ジョージ・ミラー監督最新作『アラビアンナイト 三千年の願い』が、2023年2月23日(木・祝)よりTOHOシネマズ日比谷他にて全国公開。本作の見どころについて、ジョージ・ミラー監督のインタビューとあわせてご紹介します。(文・相馬学/デジタル編集・スクリーン編集部)

ストーリー・あらすじ

アリシアとジンの出会い

画像: アリシアとジンの出会い

物語論の研究家アリシアは、講演のために訪れたイスタンブールの土産物店で、アンティークのガラスの小瓶を購入。ところが、その蓋がはずれ、中から魔人(ジン)が姿を現わす。

ジンが物語る、悲しき愛の記憶

画像: ジンが物語る、悲しき愛の記憶

3000年近く生きているジンは、解放者の“ 3つの願い”をかなえることで自由になれるが、これまで3度失敗しては封印されてきた。そんな彼の身の上話をアリシアは聞くことに。

現実か妄想か・・・愛のゆくえは!?

画像: 現実か妄想か・・・愛のゆくえは!?

魔人の奇想天外な話を聞くうちに、アリシアはジンに心惹かれるようになっていた。彼女が口にした最初の願い事は“私を愛して”。この愛は現実か、それとも彼女の妄想か!?

つくりは全く異なるも『怒りのデス・ロード』に通ずる物語展開

画像: つくりは全く異なるも『怒りのデス・ロード』に通ずる物語展開

ミラー監督の前作『マッドマックス 怒りのデス・ロード』とは、まったく異なるつくり。屋内の撮影がメインで、セリフが少なかった前作に対して今回は多め。また、前作は2夜3日の話だったが、本作は3000年の時を経ている。とはいえ、ダイナミックなストーリー展開という点では共通していると言えよう。紀元前から中世、近世、そして現代へと発展するジンの回想の物語は、まさしく波乱万丈。監督の物語の掘り下げに今回も唸らされる。

『アラビアンナイト 三千年の願い』監督・脚本・製作
ジョージ・ミラー インタビュー

“ 物語は、糊のようなものだと思う。我々人間を結び付けてくれる、そんな存在だ ”

画像: ジョージ・ミラー

ジョージ・ミラー

ジョージ・ミラー

1945年3月3日生まれ、オーストラリア、クィーンズランド出身。学生時代に短編映画を製作。医師としての病院勤務を経て、1979年に『マッドマックス』で長編映画デビュー。代表作に『マッドマックス』シリーズ、『ロレンツォのオイル/命の詩』(1992)、『ベイブ/都会へ行く』(1998)、アカデミー賞長編アニメ映画賞を受賞した『ハッピー フィート』(2006)など。待機作に『マッドマックス』第4作のスピンオフとなる『フュリオサ(原題)』(2024)がある。

── この映画では “物語る” ことの意味が重要なテーマになっています。監督もストーリーテラーですが、これは製作の動機になったのですか?

それは確かにあるね。また、人は誰でも人生について考えたり、対応を迫られたりすることがあるけれど、そのすべてのことが、原作の中に入っていた。惹かれた理由は、それだ。たとえば、“愛とは何か?” “愛をどう定義づけるべきか?” ということはもちろん、不死の者と、命に限りある者との違いを通して、限りある命についても考えさせられたね。

一方で、理性で生きているキャラクターと、感情や欲求に素直に生きているキャラクターの違いも面白い。そのような、人生に現われる多彩なことが詰め込まれていた。そこに“なぜ私たちは物語を語るのか?”というテーマが結びついたんだ。

── 劇中のティルダ・スウィントンのセリフに、“神話はいずれ科学に取って代わられる。神々や魔物はメタファーと化す”という主張があります。これについ共感を覚えますか?

まったくその通りだと思う。神話にしても寓話にしても、それは我々人間を進化させるうえで必要なものだった。その“進化”とは科学の発展だ。物語は、糊のようなものだと思う。我々人間を結び付けてくれる、そんな存在だ。面白いのは、その糊、つまり物語が時代とともに変容していくことだね。その時代に必要なものが盛り込まれていくんだよ。

── 物語が時代とともに変化することについて、もう少し説明していただけますか?

もちろんタイムレスと呼ばれる物語もあるけれど、多くは口承の過程で、時代によって変わっていく。中世で魔女呼ばわりされた人間の物語も、時が経てば科学的な理由が付け加えられ、精神的な問題があったのでは?……というような要素が含まれるようになるんだ。

人は自分の世界観に則って物語を話す。たとえば、私は若い頃に医師の仕事をしていたが、「頭の中で誰かが話をしている」という患者がいた。彼が言うには「入れ歯に発信機が詰め込まれていて、そこからソ連のスパイが司令を下している」と。これも彼が語る立派なストーリーだし、そこには当時ヒットしていた『007』シリーズの影響もある。時代が違えば、彼はまた違うストーリーを語っていたかもしれないね。

── ティルダ・スウィントンとイドリス・エルバのかけあいは見応えがありますが、作り手の目から見て彼らの演技はどうでしたか?

画像: “ 物語は、糊のようなものだと思う。我々人間を結び付けてくれる、そんな存在だ ”

震えるような瞬間が何度もあったよ。2台のカメラを使い、それぞれを撮っていたが、とにかく共演中の彼らの反応を収めておきたかった。ふたりは私のスウィートスポットを何度となく突いてきた。音楽に例えると、聴いていて、ここぞというときに、ある音が鳴った瞬間のゾクゾクするような感じ。彼らは本当に素晴らしかったよ。

──『マッドマックス 怒りのデス・ロード』のスピンオフで、同作のヒロインの半生をたどる次回作『フュリオサ(原題)』について教えてください。

『フュリオサ』は『~怒りのデス・ロード』の前日談だ。物語は、主人公フュリオサの子ども時代から始まる。そこから15年分の、彼女が戦士になっていく過程 を描いたサーガだ。アクションよりもドラマの比重が大きくなるだろう。撮影は昨年の12月に終了し、現在は編集の段階だが、この作業には1年ほど費やすことになる。『~怒りのデス・ロード』のときにはなかった新技術も取り入れているので、同作とは異なるフレッシュな映画になると思うよ。

アラビアンナイト 三千年の願い
劇場公開中

オーストラリア=アメリカ/2022/1時間48分/キノフィルムズ
監督:ジョージ・ミラー
出演:イドリス・エルバ、ティルダ・スウィントン

© 2022 KENNEDY MILLER MITCHELL TTYOL PTY LTD.

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