そんな彼女の最新出演作は、名優・藤竜也と親子役を演じた映画『高野豆腐店の春』。
尾道を舞台に、愚直で職人気質の父・高野辰雄と、明るく気立てのいい娘・春の人生を描いた本作の撮影秘話や、26年ぶりの共演となった藤竜也とのエピソード、さらにオススメの映画やハマった海外ドラマなどについて語ってもらった。(取材・文/奥村百恵)
父親への感謝の気持ちを大事に演じた
ーー本作への参加が決まったときの心境からお聞かせいただけますか。
「尾道が舞台で、親子の物語を描いている本作のような“日本映画らしい作品”に出演するのが久々だったので、すごく嬉しかったです。台本を読んで、最初は物語のシンプルさに惹かれたのですが、よく考えてみたら、それは構成が練りに練られているからこそなんだと気づきました。
完成した本作を観てみると、笑える場面もあれば考えさせられるような場面もあって、さらに登場人物それぞれの思いみたいなものが丁寧に描かれていたので、“この作品に参加できてよかった”と思いました」
ーー春の父親・高野辰雄を演じた藤竜也さんとは26年ぶりの共演になるそうですね。
「初めて藤さんとご一緒したのは、1997年に公開された『猫の息子』という映画でした。それ以来、今回26年ぶりの共演でしたけれど、再会した瞬間から“ああ、もう大丈夫だな”と感じたんです。もちろん大先輩なので緊張はしたのですが、藤さんはとても自然体な方で、現場で一緒にいるとすごく心地がいいというか、こちらの緊張を和らげるような空気を作ってくださるんです。なので、藤さんとならすぐに親子役という関係性を作っていけるだろうと、そんな風に感じました」
ーー現場で印象に残った藤さんとのエピソードを教えていただけますか。
「実際にお豆腐屋さんの店舗をお借りして親子のシーンの撮影をしたのですが、そのときに割と待ち時間があったので、藤さんにたくさん話しかけたんです。どんな質問にも答えてくださって、さらには藤さんご自身の昔話なんかも聞かせてくださいました。そうやってコミュニケーションをとっているうちに、だんだん本物の親子のような空気感ができていって。ときには藤さんから『ここのシーンはこういう風にしようと思うんだけど』といった提案をされることもありましたね」
ーーそれはどのシーンだったのでしょうか?
「いくつかありましたけれど、印象に残っているのは商店街を二人で歩いているシーン。台本には“歌を歌う”とは書かれていなかったのですが、藤さんのアイデアで歌うことになりました。もう一つ、同じシーンになりますが、歩いているときに自然に腕を組んでいたのも印象に残っています」
ーー商店街を親子で歩くシーン、とっても素敵でした。父親思いの頑固で一途な春を演じる上で、大事にしたことはなんでしょうか。
「後半に、とある事実が明かされるのですが、それを知ると春が父親に対してものすごく感謝していることがわかるんです。なので、その気持ちを大事にしながら演じていました。あと、春はお豆腐作りを本気でやっているので、父親のことを師匠としても尊敬しているんですね。なので、お豆腐作りのシーンと、そうじゃないときの気持ちの切り替えを意識して演じるようにしていました」
ーー高野豆腐店のお豆腐は水と大豆とにがりだけで作られていて、とっても美味しそうでした。あの工場で作られたお豆腐は食べましたか?
「いただきました。とても美味しかったです! 三原(光尋)監督が作ってくださったお豆腐も食べたのですが、そちらもびっくりするぐらい美味しくて感動しました。本作の撮影に入るまでは、すっと口の中で溶けるような絹ごし豆腐がいいお豆腐だと思っていたのですが、現場で食べたのは木綿豆腐で、これを一度味わったらやめられないなと思うぐらい美味しくてハマりました。最近は、お豆腐の原材料をチェックして、大豆とにがりだけで作られたものを買うようにしています」
ーー作業工程を見るとかなり手間がかかっていますよね。
「そうなんです。だから大量に作るとなると難しいらしくて、そのお豆腐はプレミアム豆腐と呼ばれているそうです。お塩をパラパラっとふりかけて食べても美味しいので、ぜひ試していただきたいです」