特急列車内で起こったウイルスによるゾンビパニックをドラマチックに描き、韓国製ホラーの新しい地平を切り開いたばかりか、世界中で話題を呼び大ヒットを飛ばした『新感染 ファイナル・エクスプレス』。監督のヨン・サンホは、その熱狂的なブームにより、一躍、世界注視のクリエイターとなり、同作は続編『新感染半島 ファイナル・ステージ』も作られた。そんな彼が新たに原作と脚本を務めた『呪呪呪/死者をあやつるもの』が、いよいよ日本公開される。

始まりは、3か月前に亡くなった者による殺人という、奇妙としか言いようがない怪事件。その陰には、にわかには信じがたい呪術の存在が隠されていた。物語は、この事件を追うジャーナリストたちの奔走を軸にして展開。やがて彼らが直面する、衝撃の真実とは!? 呪いやゾンビ現象を盛り込んだドラマはスリリングで目が離せないうえに、社会性もしっかり盛り込まれたドラマは歯応え十分。そんな本作について脚本/原作を担当したヨン・サンホに話を訊いた。(取材・文:相馬学)

作品に必ず盛り込もうとしているのは、「現代を生きる我々の姿の投影」

――死者が呪いによって甦るのはブードゥー教的でもありますが、本作の発想のもとになったことについて教えてください。

死者を蘇らせる伝説は、ブードゥー教にかぎらずどこの国にもあります。調べてみると、韓国にも“ジェチャウィ”という、生ける屍の伝説が語り継がれていました。それらの要素を投影していきました。また、1980年代に香港で作られた『霊幻道士』をはじめとする、“キョンシー”モノにも影響を受けていると思います。私自身、子どもの頃に見て大いに楽しみましたが、あの映画にはホラーだけではなく、さまざまな要素が詰まっています。『呪呪呪/死者をあやつるもの』も怖いだけはありません。ドラマやミステリーといった要素を入れ込みました。

画像1: 作品に必ず盛り込もうとしているのは、「現代を生きる我々の姿の投影」

――今回は監督をされていませんが、どのような事情からですか?

そもそもこの映画はTVシリーズ「謗法~運命を変える方法~」から生まれました。当初、このドラマで監督を打診されていたのですが、他の作品も控えていたので、原作と脚本で参加させてもらうことになったのです。このドラマで演出を務めたキム・ヨンワン監督は、独自のビジョンを持っていて面白いと思いましたし、映画の方も彼にやってもらうことは理にかなっていいました。何より、キム監督はシリーズの世界観を理解されていますからね。

――――内面に“悪鬼”という邪悪な魔物を抱えたソジンというキャラクターは面白いですね。悪鬼は誰の心にもある悪意の象徴にも見えますが、そこに込めた意図は?

ソジンも元々は「謗法~運命を変える方法~」に登場していたキャラクターです。彼女は生まれたときから、体内に悪い鬼を持っており、それに苦しめられてきました。その悪鬼はソジンの体から出ては別の肉体に入り、悪事をさせては、またソジンの体に戻ってくる。そのエピソードが「謗法~」の中では描かれています。そして彼女は自分の体から追い出せないことを知り、自分の体の中に封印することを決意するんです。『呪呪呪~』を見て、彼女に興味を持たれたら、ぜひ「謗法~」も見てみて欲しいですね。

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このドラマでは悪鬼がSNSに散りばめられた人々の嫌悪の感情を利用し、悪意をばらまくというエピソードがあります。『呪呪呪~』ではインドネシアから韓国にやってきた労働者に対する差別が描かれていますが、この映画における悪鬼は、そのような悪意の象徴とも言えるでしょう。悲しいことに、韓国人の中には、そのような意識が実際に蔓延しています。

――いつもクオリティの高いホラーを作っていらっしゃいますが、そもそもどんな作品から影響を受けたのですか?

まず、子どもの頃に見たTVシリーズ「新トワイライト・ゾーン」ですね。オムニバス形式でSFもあればホラーもある、多ジャンルの一話完結ドラマでしたが、言葉では表現できない、さまざまな感情が沸き起こったのを覚えています。その後は日本のアニメーションです。大友克洋や、今敏の作品にインスパイアされました。自分のキャリアの始まりがアニメ制作だったことにも、その影響があると思います。

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――『新感染 ファイナル・エクスプレス』のヒット以降、アジアではホラー映画のブームが続いていますが、ブームに流されないための創作上のポリシーを教えてください。

私が扱う題材は、一般の観客向けではないと考えています。ゾンビや超常現象など、ありえないことを描いていますから、マイナーな作品と言えるでしょう。そのマイナーなものを、どうやって一般の観客に近づけていくかをつねに考えています。映画をつくるときに、必ず盛り込もうとしているのは“現代を生きる我々の姿をきちんと投影しているか?”ということです。現代人の心情や思考をきっちり描けていれば、そこで起きていることがどれほど超自然的であっても、観客の共感を得ることができる。私は、そういう作品を作るべきだと思っています。

画像: 【インタビュー】『新感染』ヨン・サンホが、新作ホラー『呪呪呪/死者をあやつるもの』を語る

PROFILE
『呪呪呪/死者をあやつるもの』脚本/原作 
ヨン・サンホ

1978年生まれ。アニメや実写映画、ドラマシリーズ、ウェブコミックなど様々な分野で、監督、プロデューサー、編集者、声優、脚本家として多方面で活躍中。

『呪呪呪/死者をあやつるもの』
2023年2月10日(金)新宿バルト9他にて公開
©2021 CJ ENM, CLIMAX STUDIO ALL RIGHTS RESERVED

画像: 『呪呪呪/死者をあやつるもの』予告編 23年2月10日(金)公開 www.youtube.com

『呪呪呪/死者をあやつるもの』予告編 23年2月10日(金)公開

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