第79回ベネチア国際映画祭にて《監督賞》《新人俳優賞》をW受賞! 『君の名前で僕を呼んで』(2017)のルカ・グァダニーノ監督とティモシー・シャラメが再びタッグを組んだ話題作『ボーンズ アンド オール』が、いよいよ2023年2月17日(金)に公開。本作の見どころについて、ティモシー・シャラメのインタビューとあわせてお届けします。(文・松坂克己/デジタル編集・スクリーン編集部)

【ティモシー・シャラメインタビュー】
“ “孤立”というものが、物語の中に描かれているのはとても説得力があると思ったんだ”

画像: 写真:ZUMA Press/アフロ
写真:ZUMA Press/アフロ

── 本作のストーリーについてはいかがですか。

これは、ラブストーリーなんだ。少女マレンの成長を描く青春物語だけど、それと同時に恋に落ちるということ、初恋を描いた物語でもある。ルカ(・グァダニーノ監督)とデイブ(デヴィッド・カイガニック)と一緒に脚本を作っていたのはちょうどコロナ禍のピークだった。

これは誰もが共感できることだと思うんだけど、当時世界中の人々が、自分が“孤立”している状況を経験していた。普段のように社会的コミュニティに頼ることが困難な状況での現実は、“世界がどうなっているかを自分で自分自身に言い聞かせる物語”でしかなかった。とても興味深いし、現実がそうなるにいたった“孤立”というものが、物語の中に描かれているのはとても説得力があると思ったんだ。

── リーというキャラクターについて教えてください。

リーというキャラクターにぼくが惹かれたのは、彼が繊細なガラスの城のようなものを自分の周りに造っているからで、それは彼の髪の毛の染め方や衣服の選び方などに表現されている。つまり人を喰べたい欲求に駆られてても、自分が生き残る為の手順をどうしたら得られるのかわかっている、この世界を理解したと信じていることが表れているんだ。

そんな彼の最大の弱点は、孤独な時間を長く過ごした多くの人がそうであるように真実の愛で、それは本物の愛、つまり思いやりや優しさなんだ。そしてその思いやりや優しさを彼はマレンの中に見出した。それはリーにそれまで経験したことのなかった多くの彩りを彼自身の宇宙に解き放ってくれるような経験になった。彼自身にとって最も辛い瞬間でもあった。誰かと恋に落ちて、その相手を通して自分の弱点を改めて思い知らされるという残酷な経験でもあるからね。

── ルカ・グァダニーノ監督との再タッグはいかがでしたか。

大げさかもしれないけど、ルカはまさに「真の芸術家」だよ。彼の監督ぶりは、彼が若い頃から経験して来た、僕らとはかなりかけ離れた文化的な生い立ちから来る感性を反映したものだ。そして彼は自身のそんな視点を大事にしていると同時に、とても熱意がある。監督との間に生まれた友情や仕事での関係は、自分にとって本作に携わったことによる最大の恩恵だよ。

── 本作はストリーテリングの仕方がユニークですね。

ルカの気まぐれにしたがって、ストーリーはあらゆる方向にジグザグに進んでいく。そんな予想できない物語をみんなに体験してもらうのが楽しみで仕方ないよ。

── テイラー・ラッセルとの共演についてはいかがでしたか。

画像: 【ティモシー・シャラメインタビュー】 “ “孤立”というものが、物語の中に描かれているのはとても説得力があると思ったんだ”

彼女との仕事は素晴らしかった。映画『WAVES/ウェイブス』などで何年も前から彼女には注目していた。並はずれた力量を持つ俳優だと思う。忍耐強く、何でも受け容れる柔軟性があり、新しいことに挑戦することを厭わない。作品を観てもらえば、この映画が必要とするエネルギーを、彼女が十二分にもたらしてくれているのが分かると思う。彼女はまるでスポンジのように何でも吸収していくんだ。彼女と共演するのはとにかく楽しかったし、またぜひ共演したいと思っているよ。

── この物語のメタファー(暗喩)について教えて下さい。

「人喰い」は、ぼくにとって、幼児期のトラウマ、何かの中毒依存、あるいはその人が長年抱えていて、なおかつ振り払えないこと自体にも辱しさを感じている、自分の人生の「魔」の部分のメタファーなんだ。自分が人間しか食べられないのであれば、そのことに対して常に罪の意識を持つのは極めて当たり前のことだからね。物語としては効果的に訴えられる設定だと思う。人生には、人が負わなくても良い筈の重荷があるけれど、愛という安全をもたらす空間の中で、それを乗り越えることも出来るということも伝えていると思う。

ルカ・グァダニーノ監督よりコメント

画像: ルカ・グァダニーノ監督よりコメント

「社会の片隅で生きる人々や権利を剥奪された人々に、私はえも言われぬ魅力を感じ、心打たれる。私のつくる映画はすべて、社会ののけ者を描いているけれど、『ボーンズ アンド オール』の登場人物にも共感を覚えた。この映画の中心には、登場人物のやさしさや愛情深さがある。彼らの感情はどう移り変わり、彼らに何が起こるのかについて、私は興味を持っていた。つまりそれは、彼らにとっての不可能のなかにある可能は何かという問いだ。私が思うにこの映画は「自分とは誰か?」「自分のなかで制御できない感情をどう乗り越えるのか?」について考えるときの瞑想のようなものを描こうとしている」

【ポイント】脇を固める実力派たち

グァダニーノは過去に組んだことのある実力派たちを今回も起用した。マレンの父親役にはCMで組んだことのあるアンドレ・ホランド(『ムーンライト』)、母親役にTV「僕らのままで/WE ARE WHO WEARE」のクロエ・セヴィニー、そしてその母親の元へ導く女性には『サスペリア』のジェシカ・ハーパーだ。さらには『君の名前で僕を呼んで』のマイケル・スタールバーグも人喰いの一人として顔を見せている。

ボーンズ アンド オール
2023年2月17日(金)公開

アメリカ/2022/2時間11分/ワーナー・ブラザース映画
監督:ルカ・グァダニーノ
出演:テイラー・ラッセル、ティモシー・シャラメ、マーク・ライランス
© 2022 Metro-Goldwyn-Mayer Pictures Inc. All rights reserved.

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