出したい感情をいつでも出せる体の状態を作ること
ーー大好きだという内田監督の魅力とは?
すごく話が弾むんです。出会った当初からそうでした。内田監督は世界各国ではこういう演出をしている、こういう作品作りをしているみたいな話をたくさんしてくれます。それを聞くのが好きなんです。経験を重ねた方の話を聞くのが好きというのも理由かもしれません。
あとは声のトーンがなんだか落ち着きます。だから、内田監督の声で演出してもらえると、自分の体にすごく入ってくるような気がしています。演出と感情を含めた自分の体とをリンクさせやすいんです。だからリアクションがしやすい。
話し方、声のトーンや好きなもののセンスとか挙げればキリがないほどありますが、自分にマッチしている気がして好きなんだと思います。もう感覚的な感じですね、好きってそういうものだから(笑)
ーー今回の現場で印象に残っている内田監督の演出はありますか?
「力を抜いて、楽器みたいにいつでもいろんな音を鳴らせるようになるといいよね」とおっしゃっていてなるほどと思いました。自分の中で沸いている感情を一瞬でパーンと出すことって日常ではあまりないですよね。
僕は作品などで、人の感情が爆発して、リミッターが外れたところを見るのがすごく好きで、魅力的にも感じます。出したい感情をいつでも出せる体の状態を作る、そういうことを意識すると幅が広がるとおっしゃっていました。自分で役の感情をきちんと解釈し、出したい感情を楽器のようにいつでもポンと鳴らせたほうが作品の魅力になる気がしています。
ーー力輝斗が感情を爆発させるシーンはとても印象的でした。
撮影で印象に残っているのは、届いたシナリオを独居房で読むシーンです。1回撮影したあとに「もっと開放してみて!」と内田監督に言われました。
そのシーンはものすごく奥にしまっていたものをいきなり掘り起こされたことにビックリしているけれど、同時に湧き出てくる感情が怒りなのか、なんなのか分からない一方で気づいてもらえたという喜びという見方もできると思ったし、笑わないように堪えると余計に笑ってしまうのと一緒で、こじ開けられそうになるのを必死に閉じようとしているのに、爆発してしまう。
向き合いたくないから死刑囚になったのに、土足のままいきなり入られてめちゃくちゃ探られる感じを表現したくて。あのシーンはすごく疲れました(笑)
ーー逆に妹・沙良役の久保(史緒里)さんとのシーンでは感情を見せない、抑えた演技に惹きつけられました。
沙良が過剰に力輝斗を傷めつければ傷めつけるほどこの作品は深みが増し、際立ちます。なぜ彼女が力輝斗にあたるのか。やり場のない無茶苦茶なものを力輝斗にぶつけないと物語が成立しないから、かなり大変だったと思います。
アイドルのグループでセンターをやっている方が、沙良のような役に真正面から勝負するのは、すごく体力のいることだし、精神的にも苦しいはずなのに腹を括って挑戦している感じがしました。出来上がった映像をみて、彼女の芝居は素敵だなと思いましたし、すごくエキサイティングで面白かったです。感性が豊かな方なんだなと思いました。