編集を一切挟まない全編ワンショットで、高級レストランのサスペンスフルな人間模様を描き出す『ボイリング・ポイント/沸騰』のBlu-ray & DVDがいよいよリリース! ワンショットのリアルさ、先の読めないスリル、そして次々と巻き起こるトラブル・・・。1度味わえばやみつきな本作の美味しさをご紹介します!(文・斉藤博昭/デジタル編集・スクリーン編集部)

“そこで起こっている”正真正銘のワンカット!

画像: “そこで起こっている”正真正銘のワンカット!

〝お仕事の現場〞をリアルに観せてくれる映画は数多い。しかしここまで臨場感たっぷりに伝えた作品は珍しいのではないか⁉ 舞台はロンドンの人気レストラン。クリスマス直前、最も賑わう金曜の夜を描いた本作は、観ているこちらもレストランの従業員、あるいは客の一人になったのかと錯覚させてくれる。90分間、映像が一度も途切れないワンカットで進んでいくからだ。開店前のミーティングから、予約客が次々と来店し、キッチンやバーが大忙しとなるまでを、カメラが自由に店内を動き回って収めていく。

そしてこれはドキュメンタリーではなく、フィクションの作品。レストランのあちこちで次々と起こるドラマは、すべて脚本どおりで、俳優の演技も、撮影も、秒単位で綿密に計算されている。あるシーンでは、カメラがフロア係を追いかけ、続いて客の会話へと繋げられる。

またあるシーンではカメラがキッチンから店の裏を通り、屋外に出たりもする。それらがすべてワンカット。最終リハーサルを含めた4回の撮影が行われ、そのうちの1回が完成作として採用された。隠し技で映像を編集したわけではない、正真正銘のワンカット作品。あたかも〝そこで起こっている〞かのような展開に、一瞬も目が離せなくなる!

リアルな共感&ヒリヒリ感まさに“いま観るべき作品”

監督はこれが長編2本目となるイギリスの新鋭、フィリップ・バランティーニ。じつは彼、約15年間もレストラン業界で働いた経験があり、シェフやウェイターとしての知識も豊富。そんな経験や知識が、レストランの日常や多様な客の言動として、本作にリアルに反映された。

しかもバランティーニ監督は一度、同じタイトルで約20分の短編をワンカットで撮っており、今回は満を持しての長編ワンカットのチャレンジとなった。その短編で主人公のシェフを演じたスティーヴン・グレアムが、長編でもレストランのオーナーシェフ、アンディ役として主演。英国の〝隠れ実力派〞として知られる彼が、トラブルだらけのレストランの中心で奔走。完璧なハマリ役である。

スタッフや客を演じるキャストも、1,000人ものオーディションで選ばれただけあって、驚くほどレストランの雰囲気に溶け込み、英国俳優の層の厚さを実感できるのだ。

なぜ本作が、ジェットコースターのような勢いとスピード感で引き込むのか。その最大の理由は、細かいエピソードの数々に思わず共感してしまうから。主人公アンディが抱える苦悩はもちろん、スタッフそれぞれの性格や仕事のスタイルによって起こるトラブル、さらに客たちの無理難題が次々と繋がっていく。一人一人のキャラクターが共感を誘ったり、心をヒリヒリさせたりするのだが、そこに人種差別やジェンダー、ハラスメントなど社会問題がさりげなく盛り込まれているので、どんな仕事でも直面する葛藤が重なり、まさに〝いま観るべき作品〞だと実感してしまう。

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