カバー画像:『新しき世界』 (2013)©2012 NEXT ENTERTAINMENT WORLD Inc. & SANAI PICTURES Co. Ltd. All Rights Reserved.
イ・ジョンジェ プロフィール
1972年12月15日、大韓民国・ソウル生まれ。1994年に『若い男』で映画デビューをして間もなく、韓国で最も権威のある青龍映画賞を史上最年少で受賞。2021 年に主演のNetflixドラマ「イカゲーム」が大ヒットし、韓国だけでなくアジアを牽引する俳優に。待機中の作品にはスター・ウォーズの前日譚シリーズ「The Acolyte(原題)」がある。
イ・ジョンジェの軌跡
演じるキャラクターに多層的な深みを与える名優イ・ジョンジェ。キャリア30年目となる今年、「イカゲーム」でエミー賞のテレビ部門主演男優賞受賞という快挙を成し遂げた。そんなイ・ジョンジェのこれまでの軌跡を振り返ってみよう。
1972年12月15日、ソウル生まれのイ・ジョンジェ。子供の頃から自閉症の兄の世話をして過ごし、責任感から物心がつくのも早かったという。カフェで働いていたところ有名デザイナーの目に留まり、モデルとして芸能界入り。ドラマ「恐竜先生」(1993)で俳優デビューし、映画『若い男』(1994)では大鐘賞で新人賞を受賞。最高視聴率64.5%を記録したドラマ「砂時計」(1995)での、ヒロインを静かに愛し守り抜くボディガード役で一躍ブレイクし、若手スターとしての地位を不動のものにしていく。
韓国男性の義務である兵役を終えた後は、活動の場を映画に移していく。婚約者の姉と禁断の恋に落ちる『情事』(1998)で体当たりの演技を見せ、借金を背負うチンピラを演じた『太陽はない』(1999)では青龍映画賞で主演男優賞を受賞。
後にキアヌ・リーヴス主演でリメイクされた『イルマーレ』(2000)や、イ・ヨンエと夫婦を演じた『ラスト・プレゼント』(2001)など恋愛映画で印象を残し、『タイフーン』(2005)では海軍の捜査官を演じるなど、演技の幅を見せた。
30代前半にかけて主演を中心としたキャリアを積むが、イ・ジョンジェ自身は今後どのような俳優になるべきか悩み、スランプに陥っていたと韓国のインタビューで語っている。35歳の時、「エア・シティ」(2007)で8年ぶりにドラマ復帰し、その後「トリプル」(2009)にも出演するが、視聴率は振るわず。再び活動の場を映画に移すも、『ハウスメイド』(2010)を最後にしばらく俳優業から遠ざかり、不動産開発やレストラン経営に力を入れ始める。
約2年ぶりの映画出演となったのが『10人の泥棒たち』(2012)。アンサンブルキャストの一人として泥棒のリーダーを軽妙に演じると、続く『新しき世界』(2013)でチェ・ミンシク、ファン・ジョンミンと演技合戦を繰り広げ、『観相師 ―かんそうし―』(2013)ではソン・ガンホ演じる主人公をいたぶる暴君役を怪演。韓国を代表する名優陣との共演は大きな糧になったようだ。
その後も、裏の顔を持つ警務隊長を演じた『暗殺』(2015)、復讐に燃える殺し屋役の『ただ悪より救いたまえ』(2020)など、深みのある演技で、名優としての地位を確立していく。政界をリアルに描いた「補佐官」(2019)で、10年ぶりにドラマに復帰。さらに自身にとっては珍しい、情けない普通の市民を演じた「イカゲーム」(2021)が、Netflixを通じて国内外で大ヒット。しばらく離れていたドラマの世界で、世界的な評価を得ることとなった。演技の成熟と挑み続ける姿勢が、相乗効果となり栄誉をもたらしたといえる。
挑戦は続き、最新作『HUNT(原題)』(2022)では、監督としてデビュー。『太陽はない』(1999)で共演したチョン・ウソンと、23年ぶりにW主演を務めている。チョン・ウソンは芸能マネジメント会社を共同経営するほどの盟友だ。さらに「スター・ウォーズ」シリーズの新ドラマ「The Acolyte(原題)」では主演を務めることが決定している。今年12月には50代に突入するイ・ジョンジェ。さらなる全盛期が訪れそうだ。