フィリピン・マニラから釜山港に向かう貨物船を舞台に、凶悪犯VS護送官VS怪人の生き残りを懸けた三つ巴の戦いを描く『オオカミ狩り』。血糊2.5トンも使用した韓国映画史上最強の暴力描写に、ソ・イングクが全身タトゥーの凶悪犯に挑むなど、観客を驚かせる仕掛け満載のバイオレンス・サバイバル・アクションだ。手掛けたのは『共謀者』『メタモルフォーゼ/変身』などで知られ、“ジャンル映画のマスター”の異名を持つキム・ホンソン監督。リモートで監督に本作のキャスティングや撮影の裏話を聞いた。(取材・文:前田かおり)

【本作のネタバレが含まれます。未鑑賞の方はご注意ください】

“キャスティング時はまず、以前の作品で組んだ俳優を思い浮かべる”

ーー凶悪犯ジョンドウ役のソ・イングクさんは、彼の出演作の「元カレは天才詐欺師♡~38師機動隊~」が印象的だったのと、悪役をやったことのない人にということで彼の起用を決めたと聞いていますが、もう一人の重要な役どころであるドイル役に、チャン・ドンユンさんを起用した理由は?

「シナリオを書いている時に、「サーチ~運命の分岐点~」というドラマを観たのが直接のきっかけですね。ドラマの中で、彼は、軍隊で飼っている軍用犬を訓練する兵士の役で主演していました。その作品での役が印象的だったんです。本作のドイルという役はごく普通の好青年にも見えますが、実は連続殺人犯で非常に謎に包まれた人物。

画像: チャン・ドンユン

チャン・ドンユン

ドンユンの顔からはそんな印象は全くないし、むしろ普段は非常にまじめに生きている人に見える。そんな彼だからドイル役に適役と思いました。ドイルは国際手配犯なんですが、その謎が本作の後半に描かれていくのでピッタリだと思いました。しかも実際に演じてもらったら最高でした。ソ・イングクさんよりも年下ですが、素晴らしい演技も見せてくれた。今後の成長が期待できる俳優さんだなと思いました」

ーー怪人役のチェ・グイファさんは、近年マ・ドンソク主演の『犯罪都市』シリーズの刑事役で注目されていますが、彼の起用は?

「グイファは年上に見えますが、実は僕よりも年下(監督は76年生まれ、グイファは78年生まれ)で、彼を“イファ”と呼ぶ仲です。これまでコメディが多く、本格的なアクションをやりたいと言って、シナリオの段階から意欲満々だったので起用しました。今回の作品の中で最も苦労した俳優の1人だと思います。

ほとんど裸の状態で冷たい血糊を塗られて、しかも、目はふさがれた状態。あれはCGで目を消したのではなくて、本当にメイクで作ったんです。そのメイクをするのに3、4時間かかって、落とすのに2時間もかかる。精神的にも肉体的にもきつかったと思います。

画像: チェ・グイファ(左端)

チェ・グイファ(左端)

さらに言うと、怪人は舌を切られた設定なので話もできない。つまり台詞もなく、はぁはぁーという息遣いしか表現するところはない。俳優としては、台詞をひと言も発せないのは、かなりのストレスだったと思いますが、そこも理解してくれた。イファには本当に感謝の言葉しかありません。次に組んだときは、彼にはいい役を回します(笑)」

ーー怪人のキャラクターには、何か参考にしたキャラクターなどいますか?

「怪人が出てくるカットの中で、人間の体温を感じるシーンがあるんです。怪人は目がふさがれているので前が見えない。なのに、どうやって人の動きを知るのかを観客に説明したいと思って、人の体温を感じているという描写を入れました。

それが『プレデター』を参考にしているのではと思われているようですが、全くしていません。もしかしたら、どこかで影響されているかもしれませんが、あくまでも、怪人に関しては100年前に行われた生体実験を参考にしています。

人間の目や耳、皮膚にさまざまなダメージを与えるという、想像を絶するような実験があり、そこでひょっとしたらこんな存在が生まれたかもしれないと想像し、何か月もブレストし、あまりにもグロテスク過ぎない範囲でデザインして今の形になりました」

ーー本作には、韓国ドラマでお馴染みの方たちがかなり多く出ています。ベテラン俳優陣の方たちなどどのようにキャスティングされたのですか?

「僕がキャスティングする時はまず、以前の作品でご一緒した俳優さんを真っ先に思い浮かべます。俳優さんというのは、まさに千の顔を持った人たちだと思っているので、どんな役もなりきってしまう。とくに、今回、海洋特殊救助団チーム長役を演じたソ・ドンイルさん、犯罪者役のコ・チャンソクさん、チャン・ヨンナムさんは過去の僕の作品に出ていただいてとても良かったんです。

画像: ソン・ドンイル(左)

ソン・ドンイル(左)

なので、今回はシナリオを書く段階で、すでにアテ書きしていました。彼ら彼女たちの性格や口調、それからこういうキャラクターならきっと楽しんで演じてくれるだろうなと思い書きました。そうしたら運よくキャスティングできました。映画は本当に運命だと思います。私の望みだけでなく、他の運命も重なって叶った。本当に運に恵まれたと思います。

ーーラストは続編を予感させるような終わり方でした。今後、その予定はありますか?

「実は『オオカミ狩り』を作る時点で、前日譚と本編と後日譚の三部作で考えていました。すぐに続編を取り掛かれるわけではありませんが、近いうちに撮りたいと思っています」

ーー最後に今後の予定を教えてください。

「当分の間は、何作品かアクションホラー映画を撮ることになりそうです。そして、もしも日本で撮れる機会があれば、いいなと思っています。最新作に関しては、契約上の問題があって詳しくは言えませんが、英語での作品になりそうです」

PROFILE
監督/脚本 キム・ホンソン

1976年生まれ。2012年に臓器売買事件を題材にした『共謀者』で映画監督デビュー。その後、『技術者たち』(14)、『メタモルフォーゼ/変身』(19)を手掛ける。

『オオカミ狩り』
2023年4月7日(金)新宿バルト9ほか全国公開
監督・脚本: キム・ホンソン
出演:ソ・イングク、チャン・ドンユン、ソン・ドンイル、パク・ホサン、チョン・ソミン、コ・チャンソク、チャン・ヨンナム、チェ・グィファ
2022|韓国|122分|シネスコ|5.1ch|늑대사냥(原題)|Project Wolf Hunting(英題)|字幕翻訳:石井絹香|配給:クロックワークス|R15+
クロックワークス公式Twitter/Instagram:@klockworxasia「#オオカミ狩り」
© 2022 THE CONTENTS ON & CONTENTS G & CHEUM FILM CO.,LTD. All Rights Reserved

This article is a sponsored article by
''.