“ワン”と鳴けない真っ白で大きな保護犬・ハウと、婚約者にあっさりフラれ傷心の青年・民夫。運命的に引き合わされた1匹と1人が、共に暮らしていく中で互いにかけがえのない大事な存在になっていくが……。民夫を演じた田中圭が、ハウ役の天才犬(!)・ベックとの優しい撮影の日々を振り返る。そこには芝居を超えた本物の絆、何度も心が通じ合った尊い瞬間があふれていた──。(文・遠藤薫/デジタル編集・スクリーン編集部)

“ワンちゃんはいつも一番身近にいる存在です”

画像: “ワンちゃんはいつも一番身近にいる存在です”

赤西民夫(田中圭)
ハウを愛するちょっぴり気弱な青年。婚約者にあっさりフラれ、人生最悪な時を迎えていたがハウに出会い、幸せな日々を送っていたが…

ハウ
飼い主に捨てられ保護犬になった真っ白な大型犬。ワンと鳴けず「ハウッ」というかすれた声しか出せない。この犬を、民夫は“ハウ”と名付け1人と1匹の幸せな日々が始まったが…

田中圭 プロフィール

1984年7月10日生まれ。東京都出身。2018年の主演ドラマ「おっさんずラブ」で大ブレイク。主な出演作に、『スマホを落としただけなのに』(2018)、『劇場版 おっさんずラブ 〜LOVE or DEAD〜』(2019)、『mellow』(2020)、『ヒノマルソウル~舞台裏の英雄たち~』『総理の夫』『そして、バトンは渡された』『あなたの番です 劇場版』(2021)、『女子高生に殺されたい』( 2022)などがある。Huluオリジナルドラマ「死神さん2」が9月17日より配信開始。舞台「夏の砂の上に」に11月より出演。

── 撮影前に一度(ハウ役の)ベックとお会いしたそうですが、初対面時の印象は?

既におりこうさんな雰囲気がすごく出ていました。でも今回スタッフさんたちが僕以外になつかないようにと気をきかせてくれて、『みんなは(あえて)構わないようにしているんです』とおっしゃっていて……。プレッシャーを感じました(笑)

── もともと犬はお好きだったのでしょうか?

はい。生まれた時から実家にワンちゃんがいた生活ですし、学生時代も飼っていたので、ワンちゃんはいつも一番身近にいる存在です。だから今回のお話をいただいた時は嬉しかったです。本当になぜか理由は分からないのですが、僕は基本ワンちゃんに好かれるんです。だからベックともうまくやっていけるような気が最初からしていました。

ただ今まで飼っていたのは全部小型犬だったので、初めてベックに会った時は一瞬ビビってしまいました(笑)。やっぱり小型犬とはちょっと勝手が違うというか、扱い方をどうしたらいいのか分からないところがあって。でもそれも含めて今回は楽しんでいけたらなと思っていましたし、僕自身ワンちゃんとの撮影には慣れていなくて未知の領域だったぶん、その初々しさみたいなものも最初のうちは(民夫として)出せたらなと思いました。

── 演じられた民夫というキャラクターについては、どのように感じられていますか?

特に最初の方は、至って普通で地味な役という感じでしょうか。そんな民夫がハウと出会って変わっていく姿が、映画としてのある種のメリハリでありキモでもあると思っていました。

最初の民夫の登場シーン(*婚約者の真里菜にいきなりフラれるシーン)を初日に撮った時、犬童(一心)監督から『こんな風に登場してほしい』というイメージをお聞きして、それ自体はすぐ理解できたんです。でも真里菜とはかなり古い付き合いだったはずなので、それをどう自然に演じたらいいだろう?というのをちょっと悩んでしまって。

自分の中で完璧なゴールを作り過ぎてしまっていたんですが、監督がひとつのゴールを示してくれたことで、そこに向かって民夫の気持ちを作っていくには、お芝居なのですがお芝居じゃない(自然な)要素を増やしていけば、こういうシーンがより成立しやすいのかなと思えました。

