認知症に見舞われた80代の老人ピルジュは60年もの間、待ち続けてきた復讐を記憶があるうちに決行すべく、年齢差を超え親友となった20代の青年インギュに事情を伝えないまま運転手を依頼し、動き始めた。映画『復讐の記憶』はクリストファー・プラマーとブルーノ・ガンツが共演した『手紙は憶えている』(2015年/アトム・エゴヤン監督)を原作に、韓国の歴史と社会文化を織り交ぜながら、ラストもガラリと変えて大胆にリメイクした作品。この度、ハン・ピルジュ役イ・ソンミンのインタビューが到着。出演経緯や共演のナム・ジュヒョクなどについて明かしてくれた。

意識して老人として日常生活を送って役を掴む

──この作品への出演を決めた理由をお聞かせください。

最初は正直、迷いもありましたが、ナム・ジュヒョクが演じたインギュのキャラクターがいたので大丈夫ではないかと思いました。日本が韓国を植民地にしていた時代を経験した老人の思いに、その時代を知らない世代の若者が巻き込まれながらも共感し、老人の旅路に付き添う。この物語にとても魅力を感じたのです。何よりイ・イルヒョン監督とまた仕事ができるというのが、この作品への出演を決めた一番大きな理由です。

画像1: 意識して老人として日常生活を送って役を掴む

──実年齢よりもはるかに上の年齢の老人役を引き受けるのは負担ではありませんでしたか。

ピルジュはこれまでに演じたことのないキャラクターです。新鮮な魅力がありましたが、とても大きなプレッシャーでした。

しかし、なぜ、監督は役柄よりも若い自分をキャスティングしたのか。気になって監督にうかがったところ、その世代の役者よりも若い世代の役者が演じることで、また違ったエネルギーをもたらすことができるのではないかと思ったと言われました。

私が俳優を続ける理由は自分の不足している部分を埋めていき、自らの課題をやり遂げるためです。この老人役は課せられたチャレンジで、トライしてみる価値があるという好奇心が芽生えました。

──その課題とどのように向き合いましたか。

まず私の顔が元々、あまりしわがないので、特殊メイクチームがしわを作るのに苦労し、ピルジュの顔を作るためにかなり多くの時間を費やしました。

また老人の特殊メイクだけでなく、動作や話し方などでも、年齢を表現したいと考え、日常生活でも意識して老人としての動作や話し方をするようにしたところ、少しずつ変化がありました。姿勢や歩き方が変わったのです。発声方法も意図的に喉を押すような感じで、呼吸も工夫してみました。ただ体に負担が掛ったのか、撮影中盤からは首に痛みが出てきて、少し後遺症もありました。

──演じられたピルジュのキャラクターは前半が明るく、後半はシリアスで対照的でした。

アルバイト仲間の中でピルジュはとても愉快な人物です。性格的に明るく見えることに重点を置いて演じたことで、後半に事件が起こっていくと、計算しなくとも彼の別の顔が浮き上ってきました。ピルジュはベトナム戦争にも参加したという設定があるので、目力にも凄みがあるのではないかと思って演じていました。

画像2: 意識して老人として日常生活を送って役を掴む

──今回はアクションシーンも多かったのですが、演じる上で何か気をつけたことはありましたか。

最初にアクションチームと動きを確認したとき、ピルジュの年齢で俊敏には動けるはずがないという違和感がありました。そこでスピ―ドを落として演じることになったのですが、さっと動くことに身体が慣れてしまっていて、いつものスピードよりわざと遅くしてアクションシーンを演じるのは体力が必要で、なかなか苦しい作業でした。私のアクションシーンを撮影したスタッフはケガをしてしまいましたが、そのことを隠して撮影を続けていたのです。キャストとスタッフのみんなが力を注いで作り上げました。

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