2009年に公開された第1作目の『エスター』は、ジャウマ・コレット=セラ監督、アレックス・メイス原案、デヴィッド・レスリー・ジョンソン=マクゴールドリックが脚本を担当。この作品は、瞬く間にカルト的な人気を博し、ホラー作品の中でもファンの多い作品となった。
日本でも大反響を呼び起こした映画の前日談を製作するにあたり、監督を任されたのがウィリアム・ブレント・ベルだった。2006年にホラー映画『DEATH GAME デスゲーム』で監督デビューを果たした彼は、その後『デビル・インサイド』や『ザ・ボーイ 人形少年の館』など話題作を手掛け、ホラーファンの間で絶大な支持を得ている。前作の大ファンだったと語る彼が描く新たな恐怖の物語とは。その制作秘話を明かす。
“トリシアとエスターの関係は、ハンニバルとクラリスを思わせるところがあった”
ー監督を引き受けたとき、オリジナルの人気の高さにプレッシャーを感じましたか?
「そうですね、プレッシャーもありましたし、特にこの映画はファンを意識して作っているので、一生懸命になりました。この映画を発表したとたんに、殺害予告を受けたんです。ファンのために作る映画なんだから、ちゃんと気を配らないといけないと思いました。しかし できることなら、オリジナルに倣うだけでなく、新しいファン層のための映画であってほしいと思います」
ーエスターのオリジナルには、どのようにアプローチしたのですか?
「私にとって、キャラクターと共感すること、日常生活で人が怖がることに共感することが一番怖いことなのです。観客がエスターに共感し、より深く理解できるような作品にしたいと思います。観客がもっと怖がったり、楽しんだりできるように。その方がスリリングだと思うのです」
ーエスターとハンニバル・レクターに類似点があると思うというのは本当ですか?
「確かにその通りです。ハンニバル・レクターは、本当に素晴らしい悪役(ヴィラン)のいい例です。その場にいる他の誰よりも賢い。無駄なエネルギーを使う必要がないんです。殺すときは不意打ちで、しかも素晴らしい。だから、物語のある部分に入り込むときコンセプトをより楽しむことができます。というのも、全員が秘密を共有しているからです。でも、あまりに遊び心が強くなりすぎると、『ハンニバル・レクターならどうするだろう?彼は誰かを追いかけるだろうか?』と考えてしまうのですが、いいえ、彼は汗をかかないでしょう。
悪役というのは、あからさまに面白くなくても、活発で極端に活発でなくても、怖くて、スリリングで、危険なのです。いつも歩いているんだけど、なぜか先に着いてしまう。エスターもそんな感じです。子供だから、身体能力で人を圧倒することができないから、知恵を働かせるしかない。また、ジュリアが演じたトリシアとエスターの関係は、ハンニバル・レクターとクラリス・スターリングを思わせるところがありました」
ーイザベルが再びエスター作品に登場する可能性はありますか?
「もしこれがうまくいけば、彼女が望めば一生このキャラクターを演じることができるのですから、もちろんその話をしました。私たちは、リーナの人生のほんの一部しか見ていません。まだ表面しか見ていない素晴らしいキャラクターです。私たちは皆このキャラクターをとても愛しているんです。
この映画は、エスター、リーナ、そしてファンへのラブレターです。『オリジナルから彼女を愛している人々にとって満足できるものになるのか?』それは達成できたと思います。携わった者全員にとって愛のある仕事でした。特に、イザベルが参加してくれたことで、すべてが特別だと実感したからです。他の方法では、この映画を作ることはできなかったでしょう」
PROFILE
ウィリアム・ブレント・ベル(監督)
脚本家としてユニバーサル、ワーナー・ブラザース、ディズニー、フォックスでプロジェクト立案に携わった後、2006年にホラー映画『DEATH GAME デスゲーム』で監督デビュー。共同脚本、監督を務めた『デビル・インサイド』(2012)では、悪魔に取り憑かれた母親を救おうとする娘の運命をドキュメンタリータッチで描き、低予算ながら全世界で1億ドル超えの興行収入を記録。長編映画やテレビの脚本家・監督で、スリリングなエンターテインメント作品を生み出すことで知られている。主な監督作品に、『ウェア 破滅』(2013)、『ザ・ボーイ 人形少年の館』(2016)、『ザ・ボーイ 残虐人形遊戯』(2020)、『邪悪は宿る』(2021)がある。
『エスター ファースト・キル』
2023年3月31日(金) TOHOシネマズ 日比谷 他全国ロードショー
配給:ハピネットファントム・スタジオ
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