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ラッセル・クロウにインタビュー
〝考えてみると、非常にダークな仕事ですよね。相手にしているのは、ひどく苦しんでいる人たちですから〞
─今回演じたガブリエーレ・アモルト神父(チーフ・エクソシスト)についてはいかがですか?
実際にチーフ・エクソシストという職責があるのです。ヴァチカンに本当にある仕事です。この映画で私が演じているガブリエーレ・アモルト神父も、2016年に亡くなった実在の人物で、36年間その任にあたって何万回も悪魔祓いを行った人なのです。
この映画は、彼が書き残したものからアイデアを得ています。物語の中心は、スペインにある建物に暮らし始める家族です。カトリック教会と長い歴史を持つその建物でいくつかのことが起きます。その建物に長い間存在していたものが今も存在しているんです。
─悪魔祓いの症例の種類について教えてください。
考えてみると、非常にダークな仕事ですよね。相手にしているのは、ひどく苦しんでいる人たちですから。
リサーチの結果わかったのは、悪魔祓いが必要だということでガブリエーレ・アモルトの元に紹介されてきた人たちの98 %、たしかそれくらいの人たちを、神父は精神医学や心理学を専門とする医師たちに託しました。
彼のところに来た人たちのうち、身体や人格や精神を何らかの霊や悪魔に何らかの形で支配されている、と彼が判断したのはごくごくわずかだったんです。
─舞台となった修道院の歴史についてはいかがですか?
フランコ・ネロが演じる教皇に請われて、アモルトが苦境に陥っている家族を助けるために向かうのは、カトリック教会と何百年も関わりのある建物。
この作品のリサーチのために訪れたローマで私自身も実際に見ましたが、美しい大聖堂の地下に降りていくと、他の大聖堂の跡が何層も積み重なっている部分があり、それは同じ場所に教会が何度も建てられてきたということです。
ガブリエーレ・アモルト神父と、ダニエル・ゾヴァットが演じている(トマース・エスキベル)神父も、修道院でそれと同じことを発見します。その場所には長い歴史があって、その歴史が今もまだ建物の真下に幾重にも存在していることを。
─本作の核となる部分について教えてください。
この映画の核となる前提の一つは、ルシファーと堕天使たちに関する聖書の記述から来ているのです。地上に追放され、地下に閉じ込められた彼らは果たして完全に退治されたのか。
そうした考えがどんどん大きくなっていくのです。物語が進み、自分たちが相対しているかもしれないものについて二人が考え始めるにつれてね。悪魔は捕らえられたかもしれないけれど、完全に退治されたわけではないかもしれない、と。
ラッセルの男臭さがほとばしる出演作5選
人々に愛される傑作で数多く主演を張るラッセルの演技に痺れまくれる出演作をチョイス!
『L.A. コンフィデンシャル』(1997)
カフェで起こった虐殺事件を捜査する刑事たちが、やがて警察汚職という事実に行き着き……。タイプの異なる3人の刑事たちの奔走が描かれるサスペンス。クロウは、女性に暴力振るう男を何よりも嫌う直情型の刑事にふんした。正義感の強さも映え、硬派な存在感を発揮。
『グラディエーター』(2000)
ローマ皇帝の座を狙う皇子の陰謀によって地位を追われ、奴隷となった将軍。妻子を殺され、復讐を誓った彼は剣闘士として戦いを生き延び、皇帝の座に就いた皇子に立ち向かう。肉体を鍛え抜き、マッチョな戦士になりきったクロウは、怒りや悲しみなどの感情も表現し、みごとにオスカーを受賞。
『マスター・アンド・コマンダー』(2003)
ナポレオン戦争期、フランスの私掠船アケロン号の太平洋進出の阻止を命じられた英国戦艦サプライズ号。しかし、アケロン号は火力でも速力でも勝る。圧倒的に不利な状況下、サプライズ号艦長オーブリーは秘策に打って出る。海の男たちを束ねるオーブリーにふんしたクロウの姿が頼もしい!
『3時10分、決断のとき』(2007)
1957年の西部劇『決断の3時10分』のリメイクだが、オリジナル以上にエモい傑作!強盗団の首領を護送する仕事を受けた貧しい農夫が、命がけの戦いに臨む。クロウは護送される首領役だが、単なる悪党ではなく理知的で分別もある。カリスマギャングに人間味を加えた妙演が光る!
『アメリカン・ギャングスター』(2007)
ベトナム戦争期にヘロインの密輸でのし上がった犯罪者と、これを追う捜査官の攻防が展開。前者がデンゼル・ワシントン、後者がクロウというオスカー俳優の競演。彼らの最初の共演作『バーチュオシティ』(1995)の頃は、クロウは無名だったが、ここでは汚職を拒絶する正義漢を熱演してデンゼルと渡り合う。