Netflix『ギレルモ・デル・トロのピノッキオ』
ギレルモ・デル・トロ監督作
19世紀末に書かれた原作、そして長年愛されてきたディズニーアニメの基本部分を守りつつ、多数のアレンジが新たな傑作を誕生させた。木工職人のゼペットがなぜ木の人形を作ったのか。本作はそこを発端に、ゼペットとピノッキオの擬似父子関係をエモーショナルに追っていく。
原作が生まれたイタリアを舞台に、世界大戦を背景にしたことで、感動パートは大人向けになった印象。ムッソリーニの台頭とピノッキオの運命が重なってダークな描写もあるし、かわいいキャラがブラックな笑いを任されたりと、ファンタジーが別次元へ向かうのが、いかにもギレルモ・デル・トロ監督らしい。
ストップモーションの手法は、木の人形の表現にうってつけで、動き始める時のぎこちなさ、嘘をつくと鼻が伸びるおなじみの動作の“手作り感”が愛おしく、要所には最先端テクノロジーも加味され、ハイレベルに洗練された映像を目撃できる。ミュージカル部分の耳に残る楽曲、限りある生命の大切さというメッセージで、余韻もことのほか深い。
(文・斉藤博昭)
代表作:『シェイプ・オブ・ウォーター』(2017)『ナイトメア・アリー』)(2021)
Netflix映画『ギレルモ・デル・トロのピノッキオ』
独占配信中
監督:ギレルモ・デル・トロ、マーク・グスタフソン
声の出演:グレゴリー・マン、ユアン・マクレガー、デヴィッド・ブラッドリー
Netflix『バルド、偽りの記録と一握りの真実』
アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督作
『レヴェナント:蘇えりし者』などで2度のアカデミー監督賞を受賞した鬼才アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥが、長編デビュー作『アモーレス・ペロス』(2000)以来、約20年ぶりに母国メキシコで撮影を行なったヒューマンドラマ。ドキュメンタリーの製作者として世界的に名を成した映画監督が、妻や子どもたちを連れて久しぶりに祖国に帰郷。そこで彼は、思いもよらぬトラブルに直面することになる……。
“理解するのではなく、感じて欲しい”とイニャリトゥは語るが、それも頷けるほどのシュールな映像が連続。殺伐とした砂漠、電車内の浸水、軍隊による侵攻、めくるめくダンスパーティ、市街地での人々の昏倒、死体の山などのイメージが積み重なり、時に不可思議に、時にユーモラスにビジュアルを築き上げる。メキシコ史を踏まえ、自伝的な要素を込めつつ、祖国を離れた者の喪失感をはじめとする複雑な思いを映像に投影した、鬼才の野心が伝わってくる意欲作!
(文・相馬学)
代表作:『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』(2014)『レヴェナント:蘇えりし者』(2015)
Netflix映画『バルド、偽りの記録と一握りの真実』
独占配信中
監督:アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ
出演:ダニエル・ヒメネス・カチョ、グリセルダ・シシリアニ、ヒメナ・ラマドリッド
Netflix『ホワイト・ノイズ』
ノア・バームバック監督監督作
数々の映画賞を賑わせた『マリッジ・ストーリー』のノア・バームバック監督が、初めてオリジナル脚本ではなく、小説の映画化に挑戦。クローネンバーグ監督の『コズモポリス』(2012)の原作者ドン・デリーロの同名小説を原作に、膨大で多様な情報に翻弄される現代人の危うさを独特のユーモアを交えて描く。
妻と共に4人の子供を育てる大学教授ジャック(アダム・ドライヴァー)の自宅近くで事故が発生。遠くに見える黒煙でしかなかったものがTVニュースで悪性物質と報じられ、一家揃って自動車で避難することに。そんな中、彼は妻(グレタ・ガーウィグ)が奇妙な薬を飲んでいることを発見し、自分のごく身近で驚愕の事態が起きていたことに気づく。
バームバック監督&ドライヴァー主演のタッグは本作で5作目。主人公の妻役で、監督の私生活のパートナー、『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』(2019)『レディ・バード』(2017)の監督のガーウィグが出演。
(文・平沢薫)
代表作:『ヤング・アダルト・ニューヨーク』(2014)『マリッジ・ストーリー』(2019)など
Netflix映画『ホワイト・ノイズ』
2022年12月30日(金)より独占配信
監督:ノア・バームバック
出演:アダム・ドライヴァー、グレタ・ガーウィグ、ドン・チードル