ダニー「この映画にはサブテキストがたくさん仕込んである」
――この映画は人気監督たち、『ミッドサマー』のアリ・アスターや『NOPE/ノープ』のジョーダン・ピールが絶賛したことでも話題を集めました。彼らからは直接、接触があったんでしょうか。
ダニー「この映画の全米公開中は、僕らが大好きなクリエイターたちから、次から次へとメールが来たので、夜も眠れなかったよ(笑)。アリ・アスターはもう友達だ。彼はサンダンス映画祭のプレミアで見て、声をかけてくれたんだ。あの『ロード・オブ・ザ・リング』のピーター・ジャクソン監督もメールをくれて、会いたいと言ってくれたよ」
マイケル「ピーター・ジャクソンは、そのメールの引用をこの映画の宣伝に使えるようにと言ってくれたんだ、ほら、これだよ(と言ってスマホのメールを見せて、読み上げて)『またこういう興奮を感じられるとは思わなかった、子供の頃みたいにワクワクしている、僕はこの映画の大ファンだ』と書いてる。ものすごく嬉しかった」
――この映画は、ホラー映画としてだけではなく、さまざまな捉え方が出来るストーリーも魅力です。映画のティーンたちの間で流行する「#90秒憑依チャレンジ」は、ドラッグやアルコールのような危険物のメタファーでもあります。
ダニー「そうなんだ、この映画にはサブテキスト(表面には描かれていない暗示的なもの)がたくさん仕込んである。彼らが、呪物の左手を握った時に、何の霊が降りてくるのかにも、サブテキストがあるんだ」
マイケル「どういう霊が降りてくるかは、その子供たちの中に何があるのかによる。霊は、彼らの中にある何かに引き寄せられてくるんだ。ドラッグやアルコールと同じで、よくない状態で左手を握ると、あまりいい霊に憑依されない」
ダニー「似たようなシーンが『対』になって出てくることも意識した。冒頭のハイウェイで鹿を殺せないシーンと、ラスト近くのハイウェイのシーン。憑依されたダニエルと犬のシーンと、憑依されたミアとダニエルのシーンという具合に」
マイケル「オープニングのシーンはワンショットで、ラスト近くの病院のシーンもワンショットで『対』になっている。冒頭のワンショットのシーンを入れたのは、映画を見ている人をこの世界に引き込むためだよ」
ダニー「何回も反復して出てくるイメージもあるよ。ビジュアル面にも聴覚面でも、隠されているものがたくさんある。毎回、映画を見直すたびに、何かが見つかるようにしたんだ」
マイケル「リアルな10代が描けたのはキャスティグの成果も大きい」
――現代のティーンたちをリアルに描いていることもこの映画の魅力です。彼らの状況をよく知っているのは、お2人のYouTuberとして活動しているせいもありますか。
マイケル「僕らはYouTuberを10年以上もやっているから、ティーンがどんなものに反応するか、どんなものに興味を持つか、よく知ってる。それは役に立ってるね」
ダニー「SNSだけじゃなくて、リアルな友人も参考にしてるよ。映画の登場人物ライリーは、僕らの近所に住んでるライリーが元になってるんだ。そのライリーにも映画と同じように、ジェームズという親友がいる。2人が普段、どんなやり取りをしているのかも参考にしている」
マイケル「リアルな10代が描けたのはキャスティグの成果も大きいと思う。この人なら信じられる、信憑性があると思う俳優を選んだから。そのためにキャスティングには2年間くらいかけたんだ」
ダニー「時間がかかったのはコロナのせいもあるけどね。オーストラリア中の俳優をオーディションしたんじゃないかな(笑)。でも、その役にピッタリの俳優が来たときは、これがミアだ、これがヘイリーだ、と最初のオーディションで分かる」
マイケル「オーディションで見せてくれなかったものは、本番でも見せてもらえないしね」
ダニー「そうやってぴったりの俳優を選んだから、脚本はあるけど、彼らが自然に話せるように、彼ら自身にセリフを自由に変更してもらった。僕らは強いビジョンを持って脚本を書いたけど、実際に俳優たちが反応しあって、脚本を超えて作品を高めていくのを見るのは最高だったよ」
――さて、お2人はホラー映画などのジャンル映画が大好きだと伺っていますが、好きな映画を教えていただけますか。
マイケル「僕らの趣味はものすごく似てるんだ、ダニーの方が僕より批評的だけど」
ダニー「僕の方が賢いから」
マイケル&ダニー「(爆笑)」
マイケル「僕はポン・ジュノ監督の『殺人の追憶』(03)。それと、新藤兼人監督の『鬼婆』(64)。古い映画なのに、今見ても怖いっていうのはスゴイことだと思う」
ダニー「僕はTVシリーズの『イン・トリートメント』(08~)。セラピストと患者の会話劇なんだけど、登場人物に入れ込んでしまう。コップの水をかけただけでも、自動車の衝突事故みたいな衝撃を受けるんだ」
――お2人はYouTuber出身ですし、現在は誰もが動画を撮る時代です。今、映画製作を志している人にメッセージをお願いします。
マイケル「今、映像を創るツールは簡単に手に入る。だから、とりあえず作り始めることだ。僕らは6、7歳の頃から動画を撮り始めて、9歳くらいから真剣にやり始めた。やればやるほどスキルは上達する」
ダニー「すごく失敗しても、それは次の参考になる。だから、とにかく今すぐ撮り始めることだ」
『TALKTO ME/トーク・トゥ・ミー』
12月22日(金)丸の内ピカデリー、新宿ピカデリーほか全国ロードショー
監督:ダニー&マイケル・フィリッポウ
出演:ソフィー・ワイルド, アレクサンドラ・ジェンセン, ジョー・バード
配給:ギャガ
© 2022 Talk To Me Holdings Pty Ltd, Adelaide Film Festival, Screen Australia