カバー画像:Photo by Michael Rowe/Getty Images for IMDb
コミコン系文化にも精通し率直な発言も魅力
今年のアカデミー賞で『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』(2022)で助演女優賞を受賞、今、絶好調のジェイミー・リー・カーティスは、ホラー映画やコスプレなどのコミコン系文化が好きかもしれない。
それを感じさせたのは、2016年の同名ゲームが原作の映画『ウォークラフト』のプレミア。彼女は映画に出演していないのに、このゲームのオタクの息子(2020年にトランスジェンダーを公表し現在は娘ルビー)と2人でコスプレで登場して話題を集めた。
ちなみに家族構成は夫と娘2人。夫はフェイク・ドキュメンタリー映画のカルト人気作『スパイナル・タップ』(1984)の主演・脚本・音楽を担当、『ドッグ・ショウ!』(2000)監督のクリストファー・ゲスト。
2人は養子2人を育て、上の娘アニーはダンスのインストラクター、下のルビーはネットのゲームチャンネルの動画編集者になっている。
カーティスはコミコンにも参加し、2015年のサンディエゴ・コミコンでは、出演中のTV「スクリーム・クイーンズ」のパネルに登場し、別のゲーム大会では「ストリートファイター」のバルログのコスプレを披露。
そして、本年のコミコンには、グラフィック・ノベル「Mother Nature(原題)」の作者として登壇。ヒロインが、石油採掘会社の実験が古代の恐るべき存在を目覚めさせたことを知るというストーリー。原案は10代の頃から考えていたそうで、やはりコミコン系体質。
もっとも本の執筆は以前からで、1993年から絵本を出版。日本でも「きょうそうって なあに? 」「ぼくはぼくなんだ―ぼくとわたしのちいさなしゅちょう」等が翻訳されている。
もう一つ、コミコン資質を感じさせるのは、今も初出演作『ハロウィン』(1978)を大切にしているところ。
経歴を振り返ると、生まれはまったくコミコン系ではなく、人気俳優の両親、『手錠のまゝの脱獄』(1958)のトニー・カーティスと『サイコ』(1960)のジャネット・リーの次女として1958年11月22日に誕生。
両親は彼女が3歳の時に離婚、母親と株式仲買人の義父のもとで育ち、1977年からTVに出演、翌年の『ハロウィン』が大ヒット。その後も『プロムナイト』(1980)などのホラー映画に次々と出演し、〝スクリーミング・クイーン〞と呼ばれるようになる。
さらにコメディ映画でも芸達者ぶりを発揮。ダン・エイクロイド、エディ・マーフィと共演した『大逆転』(1983)、ジョン・クリーズ、ケヴィン・クライン共演の『ワンダとダイヤと優しい奴ら』(1988)、アーノルド・シュワルツェネッガー共演の『トゥルーライズ』(1994)など多彩な作品で活躍する。
こうして有名になると、初期のホラー映画出演はなかったことになるケースも多いが、カーティスは違う。『ハロウィンH 20』(1998)、『ハロウィン レザレクション』(2002)にも第1作と同じローリー役で出演。
さらに、2018年からの三部作、『ハロウィン』(2018)、『ハロウィン KILLS』(2021)、『ハロウィン THE END』(2022)では製作総指揮と主演を兼任し、新たな物語を創り出す。
この時期は多忙で、『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』(2019)や前述の『エブリシング~』(2022)も進行中。『ハロウィン』への情熱がなければできなかっただろう。
そんな彼女のもう一つの魅力は、率直な発言と発信力。2011~2017年にはネットのニュースメディア、ハフィントンポスト(現ハフポスト)に記事を執筆、2020年、2021年はポッドキャストに参加して意見を発信。
インタビューでも、娘ルビーのトランスジェンダーへの支持を何度も語り、その一方で、自分が1989年から約10年間にわたって鎮痛剤バイコディン依存症でそれを隠していたこと、その依存症を克服してからは飲酒もやめたことなども率直に発言している。
今後も新作が続々。イーライ・ロス監督が同名人気ゲームを映画化する『ボーダーランズ(原題)』が撮影済み。
また、パトリシア・コーンウェルの「検死官」シリーズのTVシリーズ化権を獲得し、ニコール・キッドマンが主人公スカーペッタ役、カーティスがその姉妹のドロシー役で企画進行中。今後も多彩なジャンルで活躍してくれるに違いない。