カバー画像:Photo by Stephane Cardinale - Corbis/Corbis via Getty Images
10代からハードルの高い役に挑戦
天性の才能での映画ファンを虜に
子役として才能が開花し、そのまま俳優として順調に出演作を重ね、世界的なスターとしての人気をキープする。誰もが“理想”とするキャリアを送っている一人が、スカーレット・ヨハンソンではないか。
彼女の強みは、ファッションや生き方における時代に合わせた魅力と、ハリウッドの伝統を受け継ぐ、どこかクラシカルな佇まい、その両面を持ち合わせている点だろう。
8歳でオフ・ブロードウェイの舞台に立ち、映画デビュー作『ノース 小さな旅人』(1994)が公開されたのが9歳のとき。
11歳で初の主演を務めた『のら猫の日記』(1996)でその演技も高く評価され、ロバート・レッドフォード監督の『モンタナの風に抱かれて』(1998)では、乗馬の事故で足を切断する運命の難役ながら、実力派のベテラン陣に引けを取らない存在感で天才子役の地位を確立した。
大人の俳優へのシフトが難しい子役も多いなか、スカーレットは10代の出演作で、あえてハードルの高い役にチャレンジし、成功を収めたことでファン層を拡大した。
『ゴーストワールド』(2001)での、ちょっぴり周囲からズレた高校生役や、『ロスト・イン・トランスレーション』(2003)の東京をさまよい、中年男性との微妙な関係を経験するヒロインなどで、繊細さと大胆さを巧みに使い分ける天性の才能に、多くの映画ファンが虜になった。
大作で活躍、そしてオスカー候補へ
信念ある姿勢で俳優たちに勇気を
その後、ウディ・アレン作品のミューズとなるなど、どちらかといえばインディペンデント系の作品で輝いていたスカーレット。キャリアのさらなる大きな転機となったのが、マーベル作品への参加だ。
2010年の『アイアンマン2』で初登場した、ナターシャ・ロマノフ/ブラック・ウィドウ役はMCUの中心キャラクターとなり、カメオも含めて計10作で活躍。アクションスターの資質を見せつつ、大ヒット作への出演によって、米フォーブス誌の「世界で最も稼いだ女優」で2年連続トップをキープ。
一方で、演技の実力はどんどん磨かれ、2020年のアカデミー賞では『マリッジ・ストーリー』で主演女優賞、『ジョジョ・ラビット』で助演女優賞のWノミネートを達成した。
私生活では、ライアン・レイノルズ、ジャーナリストのロマン・ドリアックと2度の結婚と離婚を経験。現在の夫は俳優で脚本家のコリン・ジョストで、ドリアックとの間に9歳の娘、ジョストとの間に2歳の息子がいる。
それ以前の華やかな交際歴も含めて波乱万丈なプライベートもハリウッドスターらしいが、仕事への信念は強く、製作総指揮も務めた主演作『ブラック・ウィドウ』がコロナの影響で劇場公開が再三の延期を経て、配信と同時公開となった際には、契約を巡って配給のディズニーを提訴。和解へと持ち込むなど、「曲がったことが嫌い」な彼女の姿勢は、他の俳優たちにも勇気を与えた。
「いつか長い期間、東京で生活する」
その夢の実現はまだ先になりそう
個性のひとつであるハスキーボイスを生かし、声の出演も多いスカーレット。『her/世界でひとつの彼女』(2013)での、声のみで主人公を夢中にさせる人工知能役も忘れがたい。
また、『アステロイド・シティ』(2023)でマリリン・モンローをモチーフにした女優や、『ヒッチコック』(2012)でのジャネット・リーなど、ハリウッドの歴史を再現するうえで、彼女ほどふさわしいスターもいない。
TVのCM(LUXなど)で日本での一般認知度も高く、ブラッド・ピットが「ブラピ」と呼ばれるように、「スカヨハ」の愛称は定着。
東京でロケを敢行した『ロスト・イン・トランスレーション』(2003)のほか、『ゴースト・イン・ザ・シェル』(2017)『犬ヶ島』(2018)といった日本関連の作品も多いスカーレットは、かつて社交辞令ではなく「いつか長い期間、東京で生活するのが夢」と語っていた。
今年39歳。唯一無二のベテラン俳優として待機作品も多いスカーレットなので、その夢が実現する日はまだ先になりそうだ。