大勢力が生んだ報復合戦による悲劇と噂されたが、現在まで犯人は特定されていない。この事件の巨大な闇に挑んだ元刑事と記者の真実を暴く闘いを描くノン・フィクションを基にしたクライム・サスペンス。
元刑事ラッセル・プールに扮するのは『MINAMATA―ミナマタ―』(2021)のジョニー・デップ。プールは暗殺事件だけでなく、全米史上最も規模が大きいとされる警官汚職事件の発覚にも絡んでいた。記者ジャック・ジャクソンを演じるのはオスカー男優フォレスト・ウィテカー。ジャクソンはピーボディ賞を受賞するほど有能だったが、過去に書いた自身の記事の誤りに苦悩する(という設定の架空の人物)。監督は『リンカーン弁護士』(2011)のブラッド・ファーマンが担当。
チェックポイント
ラッセル・プールはランドール・サリヴァンのノンフィクション『LAbyrinth』が映画化されると知ると、忘れられかけていた自分の追い求めていた事件が再度注目されると喜んでいた。ところがブラッド・ファーマン監督と会う予定の一週間前(2015年8月)に58歳で早逝。その後、彼の妻や子供たちの強力でなんとか企画続行し完成をみたという。プールの急死は映画のラストにも影響を与えていると製作者は語っている。
ストーリー・あらすじ
ことの発端は、90年代ヒップホップ界の2大スター、〝2PAC〞と〝ノトーリアス・B.I.G.〞の暗殺事件だった。ロサンゼルス市警察の元刑事ラッセル・プール(デップ)は、この事件から18年後の今もなお犯人が見つからず、真相を孤独に追い続けていた。
そんな彼のもとに現れたのは、事件当時「東西抗争」という題でノトーリアス・B.I.G.を批判する記事を書いた記者のジャック・ジャクソン(ウィテカー)。彼もまた独自に事件を追い、なぜプールが事件に固執しているのかを究明しようとしていた。何度も接近してくるジャクソンにプールは重い口を少しずつ開き始める。
それは、ノトーリアス暗殺の数日後、非番の黒人警官が白人の麻薬潜入捜査官によって射殺された事件をプールが担当したことから始まった。この事件の真相に迫るプールは知ってはならないロス市警の闇に踏み込んでしまう……
キーパーソン&キーワード
ラッセル・プール(ジョニー・デップ)
元ロサンゼルス警察の刑事、ロス警察内の巨大権力の闇を暴こうとしたため、地位や名誉、家族もすべて失いながら、18年後も一人きりで正義を追い求める。
ジャック・ジャクソン(フォレスト・ウィテカー)
ピーボディ賞を受賞した野心的な記者だが、自ら書いた過去の記事に悔恨をにじませ、真実を探るうちにプールに興味を持ち接近していくようになる。(※架空の人物)
ノトーリアス・B.I.G.
本名クリストファー・ウォレス。東海岸のバッド・ボーイ・レコード所属のラッパー。通称ビギー。2パックと友人だったが、後に険悪な仲に。1997年3月9日に銃撃を受け死亡。
2PAC
本名トゥパック・アマル・シャクール。西海岸のデス・ロウ・レコードに所属した人気ラッパー。1996年9月13日、25歳の若さで射殺されこの世を去ったが犯人は今も不明。
バッド・ボーイ・レコード
1993年に音楽プロデューサー、ショーン・コムズらが設立した米東海岸を拠点とするヒップホップ・レコード・レーベル。ビギ―らが所属し、“デス・ロウ”と対立していた。
デス・ロウ・レコード
1991年にシュグ・ナイト、ドクター・ドレーらが設立した米西海岸を拠点とするヒップホップ・レコード・レーベル。2パック、スヌープ・ドッグ(現オーナー)らが所属した。