最新インタビューを通して編集部が特に注目する一人に光をあてる“今月の顔”。今回は『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』で前作に続き国王の妹にして天才科学者シュリを演じるレティーシャ・ライト。ブラックパンサーを演じた“兄”チャドウィック・ボーズマンの死から2年、今回の続編にどのような思いで挑んだのでしょうか。
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“天国のチャドウィックが「前進しなければだめだ」と言っているに違いないという思いは、私たち全員が持っていた”

2020年8月、まだ43歳だった名優チャドウィック・ボーズマンの早すぎる死は、全世界に衝撃を与えた。それから2年、主人公を失うという異例の事態の中で『ブラックパンサー』の続編『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』が完成を迎えた。

描かれるのは、偉大なるヒーローにしてワカンダの王、ブラックパンサー/ティ・チャラのいなくなった世界。王の意思や願いを、残された者たちはどう引き継ぐのか。

本作でもっとも重要な役割を担うことになった一人がレティーシャ・ライト。前作に続き、ティ・チャラの妹でワカンダの王女であるシュリを演じる。明るく活発で、兄を深く慕っていた彼女は、その死を誰よりも重く受け止めることになる。

実生活でもチャドウィックと兄妹のような関係を築いてきたレティーシャ。追悼の言葉の中で彼女はこう綴っている。「私たちにできるのは、あなた(チャドウィック)が蒔いた種を成長させ、より美しい花を咲かせること」── 。いま続編を完成させた彼女の思いとは。

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レティーシャ・ライト プロフィール

1993年10月31日、ガイアナ・ジョージタウン生まれ。幼少期にイギリスに移住し、2015年の映画『Urban Hymn(原題)』の主演に抜擢され脚光を浴びる。『ブラックパンサー』(2018)のシュリ役で世界的な人気を博した。近年はプロデューサー業にも進出。その他の出演に『レディ・プレイヤー1』(2018)、『SING/シング:ネクストステージ』(2021)、『ナイル殺人事件』(2022)など。

── チャドウィック・ボーズマンがいない状態で『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』に進むのはどのような気持ちでしたか? あなたと母親ラモンダ役のアンジェラ・バセットは、どのように話し合いましたか?

彼なしでこの作品のことを想像するのは難しいことだった。ライアン(・クーグラー監督)から電話をもらい、チャドウィックは私たちに続けてほしいと思っているはずだというライアンの強い気持ちを聞かされた。

私もどんな形でもいいから続けたいと思った。たとえどんな役でも構わないから、とにかく続けたいと。だって『ブラックパンサー』はレガシーで、高潔な作品として世界に示されているのだから。きっと天国でチャドウィックが“人々にインスピレーションを与え続けるんだ。前進しなければだめだ”と言っているに違いないという思いは、私たち全員が持っていた。

ライアンから電話がきたとき、最初は辛かったけれど、彼がゆっくりと穏やかに意図を説明してくれた。この映画でどのようにしてチャドに敬意を払うのか、ファミリーとして私たちが作り上げたものにどうやって敬意を払うのかを。

リハーサル室でアンジェラに会ったとき、色々あっただけに、私はただ彼女に抱きついて泣いた。言葉では何も言わなかった。彼女はそれだけで理解してくれたし、私たちだけの思いとして留めようという暗黙の了解を結んだ。

アンジェラは1作目のときからずっと私の人生に素晴らしい貢献をしてくれている。彼女はいつもアドバイスをくれる。いつだってとても面倒見が良くて、本当のお母さんみたいに私に愛を注いでくれる。私も彼女のことが大好き。だから、この映画では、彼女がレティーシャとしての私を愛する気持ちの延長線上に、キャラクターのシュリを愛する気持ちがあると言うこともできる。

── あなたの演じるシュリは前作『ブラックパンサー』からどのように変化していますか?

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©Marvel Studios 2022

私が出演した映画(『スモール・アックス』)の監督、スティーヴ・マックイーンはこう言っていた。“人生が芸術を真似ることもあれば、芸術が人生を真似ることもある”と。

一作目のシュリはとても大胆な選択をしていた。あの時の彼女には、ミスしてもいいから、とにかく凄いことだけをやろうとする余裕があった。兄も家族もいたから限界がまったくなかった。そんな彼女が、喪失と変化という経験を通して、変わろうとしている。

今回の脚本を読んだとき、あの言葉が浮かんだ。“芸術が人生を真似ることもある”と。シュリは予期していなかった死別の悲しみを味わわなければならない。それは本当に突然のもの。そこに光を見いだすことはできない。シュリは「さあ今日は何かを作ろうかな」という気持ちにはなれない。だって誰のために作ればいいの?

そこには日々を生き続ける気持ちになれる何かを求めて苦悩する女性の姿が描かれている。この映画ではそういうとても興味深いことが示されているし、ライアンは見事にそれを書き上げたと思う。私は“これって私が今まさに感じていることと同じだ”と思いながら脚本を読んでいた。

── この映画で語られる数々のテーマは観客の心に響くと思いますか?

ええ、どのテーマもパワフル。単に悲しんでいるだけでない、母娘の関係も描かれている。悲しみの最前線にいる2人の女性が、ワカンダのために力を合わせて知恵を出し合う。彼女たちはお互いを励まし合いながら前に進むすべを見いだそうとしている。

家族、守ること、愛、思いやり、そのすべてがひとつになったテーマをこの映画に見ることができる。それを掘り下げたことは、とても素晴らしいことだったと思う。なぜなら、私たちの多くがそういうことを実際に感じているから。特にここ数年に起こったことで。多くの人たちが亡くなってしまったし、多くの人たちが大変な時期を過ごしてきた。

だから私たちはこの映画を通して、私たちもみなさんと同じように感じているんだと伝えたい。気持ちで通じ合っているということ、共感できるということを。そして、できることなら、みなさんも自分の気持ちを表現できるような、そんな道しるべになれたら嬉しい。

ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー
公開中

監督: ライアン・クーグラー
出演: レティーシャ・ライト、ダナイ・グリラ、アンジェラ・バセット、マーティン・フリーマン、ルピタ・ニョンゴ、ウィンストン・デューク
配給: ウォルト・ディズニー・ジャパン

ヒーロー映画としては初となるアカデミー賞作品賞を含む7部門にノミネートされるなど社会現象を巻き起こした『ブラックパンサー』の4年ぶりの続編。一作目で主演を務めたチャドウィック・ボーズマンが2020年に亡くなり、国王ティ・チャラ/ブラックパンサーを失ったワカンダが物語の舞台に。誰もが道標にしてきた偉大な王を失ったとき、残された者たちはどのように“希望”を見つけ出すのか? ティ・チャラの妹シュリ役レティーシャ・ライトら主要キャストとライアン・クーグラー監督が続投。

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