── 犬童監督とは初タッグでしたが、監督とのお仕事はいかがでしたか。

すごく丁寧な演出をされる監督さんだなという印象が、まずありますね。カット割りの構成だったり、明確に僕ら役者にも“見える”演出をされるので僕としては付いていきやすかったです。ベックにも妥協せず演出をされていましたが、ベックは本当に頭がよくてとってもがんばってくれたので、『ベック、すごいな!』と毎日思っていました。

── ベックとのお芝居はやはり大変な部分もありましたか。

そうですね。例えばベックと話しているシーンでも、微妙に目が合ってないなと思う時もありましたし、やっぱりハウの感情とベックの感情は違いますから。対峙していても厳密に言えばハウの心はそこにないし、何ならすごくベックが戸惑っているなと感じることもありました。『そりゃそうだよねぇ』と思ったし、ハウと民夫の心のやり取りは僕がひとりで作らないといけない時もあったので、そこは当たり前に難しいなと思いました。

── ただ現場では田中さんとベックはとても仲が良く、通じ合っているように見えました。

通じ合ったなと思う瞬間は、もちろんありました! やっぱり遊んでいる時が一番多かったです(笑)。ベックはまだまだ元気な子犬(*撮影時は1歳になったばかり)なので、遊んでいる時に慕ってくれているというか、頼りにしてくれているなというのはすごく感じられて嬉しかったですし、そういう瞬間はたまらなかったです。こういう時間を積み重ねていけば、それこそハウと民夫のような関係性になれるのかなと思いました。分かりやすく、また犬を飼いたいなぁと思いましたね。

── ベックとのシーンで最も印象に残っているシーンを教えて下さい。

河原でベックが向こうから走ってきて、僕が受け止めるシーンですね。ここは撮影も後半だったので、ベックも僕のことをちゃんと認識してくれていて、朝の挨拶から『わ~っ!』とテンション高く来てくれて。ドッグトレーナーの宮忠臣さんも、『このテンションのままでやろう!』と言ってくれて、僕も1発目ならど真ん中に飛びこんできてくれるんじゃないかと思ったんです。そしたら本当に来てくれてすごく嬉しかったです! もちろん毎カット来てくれるわけではなく、素通りされちゃうこともあってその時はちゃんと傷つきましたけど(笑)。楽しい撮影でした。

── 本作を通してハウはどんな存在に映りましたか?

きっとワンちゃんだけでなく動物と暮らしている方にとっては、共感できるところがたくさんあるだろうなと思います。ハウは本当に健気で純粋で、愛がある存在。出会う人出会う人が、ハウとの想いが生まれてそれが繋がっていくというお話なので、もし動物と暮らしたことがない方でも素直に『素敵だな』と思ってもらえるだろうし、今現在暮らしている方は自分の家の子と何かしらリンクするんじゃないでしょうか。

実際動物と暮らしている方って、“ペット”という感覚ではなく、“一緒に暮らしている”という感覚の方も多いと思うんです。相棒なのかパートナーなのか……言い方は分からないですが、動物は自分を救ってくれる存在になり得ると思います。ハウと民夫も互いがかけがえのない存在だったというあたたかいお話なので、是非たくさんの方の心に届いてほしいです。

ハウ
2022年8月19日(金)公開

日本/2022/1時間58分/東映
監督:犬童一心
脚本:斉藤ひろ
出演:田中圭、池田エライザ、野間口徹、渡辺真起子
©2022「ハウ」製作委員会

日本アカデミー賞受賞コンビ、犬童一心監督と斉藤ひろしが初タッグ。 “観るものすべての背中を、そっと押してくれる物語”が始動した。

婚約者にあっさりフラれ、人生最悪な時を迎えていた市役所職員・赤西民夫(田中圭)。横浜で一人空虚な日々を送る彼は、上司からの勧めで、飼い主に捨てられて保護犬になってしまった真っ白な大型犬を飼うことになってしまう。犬はワンと鳴けず「ハウッ」というかすれた声しか出せない。とびっきり人懐っこいこの犬を、民夫は“ハウ”と名付け、いつしかかけがえのない存在となっていった。ハウと民夫の最高に幸せな時間はずっと続くと思っていたのだが……。

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