『大いなる自由』
1945年、男性同性愛を禁じた刑法175条の下、ハンスは自身の性的指向を理由に繰り返し投獄される。同房の服役囚ヴィクトールは「175条違反者」である彼を嫌悪し遠ざけようとするが、腕に彫られた番号から、ハンスがナチスの強制収容所にいたことを知る。ヴィクトールは、その番号を新しい入れ墨で覆うことを提案し、刑務所の中で調達したありものの粗末な道具でハンスの腕に入れ墨を彫り始めるのだ。己を曲げず何度も懲罰房に入れられる「頑固者」ハンスと、長期の服役によって刑務所内での振る舞いを熟知しているヴィクトール。一見対照的で反発から始まったふたりの関係は、お互いの孤独やみじめさを分かち合い、時に冗談を飛ばし合い、 25年の長い年月を経て互いを尊重する絆へと変わっていく。
そんなふたりの関係の変化を決定付けるのが、ふたりの抱擁シーンだ。1957年、ある出来事に感情が抑えられなくなったハンスを、周囲の目もはばからず強く抱きしめ支えるヴィクトールの姿をドラマチックに映し出す心震える名シーンだが、脚本も担当したセバスティアン・マイゼ監督が劇中最も好きなシーンでもあるという。
監督は、「このシーンは、感情面でも撮るのがすごく難しかったんですが、ここがシーンとしてしっかりキマらないと映画そのものが成立しないと思っていました。だからこのシーンは撮影前に入念に準備をしているんです」と語っている。そして、1969年に刑法が改正され、晴れて刑務所を後にしたハンスが見せる<ふたりの物語のゆくえ>を、ぜひ見届けてほしい。
2021年カンヌ国際映画祭ある視点部門審査員賞を受賞したほか、 2022年アカデミー賞国際長編映画賞ショートリスト選出、昨年のレインボー・リール東京~東京国際レズビアン&ゲイ映画祭~でも絶賛が相次いだ注目作。
『大いなる自由』
7月7日(金) Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下ほか全国順次公開
配給:Bunkamura
©2021FreibeuterFilm•Rohfilm Productions
『小説家の映画』
長らく執筆から遠ざかっている著名作家のジュニがソウルから離れた旅先で偶然出会ったのは、第一線を退いた人気女優のギルス。初対面ながらギルスに興味を持ったジュニは、彼女を主役に短編映画を撮りたいと予想外の提案を持ち掛ける。かつて名声を得ながらも内に葛藤を抱えたふたりの思いがけないコラボレーションの行方は・・・。
人知れず迷いを抱えたふたりの女性が偶然の出会いを通して、人生の新たな可能性に向かって共に歩み出していく姿を映し出し、女性たちのめぐり合い、友愛と連帯の芽生えをほのかな幸福感にくるんで紡ぎ上げた。 監督は、名実ともに韓国を代表する監督のひとりであるホン・サンスで、2022年の第72回ベルリン国際映画祭で銀熊賞(審査員大賞)を受賞。
『小説家の映画』
6月30日(金)ヒューマントラストシネマ有楽町、
新宿シネマカリテ、アップリンク吉祥寺ほか全国順次公開
配給:ミモザフィルムズ
© 2022 JEONWONSA FILM CO. ALL RIGHTS RESERVED
『CLOSE/クロース』
子供でもなく大人でもない10代特有の揺れ動く心情と思春期への旅の始まりを瑞々しく繊細に描く本作。13歳のレオとレミは、24時間ともに過ごす大親友。中学校に入学した初日、親密すぎるあまりクラスメイトにからかわれたレオは、レミへの接し方に戸惑い、次第にそっけない態度をとってしまう。気まずい雰囲気のなか、ふたりは些細なことで大喧嘩に。そんなある日、心の距離を置いたままのレオに、レミとの突然の別れが訪れる。季節は移り変わるも、喪失感を抱え罪の意識に苛まれるレオは、自分だけが知る“真実”を誰にも言えずにいた・・・。
監督は前作『Girl/ガール』で鮮烈なデビューを飾ったルーカス・ドンで、2022年カンヌ国際映画祭でのグランプリ受賞をはじめ、各国の映画賞で47受賞104ノミネートを果たした。
『CLOSE/クロース』
7月14日(金)全国公開
配給:クロックワークス/STAR CHANNEL MOVIES
© Menuet / Diaphana Films / Topkapi Films / Versus Production 2022
『さらば、わが愛/覇王別姫 4K』
京劇の俳優養成所で兄弟のように互いを支え合い、厳しい稽古に耐えてきた2人の少年。やがて彼らは、程蝶衣(チョン・ティエイー)と段小樓(トァン・シャオロウ)として人気の演目「覇王別姫」を演じるスターへと成長する。女形の蝶衣は覇王を演じる小樓に秘かに思いを寄せていたが、小樓は娼婦の菊仙(チューシェン)と結婚してしまう。やがて彼らは激動の時代にのまれ、苛酷な運命に翻弄されていく・・・。
巨匠チェン・カイコー監督が、ふたりの役者とひとりの女性の人生を50年にもわたる中国の動乱の歴史とともに描き出し、1993年カンヌ国際映画祭で中国語映画として史上初のパルムドールを受賞した映画史に残る傑作。日本公開30周年、レスリー・チャン没後20年特別企画として4Kで鮮やかに蘇る。
『さらば、わが愛/覇王別姫 4K』
7月28日(金)より角川シネマ有楽町、
109シネマズプレミアム新宿、グランドシネマサンシャイン池袋ほか全国順次公開
配給:KADOKAWA
©1993 Tomson(Hong Kong)Films Co.,Ltd.
『プチ・二コラ パリがくれた幸せ』
やんちゃな小学生ニコラの天真爛漫な日常を子供の視点から語り、フランスで50年以上愛され続け、世界30カ国で翻訳されている児童書「プチ・ニコラ」。その作者は、親友同士である原作者イラストレーターのジャン=ジャック・サンペと小説家ルネ・ゴシニのふたりだ。
親子関係に恵まれず過酷な子ども時代を過ごしたサンペ。楽しい幼少期を過ごすも少年時代に親族をホロコーストで失ったゴシニ。夢を失い、再び夢を抱き、クリエイターとしての不遇の時期を経てふたりは出逢う…。そんな、作品のストーリーの誕生秘話にしてふたりの喪失と創造の人生に「プチ・ニコラ」の物語を交えて描く、子供時代へのノスタルジーと創作の喜びに満ちたアニメーション作品。アヌシー国際アニメーション映画祭クリスタル賞をはじめ数々の映画賞を受賞。
『プチ・二コラ パリがくれた幸せ』
新宿武蔵野館、ユーロスペースほか全国順次公開中
配給:オープンセサミ、フルモテルモ
© 2022 Onyx Films – Bidibul Productions – Rectangle Productions – Chapter 2