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(ゾーイ・カザン インタビュー)
“ この道を進み続ければ、変化をもたらすことが可能になると願っているわ ”
── ジョディ・カンターを演じる可能性を初めて聞いた時、どう感じましたか。
ジョディ・カンターとミーガン・トゥーイーの本を読んでいなかったので、まずそれを買いに行ったわ。そして記事から既に知っていたことを追体験するかのように、本を読み進めていったけれど、ふたりが細部まで気を配りながら記事を作り上げたことが分かった。どんな詮索にも耐えうる非常に緻密につくり込まれた記事だった。本当に感動したわ! でも特に心を動かされたのは、彼女たちのパートナー関係だった。それを伝える作品に参加することに強い使命感を感じたわ。
── ミーガン・トゥーイー役を演じたキャリー・マリガンとは素晴らしい相性でしたね。
お互いが20代のころにブロードウェイ作品「かもめ」で出会い、楽屋が一緒だったことでとても仲良くなった。本作の制作時には、その親密さを活かしてお互いを支え、劇中で演じる人物の関係性を作っていったわ。
── 報道を前提で取材を受けることは、なぜそこまで困難なことなのだと思いますか?
自分は正しいことをやったはずだとただ思いを巡らすのはとても簡単なことだけれど、実際に報道を前提で取材を受ける決断をして、初めて語る人になるのはとても難しいことよ。また、ハーヴェイ・ワインスタインは非常に大きな権力をもっており、周囲にはハリウッド全体が支えていた脅しの体制があった。そのような体制に支えられる怪物に向かって立ち上がるのは難しいわ。また、ほとんどの女性がある程度のセクシャルハラスメントを受ける、不適切な扱いを受けたことがあると思う。
私たちは男性優位の社会に暮らしているから、女性は若い頃から、(セクシャルなことで)触られたり言われたりしたことなど、自分に向けられた不適切な行為は、何らかの形で自分のせいであるという暗黙のメッセージを受け取っており、それがその状況から抜け出すことを難しくさせている。私はフェミニストであり強い母親に育てられたけれど、それでも私に起こったことは自分のせいで、私を不適切に扱った男子や男性のせいではないというメッセージを受け取っていた。だから、最終的に報道を前提で取材を受けた女性たちだけでなく、報道を前提で話せなかった、あるいは話さないことを選んだ女性たちにも、深い尊敬の念を抱いているわ。
── 5年前もそして今も、なぜこの物語が重要な意味を帯びていると思いますか?
この記事が報道された結果、さらに同時期に発表されたほかの記事の結果、何が起こったか、私たちは皆知っている。そして世界は少し変わったと思う。映画業界でも小さなことが積み重なり、大きな変化になっている。例えば撮影現場にインティマシーコーディネーターがいることは、最初は異質に感じられた。セットにいるようになって、なぜ今までいなかったのだろうと不思議に思った。スタントコーディネーターなしに、パンチするシーンを撮らないのと同じ。報道を前提に証言したかに関わらず、自分に起こったことを話した女性たちの勇敢さについての映画なの。そして変化しつつある体制についても描いている。人々のたゆまぬ努力、そして変えられるという信念によって、変化が起こり始めたという物語はこれからも続いていく。
そして今それが必要だと思う。5年前も必要だったし、5年後も必要なこと。自分の取った行動から予想もしない影響が長く続くこと、そして特に勇敢な行動は長い間尾を引いて影響を与え続けるということ。本作を観る女性には、自分が描かれていると感じて欲しいし、何かが起こったときに声を上げることは支援されることで、変化をもたらせることだと感じて欲しい。まだそこには辿り着けていないけれど、この道を進み続ければ、変化をもたらすことが可能になると願っているわ。
『SHE SAID/シー・セッド その名を暴け』
公開中
後に#MeeToo運動へと繋がったハーヴェイ・ワインスタインの性的暴行事件をスクープした記者たちによる、回顧録を基に映画化した社会派ドラマ。ニューヨーク・タイムズ紙で働くミーガンとジョディはワインスタインが長期にわたり性的暴行を重ねていたと情報を得る。悪質な妨害行為にあいながらも2人は真実を求めて奔走する。
監督: マリア・シュラーダー
出演: キャリー・マリガン、ゾーイ・カザン、パトリシア・クラークソン、アンドレ・ブラウアー、ジェニファー・イーリー
配給: 東宝東和
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