シャオホン(クー・チェンドン)は内気な29歳の青年。過保護な母親のメイリン(ユー・ズーユー)と2人で暮らしている。母に紹介された女性とのデートに失敗した彼は、従兄に連れられて売春宿に行くことに。結局、童貞を捨てることはなかったが、ホテルの副支配人のララ(ビビアン・スー)に惹かれ始め、2人は次第に距離を縮めていく。ところが、メイリンとララの息子ウェイジェ(ファン・シャオシュン)に、その関係を知られてしまい・・・。
監督は本作が⾧編映画3作目となるアーヴィン・チェン(陳駿霖)。現代ドイツを代表する映画監督、ヴィム・ヴェンダースが製作総指揮をした『台北の朝、僕は恋をする』で監督を務め、2010年のベルリン国際映画祭で最優秀アジア映画賞を獲得。本作は、香港のフィルムマーケットの「期待のアジア映画トップ10」に選出されるなど国際映画界で注目を集めた。
"胸が張り裂けそうな悲しみを経験せずに、大人になることはできない"
――クー・チェンドンさんとは初共演でしたが、思い出に残っているエピソードをお願いします。
「初めて彼と会ったとき、耳がとがっていて、映画『アバター』に出てくるナヴィ族に似ていたので宇宙人みたいだと思いました!(笑)彼のことをよく知ってからは、とても純粋な人なのだと感じました。俳優としての彼は、とても頭の回転が速く、知的で、落ち着いていて感情のコントロールが上手いように感じました。
ですが、プライベートでは、感情豊かな大きな少年のようです。打ち上げの日の夜、みんなと別れるのが惜しくて、彼が7歳の少年のように泣きながら『この映画の撮影に参加する機会を得て、みんなと一緒に仕事ができてとても幸せだ』と言っていたのを覚えています。みんなが彼をなでて抱きしめて『よくやったね』と声をかけたくなっていました!」
――演じる中で難しかったと感じた点はありますか?
「この映画で私が演じたララは、ホテルの副支配人です。この役を演じるためには、常にタバコを吸い、お酒を飲まなければならず、おそらく1年間で飲める限りのお酒を飲んだと思います。1番印象に残っているのは、雨の中、裏路地でタバコを吸うシーン。その夜タバコを60 本も吸いました。スタッフからタバコを渡されたときは怖くて吐きそうでした。
撮影が始まる前からずっと風邪をひいていて、そのうえ役作りのためにタバコと酒を飲み続けたので、撮影期間中は声がかすれてしまっていたのですが、監督は『役にぴったりの声だから、風邪を治すのは後回しにして!』と、むしろ褒めていました!」
――ララを演じる上でどういった点を大事にされてましたか?
「ララという役は、実際の私とはまったく違います!私は自分自身で計画を立て、目標を設定し、常に新しいことを学び、人生の様々な景色を見に行こうとするタイプですが、ララは大きな野心や理想を持たず、日々を淡々と過ごす人です。
私とララの共通点を挙げるとすれば、『愛する人を選べる自立した女性』というところでしょうか。この映画は、愛や、母と子の関係を描いたものです。胸が張り裂けそうな悲しみを経験せずに、大人になることはできません。誰もがこの物語の中に自分自身を重ね合わせるはずです」
――『弱くて強い女たち』ではご出演、そしてプロデューサーとしてもデビューされましたが、演じることとはどのような違いがあると思われますか?また今後どういったことに挑戦してみたいかお教えください。
「役者は自分の役をうまく演じることに集中し、制作チーム全体と団結して作品を完成させますが、プロデューサーとしては全体を俯瞰することが必要であり、作品全体の責任者が自分になります!撮影の前後は、みんな気が気でなくなりますが、全身全霊で臨んでいれば、どんな役割であっても、大きな満足感と達成感を味わうことができますし、努力を重ねる過程が本当に楽しいです! 次はタイヤル族語での曲作りに挑戦して、お母さんに贈りたいです!」
【CAST・STAFF】
監督:アーヴィン・チェン
脚本:サニー・ユー、アーヴィン・チェン
エグゼクティブプロデューサー:リー・ポンジュン、シャオ・ペイル
出演:クー・チェンドン、ビビアン・スー、ユー・ズーユー、ファン・シャオシュン
2022 年/台湾/カラー/シネスコ/5.1ch/98 分/中国語/字幕翻訳:本多由枝/原題:初戀慢半拍/英題: Mama Boy/配給:ライツキューブ
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