やんちゃな小学生ニコラの天真爛漫な日常を子供の視点から語り、世界中の人々を魅了し続けている物語「プチ・ニコラ」。その魅力の根源は、原作者であるジャン=ジャック・サンペとルネ・ゴシニの運命に屈することのない生き方にありました。映画『プチ・ニコラ パリがくれた幸せ』は「プチ・ニコラ」の物語を交えながら、原作の誕生秘話をアニメーションで描いた物語です。第1回新潟国際アニメーション映画祭コンペティション部門出品を機に来日されたアマンディーヌ・フルドン監督、バンジャマン・マスブル監督にお話をうかがいました。(取材・文/ほりきみき)

祖父、父、自分、そして子どもたちへと受け継がれてきた「プチ・ニコラ」

──ニコラが映画好きのゴシニに「物語は映画を参考にしているのか」と聞くと、ゴシニが「映画はあくまで息抜き。アイデアの源は自分の周りの世界。笑いのネタを見つける力を磨くのさ」と答えました。これはアンヌから聞いた話でしょうか。またこの答えについて、クリエイターとしてどう思いますか。

BM:あのフレーズを書いたのは僕です。「コメディは至るところにある。それを観察さえすればいい」とゴシニが書いたものを読み、ゴシニの制作姿勢を表していると思ったのでアレンジしました。

ゴシニは非常に観察眼が鋭く、生活の中で面白いことを探す名人でした。見つけ出したものを研ぎ澄まして、類型化するのが彼のやり方。それは「プチ・ニコラ」に限らず、他の作品でも同じです。

僕も面白いものは至るところにあると思いますが、それを見つける才能はゴシニに及びません(笑)。

画像: 祖父、父、自分、そして子どもたちへと受け継がれてきた「プチ・ニコラ」

──ニコラがアルセストと一緒に学校をさぼって映画を見に行こうとした話がありました。ニコラたちは「遊んで楽しかったとみんなに話そう」といって、楽しかった思い出として終わりましたが、日本の場合は最後に先生か親にガツンと叱られて、主人公がしゅんとして終わります。日本とフランスの文化の違いを感じましたが、監督はどう思いますか。

AF:彼ら2人は学校をさぼりましたが、それで叱られたりはしません。大人は「水溜りに入ってはダメよ」と言いますが、子どもはわざと中に入る。そういうカットで終わらせているのはフランスというよりも子どもってそういうものなんだということを示しています。制作者の私たちには彼らをジャッジする資格はありません。

──「プチ・ニコラ」はフランスでは50年以上愛され続けている国民的絵本とのことですが、お二人にとって「プチ・ニコラ」はどんな絵本なのでしょうか。

AF:「プチ・ニコラの夏休み」という本、一冊だけでしたが、今、出ているものとは違う、古い版を父が持っていて、私たち3人兄弟が子どもの頃によく読んでくれたことを覚えています。この作品を作るにあたって、家を探したら見つかったので、制作中、ずっと傍に置いていました。

BM:「プチ・ニコラ」はフランスの多くの家庭で代々読み継がれてきたものです。祖父も父も教師でしたが、2人はこの本が大好きで、「プチ・ニコラ」を学校の教材として使っていました。家庭でも祖父が父に読み聞かせ、父も私に読んでくれ、「プチ・ニコラ」は僕の家では常にあるものでした。そして今、私自身が子どもたちに読んでいます。祖父から父へ、父から僕へ、僕から子どもたちへと4世代に渡って受け継ぎ、僕は監督として映画まで作りました。僕の家では「プチ・ニコラ」の存在感は絶大なものがあります。

PROFILE

監督:アマンディーヌ・フルドン

絵画界から映画界へ。美術を学んだ後、自然とアニメーションの業界で仕事をはじめ、フランス、バランスを拠点におくFolimage スタジオに 15 年間在籍していた。その後、フランスの料理人、ジャン・ピエール・コフとともに アニメーション・シリーズ “C’est bon”を監督、その他エマニュエル・ギベールとマルク・ブタヴァンのコミック原作アニメーション“Ariol”、 マリオン モンテーニュ原作にしたテレビ局 Arteのアニメーション番組“How to die clever”、アン・ゴシネとカーテル著の本をベースにしたアニメーションの"Lucrèce"を手掛けている。

監督:バンジャマン・マスブル

クレモン・フェラン短編映画祭にて、アニメーションの豊かさと多様性に気付き、関心を深め、情熱をもってアニメーションの仕事に就く。編集を学んだ後、多くのアクション映画、コマーシャル制作にアシスタントとして携わり、その後アニメーション界にて活躍していく。アシスタント編集者として多くのテレビ・シリーズを手掛けたのち、編集者として多数の映画も手掛けている。レミ・シャイエ監督作『ロング・ウェイ・ノース 地球のてっぺん』(15)(アヌシー国際アニメーション映画祭観客賞、東京アニメアワードフェスティバル 2016 長編コンペティション部門グランプリ、第 23 回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門優秀賞他)、『カラミティ』(20)(アヌシー国際アニメーション映画祭クリスタル賞)、バンジャマン・レネール&パトリック・インバート監督『とてもいじわるなキツネと仲間たち』(17)、ヨハン・スファール “Little Vampire”、アカデミー賞ノミネート作品ジェレミー・クラパン監督『失くした体』(19)(アヌシー国際アニメーション映画祭クリスタル賞、観客賞、2020 年アニー賞他多数)、パトリック・インバート監督『神々の山嶺』(21)(第 47 回セザール賞アニメーション映画賞)等。

『プチ・二コラ パリがくれた幸せ』
6月9日(金)新宿武蔵野館、ユーロスペース他全国順次公開

画像: 映画『プチ・ニコラ パリがくれた幸せ』吹替版予告編 www.youtube.com

映画『プチ・ニコラ パリがくれた幸せ』吹替版予告編

www.youtube.com

1955年、パリの街並みを望む小さなアトリエ。イラストレーターのジャン=ジャック・サンペと作家のルネ・ゴシニはいたずら好きでかわいらしい男の子、“プチ・ニコラ”に命を吹き込んでいた。大好きなママのおやつ、校庭での仲間達とのケンカ、先生お手上げの臨海学校の大騒ぎ…。ニコラは明るく豊かな幼少期を過ごす。そしてニコラを描きながら、望んでも得られなかった幸せな子ども時代を追体験していくサンペ。また、ある悲劇を胸に秘めるゴシニは、物語に最高の楽しさを与えていった。ニコラと友人の冒険を描きながら、サンペとゴシニは友情を深めつつ、自分たちの波乱に満ちた人生を語っていく。

原作:ルネ・ゴシニ、ジャン=ジャック・サンペ
監督:アマンディーヌ・フルドン、バンジャマン・マスブル
脚本:アンヌ・ゴシニ、ミシェル・フェスレー
音楽:ルドヴィック・ブールス(『アーティスト』)
出演者:アラン・シャバ、ローラン・ラフィット、シモン・ファリ他

原題:LePetit Nicolas - Qu'est-ce qu'on attend pour être heureux?/フランス/2022/仏語/ビスタ/5.1Ch/86分/字幕翻訳:古田由紀子/原作:「プチ・二コラ」(世界文化社刊)/映倫:G

© 2022 Onyx Films – Bidibul Productions – Rectangle Productions – Chapter 2

配給:オープンセサミ、フルモテルモ
6月9日(金)新宿武蔵野館、ユーロスペース他全国順次公開
公式サイト:https://petit-nicolas.jp/

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